バイオディーゼル(BDF)の副生グリセリンの家畜飼料化について!!

副生グリセロール(グリセリン)は、ご存知の様にバイオディーゼル燃料(BDF)製造プロセスの主要な副産物です。皆さんは、何に利用されていますか??或いは、処分に困ってはいませんか?
私は、現状石鹼製造に全量使っていますので、特に困ってはいないのですが、。。。。
 
尚、本質的な解決策として、グリセリンが副生しない方法もあります。
以前紹介した方法は、グリセリンを流動点降下作用のある物質(トリアセチン)に変換してしまう方法です( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4310416.html  )。
余談ですが、某大学の先生によれば、この方法は、今後、益々余剰となるグリセリンが副生しない第3世代のBDFとか?言われていました。反応物質は同一ですが、正しくは高圧法でアルカリ触媒を使用しない手法ですが、。。
再度、グリセリンが副生しない方法も、検討してみたいとも思っています。
比較的簡単にできましたので、。。。
 
今回は、副生グリセリンの利用法の一つである家畜の飼料化を紹介します
 
一般的には、バイオディーゼルBDF)燃料100L、粗グリセリンの約10L+、場合によっては20L近くが生成されます。バイオディーゼル産業は急速に拡大すると伴に、グリセリンの供給過剰が、米国やヨーロッパでは大きな問題となっています(グリセリン需要の10倍も生産されている!!)。
 
このグリセリンは食品、医薬品、または化粧品業界で使用するためには、精製が必要で費用も高価です。バイオディーゼル生産者は、処分方法を模索する必要に迫られています。
処分法には様々な方法があります。

 
グリセリンには、不純物が含まれ、このままでは殆ど経済的価値がありません。 一般的には、グリセリンの濃度は、油種や反応処理法等によっても変わってきますが、概略65%~75%(w / w)の濃度が含まれています。他は、残メタノール、遊離脂肪酸(石鹸)が不純物の主なものです。残メタノール量は、反応時のメタノール投入量やメタノール回収の有無などにもよります。石鹼分は、反応時の遊離脂肪酸濃度や、水分量によって決まり、グリセリン層に可溶です。加えて、アルカリ触媒残があります。
 
グリセリンは、通常、pH11-12)と黒っぽい濃紅色をしています。
pHは中性範囲に調整されている場合、石鹸(Na,又はK塩)は、遊離脂肪酸に変換され(戻り)ます。
一定期間の沈殿(セトリング)した後、遊離脂肪酸相は上層に、グリセリン相は最下層にと、2つの層に分離されます。

大規模なバイオディーゼル生産工場に於いては純粋なグリセリンに精製することができます。この場合は、食品、医薬品、または化粧品業界などに販売可能です。但し、殆どの中小生産者は、経済的にも設備的にも組グリセリンの精製は無理で、何らかの別処分法が取られているのが現状です。

過去グリセリン代替用途について、多くの研究がさわれて来ています。
燃焼、堆肥化、動物飼料、石鹼原料、熱化学的変換プロセス(エタノールエチレングリコールなど)、及び生物化学的変換処理法(メタンガス化、エタノール等)が提案されています。
尚、特に生物化学的にエタノールを製造するプロセスは、最近米国の大学で興味ある研究が実施されている様です。いつか、フォローします。
 
日本では、一部燃料化(直接、廃油とブレンド、木材チップと成型燃料化)や堆肥化、或いは産廃廃棄などは、現在実践されています。
 
何れもあまり有効な使い方ともいえませんし、逆にBDF生産者に経済的メリットをもたらしません。
 
そこで、
今回は、この祖グリセリンを家畜の飼料に使おうという話題です。米国では、最近注目されている組グリセリンの処分法の一つです。
 
家畜の飼料に使う研究は、米国ではかなり以前から研究されていますが、日本ではどうでしょうか??殆ど行われて無いのではないでしょうか??
 
家畜としては、鳥類、豚、牛や馬、ヤギなど多くの研究があり、穀物の一部代替飼料として可能であると言う結論です。
 
例えば、Iowa州立大と農務省の研究では、豚の場合、実験では子豚と出荷前の豚に対して、組グリセリンを5,10、20%飼料に混ぜたところ、何れも、通常のコーン、大豆などの飼料と同等と結論付けています。成長段階では、5,10%飼料に混ぜた場合は、同等の肥育速度だったと言うことです。彼らの結論は、でも10%程度が上限だとも言っています。別の豚飼料の研究では、豚の肉質が向上すると言う報告もあります。
 
産卵用鳥では、組グリセリンの飼料混入率0、5,10,15%とが試験され、産卵率、卵重量、飼料の摂取率も変わらないといっています。
 
又、米Arkansas大の研究によれば、肉用ブロイラーの飼育でも、組グリセリンを2.5~5.0%程度混ぜると胸肉も増加して好ましかった言う報告です。限界は、最大10%程度までは飼料に混ぜられる様です。ただ、何れも、不純物、特にメタノール処理後の方が好ましい様です。別の研究では、ブロイラーのたんぱく質が向上したと言う報告もあります。
 
Missouri州立大の研究によれば、肉牛に対し、組グリセリンを0,5,10,20%混合した場合、混合割合や肥育速度など、特に差がなく、少なくとも(短期的には(160日間の試験)、問題なかったと報告されています。彼らの研究によると、グリセリンを牛が食べると、完全に体内に吸収されグルコースになり、言わば牛に砂糖(糖分)を与えていることになると言っています。但し、グリセリンのより付加価値のある利用法が将来見つかれば、この飼料化は無くなるだろうと言っています。因みに、米国で、1Lb(453g)あたり、コーンは8セント(7円)、グリセリンは4セント(3.5円)程度なので、経済的にグリセリンがコーンの代替飼料として成立すると言うことです。
 
この様に、いずれも家畜飼料として、組グリセリンを飼料と混入することにより、代替飼料として有効な様です。
 
メタノールは、人間の場合は網膜の血管を破壊し、失明の恐れがあることは知られていますが、不確かな情報ですが、これら動物によっては、メタノールの耐性がある場合もある様です。
いずれにしても、メタノールは、ある程度除去した方が良いと思います。又、グリセリンの品質の確認も必要かも知れません

特に、日本の家畜農家にとって、例えば、10%でも飼料費が削減できれば、大きな経済効果だと思います。それで無くとも、輸入飼料の高騰や海外から安い肉類の輸入などにより出荷価格も抑えられているのではないかと思いますので。。。。
 
一方、BDF生産者にとっても、不法投棄や産業廃棄物処理も必要なくなりますので、また、苦労して燃やしたりする燃料化も不要になります。何せ、飼料化が可能なら大量処分が可能になりますので、。。。
更に、有料で家畜農家に販売もできるかも知れないのですから、この場合はBDF生産者にも経済的メリットが生じます。。。。
 
ただ、これらの情報は、私個人で実践したものでは有りませんので、もし実行に移される場合は、充分注意され、自己責任で実施下さい
或いは、事前に御連絡下さい、更に詳しい情報も無くもないので、。。
何せ相手は生き物ですから、充分ご注意下さい。
 
 今回は、グリセリンの家畜飼料化の話題でした !!
では、また。。。
Joe.H
 
追伸)
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2)その後,平成23年1月24日付の記事( http://www.biodieselmagazine.com/articles/7511/setting-the-record-straight-about-biodiesel )にも、BDFの生産増に伴い増加する副生グリセリンの豚の飼料化の報告がありました。
出荷前の豚に15%のグリセリンを加えても、肉質などは、通常の穀物(大豆、コーン)飼料の豚と比べ差はないと言う報告です。但し、米国では飼料供与システム(コンベアーなど)が通常の粉体に比べて、グリセリン粘度が高いことにより、操作上の問題が5%程度の添加から発生する様です。ヨーロッパでは、液状飼料が多いので、飼料供給システム上は問題が少ない様です。
 
 
以上