バイオディーゼル(BDF)って、再生可能由来の燃料です!!と言いきれますか??

バイオディーゼル(BDF)は、ECOな再生可能由来の燃料です!
。。。。と一般に言われ、宣伝されています。
 
勿論、殆どの、少なくともBDFを製造している人は、これが100%真実ではないことは知っています(?)し、最大の弱みでもあります。
それは、殆どの場合使われているメタノールが、再生可能由来原料から製造されてないと言う理由からです。
 
先ずは導入、基礎編です。
BDFは、植物性、或いは動物性油脂(トリグリセリド)と低級アルコールとから、触媒として苛性ソーダや苛性カリを触媒として、反応し生成します。反応は、エステル交換反応と呼ばれ、同時に10%程グリセリンも副生します。
 
確かに、油脂は植物性でも、動物性でも、その物質は100%再生可能由来物質です。
 
問題は使用するアルコールにあります。
反応に使うアルコールには、炭素数が1ヶのメタノール、2ヶのエタノール、3ヶのプロパノール、4ヶのブタノールなど多数存在します。但し、反応性はこの順に低下し、逆に値段は順に高価になります。従って、BDFの実生産では、メタノール使用が殆どです。
これらは、また殆ど再生可能エネルギーです。通常は石油や天然ガス類から合成されます。
 
このうち、BDF用アルコールは価格、(特に通常の苛性ソーダや苛性カリ触媒では)反応性などから、圧倒的にメタノール、或いは一部エタノールが使用されています。それ以外は殆ど実用上は可能性はありません。
 
最近の酵素法)固体触媒法では、どの様なアルコール類でも、同じ様な反応速度で使えたり、逆にメタノールは使えななかったり、溶剤を添加しないと反応性が極端に低下する様な場合もあります。
 
エタノールは、例外ですが、ブラジルなどでは、糖分、澱粉及びこれらの廃材などの再生可能原料と醗酵法により、エタノールを大規模に製造し、利用しています。
この様に製造されれば再生可能エタノールと呼べそうです(殆どエチレンなどから作る石油系エタノールが量的には多い)。
醗酵法はお酒の醗酵と同じで、酵素を使用しますが、違うのは反応後に、お酒と異なり水分を完全に除去し、殆ど100%純エタノールにしないと再生可能燃料として使えません。
理由は、エタノールと水は、共沸混合物であり、通常の蒸留法では90%以上は濃縮出来なく、燃料化には、更に99.5+%程度に濃縮されます。最近は、ゼオライト膜分離技術やゼオライト吸着剤などが利用されています。
 
海外の他の国でも、同様なエタノール・プラント建設や利用は、徐々に開始しているのが現状です。
更には、木材などを使用したバイオマス材料からのエタノール製造法も研究され、一部にはプラント建設も始まっています。
 
このエタノールですが、殆どはガソリン燃料に、直接,或いは変換後(ETBEなどに)ブレンドします。
 
従って、仮にBDFを上記の醗酵法で製造したエタノールと油脂とで合成すれば、100%再生可能燃料と言えそうです。この手法を採用したBDFも、エタノールが豊富に、より安価に製造できるブラジルなど海外では市場に出ている様ですが、BDF用としては、恐らく本命は再生可能メタノールの利用です。
 
前置きが長くなりましたが、今回はメタノールも、ほぼ再生可能原料として使用可能になると言う話題です。
ほぼと言うのが多少弱点ですが、。。。現状より再生可能原料使用率が遥かに向上するのは確実です。
 
英国ケンブリッジ大学の研究によれば、BDF副生グリセリンを原料としメタノール合成が可能に成ったそうです。
 
 
BDFの生産増と供に、必ず副生するグリセリンを使ってメタノールを生産できれば、そのメタノールと油脂で、BDFを製造し、副生グリセリンは、再度メタノール合成をし、BDF反応で使用する。。。。と言う完全な再生可能、グリーン化、ECOサイクル化が出来そうです
 
元々、グリセリンは3価のアルコールであり、見かけ上は、1価のメタノールが3個、互いに炭素結合した構造になっています。これに水素を加えて、この炭素結合を切り、そこに水素を付加すれば、次の様に出来ます。
 
   グリセリンC3H5(OH)3 +水素2H2  ⇒  メタノール(3CH3OH) ーーーーー(1)
 
但し、見かけとは異なり、この水素付加反応でアルコール構造(OH基)を保持しつつ、かつ高収率メタノールを得ることは困難で有った様です。グリコール(2価のアルコール)やアルコール以外の反応が同時に副生てしまう様でした。
 
ところが、上記の報告では、ある触媒を使い比較的温和な反応条件でメタノールが合成できると言うことです。
BDF反応は元々、
     油脂 +メタノール3CH3OH   ⇒ 3BDF+グリセリンC3H5(OH)3 ーーーー(2)
 
です。
油脂1モルとメタノール3モルでエステル交換反応すると、3モルのBDFと1モルのグリセリンが副生しますので、この1モルのグリセリンと2モルの水素H2を加えて、再度合成すれば、3モルのメタノールが合成でき、全量3モルのメタノール使えば、丁度(1)式のメタノール必用量になります。
 
この様な方法で合成すれば、理論上はメタノールも再生可能原料と言えます。
従って、(1)及び(2)式で考えれば、BDFは完全な再生可能燃料(?)となりそうです。
 
但し、問題は、(1)式の水素です。水素は通常は、天然ガスや石油、石油化学プラントでの副生ガスなどから分離精製されますので、水素は非再生原料です。
 
但し、従来の非再生可能メタノールの使用であれば、BDF中に閉める再生可能燃料構成比は、理論上約90%ですが、この方法を使えば、約99.6%へと大幅に向上します。
この手法であれば、ほぼ100%BDFは再生可能燃料とも言えます
 
横道にそれますが、、メタノールに換えて、醗酵法のエタノール、或いは、メタノールのい替わりに酢酸メチルや酢酸エチル(BDFと同じ構造のエステル)を使えば、グリセリンの生成はなく、かつメタノールも使いませんので、再生可能燃料構成比は、通常のメタノールを使うより向上します。。。
と同時に、流動点も改善します。
下記で実際の製造法をBDF(+)、或いはスーパーBDFとして紹介済です。
 
但し、酢酸は醗酵法で製造可能ですが、酢酸エチルや酢酸メチルの合成は、通常エタノールメタノールと酢酸とで化学反応合成(エステル化)させますので、話は再度元に戻って、メタノールエタノールをどの様な方式で製造するかにより、再生可能原料であったり、無かったりします。
 
従って、メタノールエタノールが再生可能原料で製造できれば、単純に再生可能BDFの製造目的に限定すれば、これで充分だと思います。
 
上記のメタノールの副生グリセリンからの製造ですが、最近、この実プラントがオランダで稼動した様です。いよいよメタノールも再生可能原料由来で製造されている様です。
 
詳細は下記の最新情報です(5月27日付)。
記事によれば、オランダBioMCNという会社は、現状年産20万トンの規模でメタノール生産中です。
彼らは、詳細な手法は不明ですが、第2世代の方法と言っている方法です。
 
今後プラント規模は、更に拡張されたり、エタノールバイオマス原料などから製造する計画の様です。
いずれにしても、EU,米国などは石油脱却、再生可能エネルギー転換への実現スピードが速いし、強力に推進していて、わが国とは全く比較になりません
 
使用原料はBDFの副生グリセリンと言うことで、手法的には、前段の方法と言えそうです。
但し、使用触媒やプロセスは公開されていませんので、英国ケンブリッジ大の方法と同じか、否かは不明ですが、基本式(1)、(2)は同じ筈です。
 
 
このプラントは、元々天然ガスを使った合成ガス法メタノール製造していたもので、これまでは休止中だったものを、今回再度原料とプロセス転換をし、再立ち上げ稼動したとのことです。
従来のメタノール合成法からのメタノールは、当然、非再生可能原料由来となりますが、転換後は再生可能原料(副生グリセリン)由来となります。同時に、アルカリ法BDF製造で大幅に余剰となっている低グレードのグリセリンの有効な処理法だと言えます。
 
同社の計画では、2013年までに、同様に停止中の第2系列のメタノールプラントも原料・プロセス転換を図り、年産40万トン規模へと倍増拡張計画の様です。
 
同記事の説明では、メタノールの販売先は、ガソリン燃料のブレンド剤としての需要があるとのことです。メタノールは中国を始めとして、ガソリンブレンドで使用されています。エタノールも同様です。
何とかガソリンのCO2発生量を少しでも減らす目的で、躍起になっている石油会社への販売だと言っています。
 
BDF原料用にも、勿論一部使われる可能性も有ります。ガソリンに使われようと、BDFに使われようと、このメタノールを使えば、その分CO2削減、よりECO化燃料の使用割合が増えるわけですから、好ましい方向です
 
同時に、彼らの会社の系列会社では、バイオマス原料の余剰木材(90万トン)を使って、合成ガス(CO,H2の混合ガス)を製造し、以下は従来の方法でメタノールを合成する計画もある様です。バイオス原料を使って合成ガス経由でメタノールなどの基礎化学品の製造法研究やパイロットプラントは、日本でも有るようですが。。
 
このバイオマス原料由来の合成ガスから水素を分離して、上記(1)式の副生グリセリンからのメタノール合成の水素源として使用すれば、再生可能燃料構成比は100%と理論上もなります
 
但し、今後は固体触媒法が普及するのは、ほぼ確実です。
高グレード品質のグリセリンも簡単に製造できますので、わざわざ低価格のメタノールを固体触媒法のグリセリンを使ってまで行うか、否かは不明ですが、アルカリ法のBDF製造の余剰グリセリンの処分法としては、確実に好ましい解決策だと思います。。
 
尚、注目のBDF固体触媒法は、最近下記、他で紹介済で、実テストも計画中ですし、プラント設計も開始しています。
 
今回は、BDFの再生可能燃料化率の向上対策として、また余剰な副生グリセリンの処分法として、今後注目されるであろうメタノール合成の話題を紹介しました。
 
では、また。。。。。。
Joe.H
 
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