Hybrid-Biodiesel(ハイブリッドBDF)燃料の製法について!!

バイオマス(Biomass)を使った燃料研究が、最近各方面で実施されているのは、ご存知だと思います。
このバイオマス燃料の研究は、ガソリン車対応のエタノール、或いはディーゼル車対応のバイオディーゼルエステル交換反応を伴わない場合も含めて)の2分野に大きく分かれる様です。
 
ここでは、ディーゼル燃料、それもハイブリッド・バイオディーゼル燃料について、最近の研究報告を紹介します。詳細は、下記をご参照下さい。
 
ハイブリッド(Hybrid)と言う言葉は、ガソリン車のハイブリッドの普及で、すっかり一般的な言葉になりましたが、ここではディーゼルのハイブリッド燃料について話題です。
 
通常バイオディーゼルは、油脂を使いますが、日本の場合、バイオディーゼル燃料の製造原料は廃油(WVO)が殆どの為に、当てはまらないかもしれませんが、。。
世界的には新油ベースです。
  
以下、この文献の概要です。
現在、車両用の再生可能燃料の研究は、種々されていますが、唯一単体100%燃料で使え、認可されているのは、バイオディーゼル(BDF)だけです。
 
この結果、皆がこのBDFを如何に安価に作るかで苦慮している訳です。
プロセスの効率アップや省エネプラントの研究も大事ですが、
結局、最終目的は、如何に安い原料(油脂)を確保するかの勝負になります。
 
特に、大豆やコーンなどは、人間や家畜の飼料との取り合いによるコスト上昇とどちらが優先かと言う課題もあるることは、皆さん、ご承知だと思います。
 
そこで、食料、家畜飼料と競合しない油脂原料探しも米国では盛んです。
既に紹介したナズナなどが該当します( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/9179275.html  )。
 
加えて、食料作物が育たない荒れた土地でも生育可能かどうか、或いは単位面積当たりの油脂の製造可能量機械化可能か否か、できれば冬季特性も優れた油脂植物が望まれているわけです。
 
生産された穀物や種子の100%が油脂なら効率的なのですが、現実の油脂収率は40~10%、場合によってはそれ以下という状態で、殆どはセルロース炭水化物であり、現状ではバイオディーゼル(BDF)原料としては使えない状態です。
 
理想的には、これらの原料も総てバイオディーゼル燃料になれば、好ましいのは、誰でも解っていることです。そのまま燃焼する場合は可能ですが、BDFにしても、エタノールにしても、現状は不可能です。
それどころか、貴重な油脂でさえ、多くの製法はグリセリンが副生して、元の油脂の90%しか燃料化できていない状況です(アルコールを加え反応するので、見かけ上は油脂と等量+のBDFが製造可能です)。
 
今回は、油脂に炭水化物を加えた原料を1段反応でディーゼル燃料化すると言う方法です。当然、これがうまく実行できれば、BDFの採算性や収量も大幅に改善します。
 
炭水化物は、スターチ、セルロース、ヘミセルロース(Hemicellulose)、そして糖分です。
これらを反応させて、5-クロロメチール・フルフラール(CMF)(下記分子式、左)が70~90%、それにレヴィリン酸(Levulinic acid))(下記右の四角をクリックし表示)が生成できる反応が、最近報告されているそうです。
 
今回は、この反応を油脂と共存した状態でどうなるか??
と言うことです。
塩酸とジクロールエタンの存在下、反応温度80℃で、反応時間3時間と一寸長めですが、溶剤を使い生成水分を除去しつつ行えば、この反応と油脂の反応とが、伴に反応すると言うことです。
温度を100℃以上にしても、結果は変わらない様です。
 
下記は1kg当りの原料から収量です。
 
           油脂    CMF     合計
大豆      257.0   67.9    324.9
ひまわり    358.7    110.2    468.9
Jatropha   392.1   78.6    470.7
Camerina     374.5     102.5   477.0
紅花      371.3   113.0    484.3
キャノーラ   448.3   120.0   568.3
 
上記のCMFの収量は種子に含まれてる炭水化物からの生成量ですが、植物の種子以外のものも利用すれば、遥かに収量は増えると言えます。
 
次にエタノールを200℃で、油脂とCMFとを6時間反応させたところ、従来BDFと類似のエタノール脂肪酸エステル(FAEE)と、レヴィリン酸エタノールエステルが、同時に生成したという報告です。
どちらも、エチールエステル構造を持った燃料混合物が出きる事になります。
 
因みに、10gの紅花種子から、溶剤(ヘキサン)で油脂(3.71g)を抽出し、これで通常のアルカリ触媒反応でエタノールエステル交換反応を行うとBDF3.82gが得られたと言っています。
この同じ種子10gで、今回の反応を行ったところ、エタノールベースのBDF3.77gレヴィリン酸エタノールエステル0.92gが得られた言うことです。
これは、同じ原料種子から24%(重量ベース)も、多くの燃料が生成できることになります。
 
レヴィリン酸エタノールエステルは、毒性は無く、沸点206℃、フラッシュポイント91℃で、短い炭化水素ですが、セタン価の低下も無いばかりか、BDFの最大の弱点である冬季特性の改善効果もある様です。
 
この反応の問題点は、油脂からグリセリンが相変わらず副生してしまうので、燃料化では処理が必要の様です。或いは、レヴィリン酸を分離して再生可能化学基礎原料とする方策も有りそうです。また、アミノ酸なども副生するので、これらの利用もあると言っています。
 
今回は、まだ研究段階ですが、バイオディーゼルの収率向上の方策の一として、種子に含まれている炭水化物も併せて反応させ、ディーゼル燃料を製造する手法の概略紹介でした。
 
BDF燃料の収率を100%以上に向上させる方法では、
以前、製造結果を報告した副生グリセリンを生成させない方法http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4310416.html )、或いは、グリセリンエタノールする方法、或いは、原料油脂(もどき)を生成させ、再度エステル交換反応原料に使う方法等、。。。。
最近、いろいろ研究報告がされています。
我々も、万年廃油によるBDF製造だけでなく、
少しはこの様な別世界に目を向けることも必要ではないでしょうか??
 
では、また。。。
Joe.H
 
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