酵素法による新バイオディ-ゼル(BDF)製造法の紹介!!

バイオディーゼル(BDF)の製造法は、脂肪酸エステル製造法としては、大きく分けて3種の方法があります。
 
1)通常の(酸・)アルカリ法の均一触媒法
2)固体触媒(金属酸化物など)を利用した不均一触媒法
3)酵素
 
などがあります。
他に熱分解法などもありますが、
ディーゼル燃料(Bio-Fuel)はできますが、組成は脂肪酸エステルではありません。
 
今回の紹介内容は、実用も近い3)の酵素法の話題紹介です
 
今週、米国アリゾナ州のフィニックス(Phoenix)で全米バイオディーゼル会議(National lBiodiesel Conference)の大会(Expo)が開催されています。
そこでBDF関連のいろいろな講演や発表がされています(BDFと関係ないけど、昔住んでいたので、懐かしい)。
 
そこで、2月8日付の講演の一つがPiedmont Biofuels酵素法BDF(Enzymatic Biodiesel)パイロットプラントの報告がありました。
 
この概要の記事は下記ですので、詳細は下記を参照ください。
 
発表者のPiedmont Biodiesel はCOOP(組合員組織で小額の資金を出し合い運営している地域に根ざした廃油回収・BDF製造、ECO活動等の推進団体)で、日本にはなじみの薄いノースカロナイナ(NC)州の小さな田舎町(Pittsboro,人口2,200人)にある団体です。
 
以前から、個人的に興味があって接触している団体です。
特徴は、日本の一寸とした廃油回収・BDF製造業者よりやや大きい程度の規模ながら、他の活動として、地域のECO関連の推進を図っています。
この程度なら、或いは日本に無いとは云えません。
 
残念ながら絶対日本には有り得ない活動は、BDF関連の最新の研究・技術開発も併せて推進していることだと思います。
 
アルカリ法によるBDF生産法では、効率面から考えても、大規模スケールアップ可能と言う実用性でも、現在最も優れている方法の一つCavitaion Reactor法を実用化し、自己のプラントで使用するばかりでなく、彼らより遥かに大きなBDF製造業者にも販売しています。特徴は、実際のBDF製造経験と技術ノウハウのバランスの良さだと思います。
 
以前にもBlog記事で少しどこかで紹介したと思いますが、http://test.biofuels.coop/wp-content/uploads/2011/01/cavitator-picture-300x199.jpg
添付写真がCavitator と呼んでいる連続エステル交換反応装置です。極微小のバブルを発生させ、そのバブルの破裂時に発生する衝撃波(Shock-Wave)により渦混合(Cavitational Mixing)と熱を利用する手法です。
 
 特徴は、
1)常温反応(加熱不要)
2)廃油水分(1%)まで、及び遊離脂肪酸(7%=酸価値=13)まで、WVO前処理不  要(副生石鹸分も少ない
3)反応はバッチに比べ10~100倍の(超)高速(1分)
4)(最新の研究報告によると、)本方式(及び、超音波方式)では、
 低温時の固化沈殿によるフィルター詰まりの削減効果(MG,SGs)も有り
等です。
 
因みに5,10、15(gpm=ガロン/分)(毎時、1140,2270,3410L製造)のタイプがあり、最小のタイプで、850万円程度~だったと思います。日本の大型バッチとは、高性能で、低価格であり、とても比較できない位の大差です。
 
更に、今回の本題の酵素法によるバイオディーゼル(BDF)反応の研究開発も実施しています。
 
彼らの研究開発は2008年から州の財政支援を受けて開始し、昨年7月より下記写真のパイロットプラントでスケールアップ・テストをしています。
 
酵素EU(デンマーク)の有名な酵素研究会社(Novozymes: http://www.bioenergy.novozymes.com/biofuel-basics/ )酵素製品を使い、米国エネルギー省(DOE)などの研究開発資金を得て推進されていて、この種の酵素法のBDF製造法としては米国内で唯一だそうです。酵素としてどの様な種ものを、そして酵素の加工法(反応後の液分離の容易性)が鍵となります。
米国はどこもそうですが、最近は新油はおろか、廃油も良い状態の油は得られにくい状況で、劣悪な下水処理場などからの回収油までも処理せざるを得ない状況です。
加えて日本もそうですが、油(廃油)価格の高騰もあり、例え、1ガロン当り1$(1L当り22円弱)の政府支援があっても、原材料のコスト削減は急務となっています。
 
この結果、当然遊離脂肪酸濃度の高い油という事になります。
この種の油でも対応できる様に、遊離脂肪酸エステル反応と廃油成分のエステル交換反応に対応できる様になっています。
 
それぞれの反応専用の異なる酵素を使い、前者のエステル化反応(酵素、CAL-B,Novozyme435)では水分が存在しても反応は可能で、遊離脂肪酸(FFA)100%まで、任意の濃度のFFAでも遊離脂肪酸による石鹸の副生なしで、エステル化(BDF)ができる様です。同様に、後者のエステル交換反応(TL-IM)では、別の酵素を使い反応を進めると言うことで、全体は2段反応となっています。たぶん取り扱いの容易性から固定床連続反応装置では?と推定しています。
 
酸(硫酸)を使う通常の方法でも、ある程度のFFA濃度までなら可能ですが(通常は10%Max.、酸価値=19弱程度)、欠点は反応時間が特に遅く、水分が有ると反応が進まないと言うことは、ご存知か??と思います。
メタノールが多量必用となるばかりでなく、強酸に耐える高価な装置材料も欠かせません。
 
年間3mmgy(11.4KL)能力の酸エステル化法プラントの建設費が90万$(7500万円)に対し、酵素法では3分の1の30万$(2500万円)で出来るとも言っています。
 
彼らの発表によれば、極悪の油(油分のないFFA100%)の原料でも、80分の反応時間で20%まで減らせる(80%はBDFに)ということです。
 
通常の(高)遊離脂肪酸(2%~20%、AV値=4~36程度)なら、水分が含まれていても、60分で通常油の酸化値(0.22)まで低下出来るとのことです。
 
加えて、通常の酸法(硫酸)では、反応を進める為に酸化値が高いほど、過剰のメタノールが必要ですが、この方法ではメタノール量は6~12分の1で良いということです。
メタノール使用量が少なければ、製造原単位が少なく有利となります。
 
この事から、高酸価油のエステル化反応だけでも、この酵素法を取り入れ、後半のエステル交換反応は、従来より慣れ親しんだアルカリ法を使うと言う選択肢も有りそうです。
 
現状は、全体の反応処理時間は、600~2000分と言うことですが、今後、反応時間短縮の最適化余地もありそうです。
 
大きな特徴は、高純度グリセリンが得られることだと思います。
 
副生グリセリン中のメタノールと水分を除去するだけで、99.6%の純グリセリンが得られる様です。
上記写真の左は通常のアルカリ法の、右は酵素法の副生グリセリンです。
 
この純度のグリセリンだと、BDF価格に比べ3~5倍も高価で販売できると言うことです。
このことからも、酵素法のBDF生産のコスト競争力が有ると思います。
純度の高い副生グリセリンが得られるのは、固体触媒法(不均一反応)も同じですが、このレベルまで純度の高いものを得られるかは疑問です。
 
他の主な特徴は、
・どの様な原料(Multi-Feedstocks)でも対応できる
・触媒(酵素)は繰り返し使える(数ヶ月)
酵素は天然のタンパク質であり、地球に優しい
・エネルギー効率が高い
・強酸も、強アルカリも使わない(中和工程(アルカリ)が不要)
・石鹸生成がなく、BDFの収率ロスがない(高純度グリセリン
・精製工程(湿式、乾式)が殆ど不要(石鹸分や不純物副生なし)
メタノール回収も少量、又はほぼ不必要(使用量が少ない)
・投資コストが少ない
・既存設備に追加可能
 
 
彼らは、次のステップとして、本年(2011年)中に完成に向けて、本格的な酵素法のプラントを建設しつつある様です。来年から本格稼動の見込みです。
 
BDF製造も、いつまでもアルカリ法で満足することなく、今後は新しい酵素も注目すべきだ製法だと思います。勿論、そこに行く前に、固体触媒法も有り得るかもしれませんが。。。。。
 
そうは言っても、アルカリ法ですら、満足に出来ないのが現実かも知れませんが、。。。。
 
今回の話題は、BDFの酵素法を紹介しました。
では、また。。。。
 
Joe.H
 
 
追伸ー1)(@平成24年4月30日追加)
最新酵素触媒及び装置は、本Blogに何箇所も掲載されています。
下記は小型装置の例です。
 
追伸ー2
 1)上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何かコメント、ご意見、及び質問等具体的な相談のある方は、
 下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
 可能な限り対応させて頂きますので。。。。
  尚、お問い合わせの前、下記を必ず参照ください。
 
以上