バイオディーゼルl(BDF).反応の前に,原料油(WVO)処理を考えよう!!

最近、本Blogを介し有るバイオディーゼル(BDF)製造販売者の方から尋ねられたので、今回はBDF反応の開始前に必要な原料油(WVO)の前処理について、少し考えて見たいと思います。
 
原料廃食油(WVO)集めて来て、或いは購入された後、容器から即反応機へ直接投入・反応開始と言う事は、まさかしないと思います。
最低限の前処理は必要ですが、但し、あまり神経質になる必要は無いと思います。
 
これがBDFではなく、SVO(エステル交換反応を行わず、そのまま燃料として使う)では処理油が直接ディーゼル・エンジンに使われる訳ですので、当然細かな処理が必要な様です。
遠心分離機などによる充分な物理的なフィルター処理、更に熱的、或いは化学的な乾燥処理、それに回収油の分別なども必要です。
 
一方、SVOではなく、ECO(エコ)燃料BDF(バイオディーゼルとして使う場合は、
 
1)反応・分離・精製工程を通じて、物理的な天ぷらかす等のゴミ類は、例え、混入していても除外され、またエステル交換反応とは無関係ですので、多少ゴミが混入していても問題ありません。
ただ金属やセラミック等、硬い物体が混入しているとポンプなどを破壊しますので、そこは注意が必要ですが、次に述べる静値分離で殆ど除かれます。
 
一旦、WVOを受け入れた後で、SVOの場合とは異なり、タンクやドラム缶等の容器内での静置分後、タンクの底部から1/3から1/4より上部のWVOだけを使う様にすれば、充分だと思います。
特別に高温・脱水処理法などを使わずエコ(ECO)的な方法です。
 
底部の残廃食油(WVO)は使わないと言うことではなく、毎回継ぎ足し継ぎ足しの繰り返しですので、無駄にはなりません。余りにも底部残WVO油がゴミ等で汚れたら、時には処分が必要かもしれませんが、。。。。
 
静置分離タンク容量は、1バッチで使用する量の2倍以上、少なくとも必要だと思います。
静置タンクの副次的効果は、受け入れ廃油の品質の安定化(酸価、油種)につながりますので、できれば設置したいものです。
現状、100Lバッチで、300L弱の静置分離タンクを使っています。
 
2)どうしても、静値分離だけでは不安と言う方はフィルター処理をした処理済油を反応で使いましょう!
この場合は、100メッシュ程度の荒いフィルター処理で充分だと言われています。
 
3)WVOの使用時や長期保管時に生成したガム質、スラッジの除去などは、
吸着剤などの使用で除外することは可能ですが、そこまでは我々はしていません。
多くのWVOは、そこまで特別に除去処理が必要なほど劣化してないと思います。
 
海外の例では、劣化が進んだWVO(酸価が20~40~60)の場合は、ガム質処理をしている場合もあります。
最も、この場合はアルカリ触媒法では無理で、酸・アルカリ法などで処理を行いますが、この方法でも初心者は無理です。
一応、AV値が10以下程度が一つの目安だと言われています。
 
4)では最も重要なWVOの前処理とは、何でしょうか?? 
言うまでもなく、WVOの水分除去(乾燥処理)と処理後の水分把握です。
 
水分がWVOに混入していると、反応工程で石鹸の生成増、エマルジョン発生、収率低減、精製時の問題(水洗法でも、乾式法でも同様)、更にはBDF製品の品質劣化等の原因にもなり得るからです。
 
5)WVOの水分の有無や、その量はどう判断するのでしょうか??
一般的には、WVOが曇ってなく澄んでいれば、比較的水分は少ない乾燥油と言えますが、逆の例もあり、これだけでは充分では有りません。
正しくは水分測定をすれば解ります。
水分測定の方法は、既に紹介してますので、そちらを参考にして下さい
 
では、本題で廃食油(WVO)の前処理法ですが、基本的には3つの段階の処理があります。
 
6)最初の第1段処理は、物理的(機械的)な分離法です。
最も古くから、また最も簡単な方法で、既に述べた静置分離タンクで充分静置する事です。充分な時間を掛けることにより、重力と密度差により、水分はタンク底部に徐々に沈んで行きます。
 
静置タンクを2個用意できるスペースと時間的な余裕が有れば、2段階静置法を行えば、より完全と言えます。
静置速度を速め、静置時間を短縮する手段として、WVOを一旦加熱すること(40~50度C程度まで)も行われています。
加温により油粘度が減少し、油水分離がより早く進む訳です。保温がされていれば、一旦加熱されたWVOは冷え難いので、エネルギーはそう掛かりません。
 
水分分離(乾燥)を早めるには、勿論遠心分離機などの機械的な力で分離すれば、時間は掛かりませんが、小規模の場合や費用から、そこまでは必要ないと思います。
海外では小型の専用遠心分離機(DieselCraftなど)が販売されていて、3万円以下で購入することもできますが(日本からもネット購入できます)、。。。処理もやや複雑になりますので、SVOの場合はMust用件ですが、BDFの場合はあれば、《それに越したことはない(Nice to Have)》 ぐらいでしょう。
 
7)第2段処理は、化学的分離法です。
一般的なのは、アルカリ性化学製品を使う方法で、アルカリ(苛性ソーダ等)中和除去法(Caustic Stripping) と言う方式で、アルカリ触媒法では工業的規模でも行われている方法です。
WVO中の分離脂肪酸をアルカリで中和してしまい、それを分離処理した後に、遊離脂肪酸がない状態の油を使ってアルカリ反応を行う方法です。
これに類似した方法が、既に紹介してあるグリセリン前処理法(Glycerin Pre-Treating)です。
処理法も簡単で、中和以外の副次効果もあります。グリセリンのアルカリ量が不足する場合は、アルカリを追加するか、反応触媒量で補正することも有益です。
具体的にはそちらを参照下さい。
 
8)第3段処理は、蒸発乾燥法です。
静置分離で除去できなかった水分を除去する方法として、蒸発乾燥法があります。単純には、WVOを100℃以上、できれは120℃で1時間以上保ち、水分が蒸発しなくなれば乾燥状態となります。
但し、この方法は、時として急激な蒸発により、油の沸騰や飛散が起こりますので注意しましょう!危険ですから。。
よって通常多くは、加熱を60~70℃程度に抑えて、代わりにポンプによるバブリングやスプレイ(霧状の)処理等により、WVOの乾燥を速める方法が採用されています。空気が乾燥していれば、WVOの乾燥も速まります。
簡単な様でいろいろノウハウがありますが、。。。
更に、温度を上昇せずに乾燥蒸発する方法としては、真空ポンプを使った減圧蒸発法がありますが、中小規模では、コスト上実現は、やや無理だと思います。
 
水分蒸発を行わないで、代わりに適当な吸着剤シリカゲル、ゼオライトなど)で乾燥させる方法もあります。
海外では、BDF専用の吸着剤(Quik 'n' Dri™ )も販売され、一部で利用さています。
この吸着剤は、水分除去により再生処理ができますので、再利用可能です。
 
9)最後に、処理済WVOの水分や酸価測定(  http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4440816.html )を行い、
最適なエステル交換反応を実施しましょう。
何か問題があれば、前述のどれかの処理を繰り返し実行することも必要かもしれません。
 
今回は、WVOの受け入れから反応開始までの前処理について概要を紹介しました。
特に、水分と分離脂肪酸の除去、及びこれらの定量把握は重要になります。
BDF製造者の技術・経験レベルが試される処の一つです。
 
では、また。。。
 
追加)
1)今回のWVOの前処理法は、エステル交換反応後の粗製BDFの乾式(無水)精製処理の前処理でも、類似の手法が有効です。
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可能な限り対応させて頂きますので。。
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以上