高遊離脂肪酸(FFA)油を使用したバイオディーゼル(BDF)の製造法について!

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今回は、高遊離脂肪酸(FFA)を含んだ油(廃油、新油)のバイオディーゼル(BDF)製造法(前処理)の話題です。
 
最近、原油価格の高騰によってか、或いは、世の中の余剰資金が投資先を探す動きからか、BDF原料油の価格は、新油はもとより廃油も高騰しています。
 
最近の米国の例では、廃油1ガロン3.0~3.5$(1L当り76円!!)と言う気の狂った様な価格です。従って、より低価格のBDF原料の調達とその使用法の確立が急務となっている様です。日本でも、1L当り30~50円ぐらいまで上昇しているとか??EU、中国、韓国、。。とかへ高価で輸出されている様です。?
 
下記の例は、BDF製造費(米国)の内訳です。
原料費         80.4%
設備・借入金利息   7.2%
メタノール        3.7%
電力・水、等       2.3%
触媒            0.9%
他              5.5%
総費用の80%は原料油費です。現状は更に、この割合は上昇しているかもしれません。
 
そこで、注目され出したのが、遊離脂肪酸を多量に含んだ低品質(低価格)油を使ってのBDF生産法のエステル反応(+エステル交換反応)です。大手BDF生産者は、既に実施中です。
 
我々、通常のBDF生産法は、アルカリ法で行っていますので、油分(TGs:トリグリセリド類)はキチンとアルカリ法で処理すれば、BDFに変換される訳ですが、遊離脂肪酸(FFA)は、石鹼分生成となり、原料ロスとなる他、更に副生物(石鹼)増となります。
理論的には、容積基準で100%油(TG)なら、100%+のBDFが生産できるはずですが、FFA分は石鹼となり(更に、アルカリ分が多かったり、水分が多いと、TGs類まで石鹼化します)、BDF収率は更に低下します。この結果、最終BDF収率は90%(-)以下と言う状態になります。
 
この収率の前提の油は、酸価(=AV)値では5~6(FFA濃度2.5~3%)程度だと思います。FFAの濃度の増加と伴に、BDF収率は低下するばかりか、石鹼分の生成増に伴い、グリセリン分離処理の時間や、精製工程の処理が問題となります(水洗法なら、使用水の増加と水洗回数増、乾式Dryなら、吸着剤・イオン交換樹脂の交換サイクルの減少、再生頻度増、或いはBDF反応時の未反応油残、未精製処理による品質低下など)。
 
一般に、高濃度の遊離脂肪酸を含んだ油は、品質劣化した廃油ばかりではなく、牛脂などの動物性油脂や、ジャトローファ(Jatropha Curcas)、パーム油などの未精製油にも大量に含まれています。これらの油脂(油)のFFA分は除去され精製処理されたものもありますが、より安価なBDF原料となると、未精製処理油脂も使わざるを得ませんし、事実使われています。
つまり、
BDFビジネスの継続⇒安価な原料の模索、多様化⇒高FFA油使用⇒不可欠なエステル化反応
と言う関係になります。
 
では、この高遊離脂肪酸(FFA)油の処理法は、どの様は技法があるのでしょうか??
 
1)FFAを除外してしまう方法:FFAを除外し、後は、通常のアルカリ法で処理し、BDFを生産する方法です。
これまで用いられてきた最もポピュラーな方法で、遊離脂肪酸を可能な限り除去してしまう方法です。例、AV値=6の油であれば、約3%のFFAを含んでいるわけで、これを除外すれば、3%分の原料減となります。小規模であれば、或いは、原料油が安かったり、廃油が無料なら、或いは、充分な量があれば、この程度のFFA量なら、除外する方が、多少の原料ロスが生じても、(少なくとも従来は)良い選択法だったと思います。
 
FFAの除外する方法は、基本的には・石鹼に変換して分離除去法と吸着分離法が有ります。
石鹼にして分離する方法は、苛性ソーダなどのアルカリ類を投与する方法(Caustic Stripping)と、アルカリを含んだグリセリンを使う前処理法(Glycerin Pre-Treatment)等があります。
 グリセリン前処理法は、含有アルカリ量にもよりますが、FFAの除去までのアルカリ分は含まれていません。滴定法のAV値に基いてエステル交換反応の必要アルカリ量を計算すればする程、余剰分は殆どありません。その結果、FFAの除去量は限定的です(AV=5~6が2~3程度まで低下のみ)。より完全にFFAを石鹸化するには、アルカリの追加(エステル交換反応時に、アルカリ触媒量の補正でも同様)が必要です。最も、この方法は、FFA分の除去(低下)のみならず他に水分除去や不純物除去の効果もありますが。。。。
FFA分の完全な除去法は、Caustic-Stripping処理が必要です。FFA濃度と同じモル数(以上)のアルカリ投与が必要です。従来より比較的良好な(低FFA値の)廃油、或いは新油を原料とした大規模生産プラントでは、殆どこの方法が使われています。他にFFA分を吸着分離分離する方法では、各種吸着剤が使われています。多くは、シリカ系、アルミナ系、ゼオライト類、珪藻土、。。。などが使用されていますが、これらの製品類は多種多様で、それなりのノウハウが必用です。
原料油の需給関係や価格にもよりますが、従来は、除去費用と原料ロスのバランスから、AV値で5~6以下の油の前処理法は,これらの方法でした。更に、高FFA油は採算的にも、次の酸触媒によるエステル化法などの処理法となります。
 
今後、更に廃油や他の油脂がより貴重になればなる程、この様に石鹼に変換して廃棄する手段で酸価値レベルを低下しする方法は、原料油のAV値で、2~3程度へと低下すると思います。それ以上では、FFAをBDFとして回収する方が有利となると考えます。
但し、一旦は全てFFAを石鹸化し、グリセリン中に混じった石鹼分を、再度、酸を加えて纏めてFFAとして回収⇒エステル化反応⇒BDF化回収と言う手法も海外では一部行われている様です。
 
2)酸触媒によるエステル化法:酸触媒として、通常は硫酸を使います。硫酸触媒をメタノールと混ぜて、高FFAを含んだ油と、エステル化反応を経て、BDFを製造し、残りの油脂分(TGs)は従来のアルカリ法などで処理する製造法です。通常は酸・アルカリ法と呼ばれ、代表的なFFAの処理法です。
反応は下記の様になります。
R1-COOH+CH3-OH⇔R1-COO-CH3+H2O
この反応は、エステル交換反応と同じで、可逆反応となります。
 
丁度、エステル交換反応に於けるグリセリンの役割と同じで、エステル反応の進展に伴い水分(H2O)濃度が上昇し、エステル反応は右側に進行しなくなります。従って、上記のエステル反応を、右側に更に進める為には、メタノール量増、水分除去、及び高反応温度等が必要となります。
 
通常のエステル交換反応速度は、初期のFFA濃度と目標とするFFA濃度(通常は0.1%程度)にもよりますが、エステル反応速度は、エステル交換反の5~10倍も遅い(時間が掛かる)と言われています。
この為、エステル交換反応と全く同じで、反応速度を少しでも向上させてる為には、既に紹介済のMicro-Mixing技術やMicro-Reactor技術を使えば、反応速度の格段の向上が可能です
 
通常のMacro-Mixing=例、バッチ方式の攪拌式では、化学平衡に達するまで長時間の反応時間が掛かります。連続式であれば、装置の大型化・コスト増となります。 
FFA濃度5~6%(AV値=10~12)以上(+)の油のエステル化反応では、(エステル交換反応と同じですが、)酸2段法が必要となります。酸一段法だけでは、水分濃度の増加で、FFAが充分BDFに変換できる前に化学平衡に達し、反応時間を幾ら掛けてもFFAの低下はできません。
 
この様な場合は、1段法で反応後、水分を含んだメタノールを分離除去し、再度メタノール・硫酸溶液を投入し、反応を行う2段エステル化法の手法が取られています。
上記メタノール+水分を分離除去する代わりに、水分のみが分離できれば、メタノールはそのまま、次工程の反応使えて、メタノール使用量減らせます。水分除去用の吸着剤である合成ゼオライト(3A)などを使うことも可能性大です。吸着剤と通常のメタノール蒸留(回収)費との経費上の比較だと思います。
 
更に、(超)高濃度20~100%(AV=40~200)FFA反応では、3段エステル化法が不可欠となります。反応後のメタノール除去は、最終段の反応では、通常、(FFA分も少なく、従って)生成水分量も少なく除去不要です。継続して後段のアルカリ法エステル交換反応を行います。
 
エステル化反応の回数が増える程、使用するメタノール、硫酸及び処理時間などが増加しますが、原料費減効果の方が、遥かに大きいの様です。海外のBDFプロセスの販売業者は、何れもセール・ストークは、100%FFA原料まで使用可能、原料の多様化対応による製造費減を謳っています。真面目な処は、2段反応や3段反応が、FFA濃度レベルにより必用な事もキチンと述べていますが、何も言わないところも有る様です。
原料の前処理後、FFA濃度により、開始エステル反応段の選択・最適化を行い、処理コストの低減化を図ることができます。即ち、(超)高濃度(以上)FFA油であれば、3段法の全段(1~3段)を使用し反応処理を、中FFA濃度であれば、3段法の最初の1段目はバイパスし2~3段処理を、比較的低FFA濃度油であれば、最終段のみの反応処理で充分と言った具合です。異なった多様なFFAレベルの原料油の同時並行処理も可能です。ブレンド可能なら、その後の)最大のFFA濃度 により反応段数は決まります。
 
FFA濃度の増加に伴い複数段の処理が必要なことは、酸エステル化法に限ったことではなく、後述の固体触媒法(含む、イオン交換樹脂法)でも、同じです。
以上、酸触媒の使用による例を紹介しましたが、
利点は、高FFA・原料の多様化対応、Micro-Mixing技術による反応高速化など、エステル交換反応技術やノウハウの転用が可能、低価格で、何処でも入手可能な硫酸触媒、反応が他の方法に比べて早い。。。等ですが、
 
欠点もあります。強酸の硫酸を使うので(但し、FFA濃度にもよるが投入量は1%+)、エステル交換反応器回りの耐酸材質の選択が必要、酸の使用量が多すぎると、後段のアルカリ触媒の使用量が増える、酸を含んだ廃メタノール回収の蒸留費が別と必要、未回収ならメタノール追加費・廃棄費用が必要。。。。などが欠点だと思います。水分を含んだメタノール回収が必要なことは、以下に述べる固体触媒法でも、同様です。特に、大量生産の連続法なら、なお更です。
 
3)高FFAをモノグリセリド(MGs)に変換する方法:遊離脂肪酸(FFA)が総てモノ・グリセリド(MGs)に転換できれば、後は通常のアルカリ法の反応で、収率ロスなしでエステル交換反応によりBDF化できることになります。この反応は、エステル交換反応の逆反応を行えば良いので、グリセリン+触媒を加えて反応すればよく、比較的簡単な様です。文献では有るのですが、実プラントで使用実績があるかは不明です。高濃度FFA油の処理法としては、あまり有効な方法とは考えにくいと思います。
 
以下、文字数の制限から続編を参照下さい。
 
 
以上