バイオディーゼル(BDF)反応法とアルカリ触媒/メタノール量について!!(基礎編??)

最近、本Blogもバイオディーゼル(BDF)関連、それも基礎編(?)は、すっかりご無沙汰です。
 
最近1年間を振り返ると本Blogで紹介した主なBDF関連のトピックスは、
 
1)特に最近、主にバイオマスのガス化、液化等を考えていますし、紹介しています。将来のBDF原料を使う次世代バイオ燃料(発電用、更には、車輌用)化についての話題紹介です
 
2)BDFでも、従来BDF原料として見向きもされなかった様な劣悪な超高酸価油(FFA)(Acid-Oil,Tall-Oil,Dark-Oil)と次世代の固定化酵素触媒、装置,に関する紹介です
 
3)非食用原料であり、有望なBDF原料ポンガミア紹介です。特に、大量に油が取れそうなので大注目です。海外でも、特に注目され出したのは、極く最近です
 
4)大多数のBDF製造者には、必要もない連続法超高速反応装置(MSR)等の紹介。
 
等でした。
 
そこで、本年の年末ですので、再度BDF反応の基礎編を纏めて、紹介します。
大多数のBDF製造者及び関連の方々にとっては、何を今更。。と思われるかもしれませんが、
中級者はスキップしてください。
 
BDF反応手順と、その関連情報です。
 
1)BDF反応の触媒は、通常はアルカリ触媒を使います。
苛性ソーダ(NaOH)、苛性カリ(KOH)が代表的です。どちらを使うかは自由ですが、苛性ソーダの方が、価格も安価で、触媒性能も良いのですが、最大の欠点は、副生グリセリン固化による配管の詰りです。この為、国内では、多分70~80%程度、苛性カリを使用されていると思います。
尚、私は、値段に加えて、グリセリンから固形石鹸を製造した関係で、主に苛性ソーダを使用します。
 
2)以下の議論は、従って、主に苛性カリで進めます。
BDFのエステル交換反応は、可逆反応です。
BDF化の反応促進因子は、触媒等の諸条件が同じなら、メタノール量に比例し、非促進因子(平衡値、或いは逆反応、BDF分解反応)はグリセリン蓄積量に比例します。
 
3)従って、通常のバッチ反応槽を使うBDF反応法では、1段反応法では、高転化率は理論的に得られません。勿論、前述の様に、促進因子である対廃食油量に対するメタノール量が増えるに従い、徐々に転化率は上昇しますが、限界があります
 
4)そこで、登場するのが、多段反応法です。一部では3段反応法を採用する人もいますが、、通常は2段反応法で充分な転化率が得られます。
2段法によるエステル交換反応は、トータルの反応時間が掛かると思われる人もいるかもしれませんが、むしろ逆で、1段反応法に比べて、2段反応法の方が全体の反応時間は少なくなりますす。
私の経験では、使う装置(容量、攪拌力、触媒量など)によって変わりますが、100Lバッチであれば、1段反応は5~10分、2段反応は5分程度でした。過去のBlog記事でも紹介しています。
 
5)最近は、多くの方が2段法を採用している様です。但し、方法が間違っていたり、誤解があって、必ずしも2段法の充分な効果上げてない場合も、多々見受けられます
先ず基本の反応シーケンスですが、
原料油投入⇒脱水・乾燥⇒酸価測定(滴定、酸価用紙)⇒攪拌・昇温⇒1段反応用(メトキシ投入)⇒(定時、或いは目標転化率確認後)攪拌・反応停止⇒グリセリン分離⇒攪拌再開・2段反応用メトキシ量投入⇒転化率目標値に達するまで反応・攪拌継続⇒グリセリン分離⇒中和⇒粗BDF完成が標準法です。後は、更に静置、ドライ処理、或いは水洗浄等を経てBDF製品化と言うのが主な標準工程です。
 
6)使用原料油は、通常は新油ではなく使用済廃食油ですので、其々の使用状態が異なりますので、残留水分と酸価値の確認必用です。
基本は各バッチ毎の確認が必要ですが、同じ油なら、毎回確認は不要です。
残留水分は水分計があれば、確認ください。通常は1000PPM以下、望ましくは500PPM以下に低下させることが望ましいと思います。水分が多いと、石鹸の副生量が増え、収率低下の他に、グリセリン分離に時間が掛かる等の弊害がでます。
水分除去法は、油の加熱・脱水乾燥(120℃程度で、1時間以上)処理を最初に行い、油温が反応適正温度(60℃近辺)まで低下後、1段反応を開始します。或いは、
前回バッチのグリセリンを再度使うグリセリン前処理法がお薦めです
この方法も過去の記事で紹介済です。加温温度は60~70℃程度で充分ですので、加熱エネルギーの節約ばかりが、その後冷却が不要ですので、時間短縮が出来て、即1段反応に移れます。
 
7)次は、酸価の測定とそれに基づいたメトキシド準備です。
酸価値の測定が滴定法で行うか、余り正確ではありませんが、市販の酸価測定用紙を使います。前者の滴定法の方法は、過去Blogに掲載されていますので、そちらを参照ください。簡単に出来ます。
酸価用紙は、pH用紙とは、操作法は類似ですが、用途も異なりますので、区別して使用ください。。
これらを計測把握する目的は、言うまでもなく、適正なアルカリ触媒量を決める為です。
一般に、油量1L当たりの苛性カリ量を決める公式は、
K=A+B
K; 1L当たりの投入苛性カリ量(g)
A; 1L当たりの新油(酸価値=0)に必要な苛性カリ量(g)
B;  酸価値(上記測定値)であり、1L当たりの廃油酸価値を0(鹸化)する苛性カリ量(触媒失活量)
尚、A値は、反応槽の構造、バッチ量、及び攪拌力などで変わりますが、通常は5~8(g/L)です。苛性ソーダはこの1.4分の1の値となります(分子量差補正)。加えて、本来は、苛性カリの純度補正も必要ですが、省略します。装置の特性で、この値は経験値ですので、各装置で微調整が必要かもしれません。
B値は、(概略の)酸価値であり、鹸化反応で触媒としての効果がなくなる苛性カリ量(石鹸副生)となります。従って、廃食油に対しる新油触媒量の補正項です。
触媒が苛性ソーダの場合は、この値を1.4で割った値を使うか、或いは滴定を苛性ソーダで行います。当然、酸価測定用紙の場合も、値も1.4で割った値となります。
 
メーカーによる、或いは自己流等で、これら触媒量が特に多いと、時に、メトキシド反応(メタノールとアルカリ触媒)で、水分が副生し、この結果、石鹸分が多く副生してしまいますので、注意が必用です。
 
更に、投入メタノールを決める必要があります。
油に対して標準18~25%程度投入する必要がありますが、2段法なら、1段・2段合計で20%程度が標準です。グリセリン前処理法を行う場合は、当然ですが、上記の測定は、グリセリン処理後の油の酸価値を計測し、この値を使います。
通常処理前後で、酸価値は1.5~2.5前後低下します。加えて、グリセリン中の溶解メタノールが廃油側に移りますので、メタノールは、通常の攪拌バッチ法でも、17~19%程度まで低下できます。
 
従って、例えば、100Lバッチで、グリセリン前処理後の酸価値(B)=1.5(処理前は3.5~4.0程度です)とし、A値=7.0とします。また、メタノール投入量は対油18%とした場合、
 
K=A+B=7.0+1.5=8.5(g/L)
 
となりますので、100Lバッチでは、苛性カリ量=850g、メタノール量=100x18%=18(L)です。
従って、メトキシドは、メタノール18Lに対して、苛性カリ850gを加え、良く混ぜて、完全に苛性カリを溶かした後、使用します。
 
7)廃油温度が適正値であり、メトキシドが充分溶解していれば、1段反応用のメトキシドを投入します。
投入量は、メトキシドの80%を1段反応に、残りの20%を2段反応用に使うのが標準です。
上記の例では、1段反応では14.4L(80%)を、後の2段反応では、3.6L(20%)となります。余り正確に行う必要はありません。1段反応の投入量比が、75~90%程度なら、問題ありません。
尚、酸価値の測定は面倒。。。という方は、他に手段が無いのでしょうか?実はあります(非滴定・転化率確認法)。
この方法で、アルカリ量は適当な値を使います。
例えば、先ずメタノール量15Lを測り、苛性カリ700gでメトキシドを作り、全量1段反応で投入します。1段反応後、グリセリンを分離し、簡易転化率試薬で、転化率を測定します(この方法は転化率が測定できなければ、利用できません)。
仮に転化率が、80%であれば、100Lに対するメトキシドを20%(20L)とするなら、20Lx未反応分20%追加=4Lのメトキシドを投入すれば、OKとなります。
どちらの方法が簡単かは各自で判断ください。全て、ヤマカンで、何時も同じ条件では、何れにしても高転化率BDFは製造できません
 
8)2段反応法に於ける1段反応処理は、ある程度適当で構いません。反応時間一定で反応停止する方法でも、簡易転化率法で確認する方法(~80%前後)でも、何れでもOKです。
続く、グリセリン分離ですが、これも完全にグリセリンを沈降させる時間は不要です。
グリセリンは反応非促進要因ですが、微量のグリセリンの有無は後続の2段反応がありますので、問題無いと思います。加えてグリセリン前処理を行うなら、グリセリン抜き出し量もあまり神経質になる必要もありません。理由は、例え、余分にBDFをグリセリン側に抜いてしまっても、前処理で廃油原料油側に吸収・引き戻されるからですグリセリン中のBDF分の他に、メタノール、残触媒(これで酸価低下)、及び未反応油なども、殆ど廃油側に移行します。
 
9)続いて、2段反応の開始です。前述の2方法(滴定法、非滴定・転化率確認法)のどちらかの方法で決まるメトキシド量を投入します。
2段反応時間は、2段反応法を正しく行えば、極めて高速です。正しくは、簡易転化率キット等で、簡易転化率を確認しつつ、反応停止のタイミングを決めますが、慣れれば、定時で反応停止も可能です。装置特性にもよりますが、通常は10~20分以下で完結します。
 
10)最終的に、2段反応を停止できる状態になれば、通常は攪拌を停止し、グリセリン沈降、そして分離操作を完全に行う。。。が標準です(Methanol Recovery after Glycerine Separation)。
その他、最近、海外で注目されている方法は、攪拌を継続しつつ、設定温度(90℃程度)を上昇させ、即、メタノール回収工程に移行する方法(Methnool Recovery before Glycerine Separation) です。
この方法なら、メタノール回収後ですので、BDFからグリセリンが速やかに分離出来るばかりか、BDF及びグリセリン中のメタノールも併せて回収できますので、前者に比べて、BDFからの回収に比べ20~50%程度、回収量が増えて、メタノール費減となります。
但し、重要なことは、この場合、事前にアルカリ触媒を完全に中和しておく必要があります(逆反応による転化率低下)。尚、当初のアルカリ触媒量(メトキシド中の)が適正であれば、何もしなくても、殆ど中和状態ですが…、不安なら転化率の低下が起きていないか、簡易転化率キット等で、確認すれば、安心です。
 
11)以上で、アルカリ2段法による粗BDFができましたので、後は精製処理(ドライ、水洗)ですが、今回は省略します。
 
今回は、BDF反応の基礎であるアルカリ2段法と、そのメトキシドの概要等を紹介しました
 
本日(12月25日)はクリスマスですが、如何お過ごしでしょうか?
併せて、良い新年をお迎えください 
 
では、また。。。
Joe.H
 
追伸)
   上記Blog記事は、一般公開情報です。
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 以上