BDF原料油の状況に関わらず、何故固体触媒は優れているのでしょうか??

バイオディーゼル(BDF)反応は、通常(均一触媒)アルカリ法で行われていますが、他に、硫酸などを使う酸法、或いは最近注目の固体触媒法等があることは、既にご存知だと思います。
 
アルカリ法は、通常苛性カリや苛性ソーダを使います。
このアルカリ法は、価格が安価など優れた点も勿論多く、その結果、バイオディーゼル(BDF)反応用触媒として最も広く使われている訳です。
 
但し、このアルカリ法の最大の問題点は、3つあります。
他タイプの酸触媒、固体触媒と比較を行います。
この結果、少なくともこれらの項目では、固体触媒が最も優れていることが解ると思います
 
 
第1の問題点は高FFA油対応です。
高酸価(高FFA)油では、その増加と伴にBDF収率が、低下することです。
収率低下の原因は、勿論遊離脂肪酸(FFA)の存在です。アルカリ触媒では、石鹸の副生となり、目的のBDFは得られません。加えて、多量の石鹸分分離も極端に困難となります。結果として、BDF収率は大幅に低下します。
 
 
 
 
上記の図にある様に、例えば、FFAが30%の油(酸価値=60)であれば、BDF収率は10%であり、残り90%は石鹸等になってしまいます。これでは、BDF製造ではなく、石鹸製造になります。
 
通常も廃油あらFFA=30%の油はないと思いますが、FFA=5%程度は、日本の廃油でもありえます。
この場合のBDF収率は、80%となり、油の20%は石鹸などに化けてしまいます。
 
。。。。。と言うことで、通常のアルカリ法の限界は、FFA=5%(酸価値=10)程度が使用限界です。
 
では、従来からある酸法はどうどうでしょうか?
 
酸法は高FFA油に対する処理法として、従来から使用されている方法です。
 
でも、収率の減少があります。因みに、図によれば、FFA=30%なら、BDF収率は60%程度の様です。
通常あり得るFFA=5%でも、BDF収率は、90%強程度です。
 
酸法は、強酸性の硫酸を使うので、装置の腐食、反応速度が遅いなどの課題も多いのですが、それでも、対アルカリ法の収率増加は90-80=10%程度の様です。この様な理由からか、大規模生産では、良く使われている手法ですが、個人や小規模では、使用例そう多くはありません。
 
酸法の使用限界は、通常、FFA=20%程度以下だと言われていますが、この場合の予想収率は、70%程度となります。加えて、FFAのBDF反応では、水分が発生しますので、酸法でも、アルカリ法と同様に、2段法が必要になります。即ち、1段酸反応後に、水分+メタノールを分離し、再び酸+メタノールを加えて2段反応を行う方式です。3段法も一部では行われている様です。回収メタノールを再使用する場合は、脱水精製処理もも必用です。
 
では、最新の固体触媒法はどうでしょうか?
固体触媒には、金属酸化物、酵素、イオン交換樹脂などがあります。これらは、既に紹介済みです。
 
添付の図は、固体触媒(金属酸化物触媒)の一つのNextCAT触媒の場合( URL: http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/8562323.html )ですが、我々が使っている固体酵素触媒でも、収率とFFA濃度との関係は、ほぼ同じです。
違いは、NextCATは,FFA=30%程度が最大許容限度ですが、我々の使用する固体触媒(BioCat)は、FFA=~100%まで、1段反応のみで可能です。
 
NextCATの場合、FFA=0~30%までの収率は、一定で95~96%程度です。我々の場合(BioCat)( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/13358844.html )は、常に100%近く、FFA濃度の如何に関わらず一定の収率です
 
この様に使用触媒のタイプ別に、FFA濃度変化とBDF収率の関係を紹介しました。
 
 
 
同様に、、第2の問題点は、廃油(油)に混入の水分濃度です。
下記の図を参照ください。
 
 
この水分と収率の関係も、FFAとの関係と類似しています。
 
先ずアルカリ触媒の場合です。
特に、ご存知の様に、或いは実BDF反応で経験されている方も多いはずですが、水分濃度が収率に及ぼす影響が大です。
 
例えば、水分=5%では、BDF収率=10%以下まで低下します。これでは、BDFは殆どできないことになります。代わりに、殆ど石鹸分となります。
 
適切な水分静置分離を行えば、水分=5%とはなりませんが、例えば、水分=1%程度は充分ありえます。この場合で、収率は、80%程度です。アルカリ法は如何に水分混入を嫌うかの良い例です。
 
水分の影響を除去するには、通常0.1%(1000PPM)以下が望ましいと言われていますが、このレベルまでの水分の低下は、充分な脱水処理(遠心分離、水分吸着剤、加熱脱水)が必要です。
 
では、酸法ではどうでしょうか?
水分混入に対して酸法は、アルカリ法より多少水分に対して強いのですが、それでも収率は低下します。例えば、水分=5%混入だと、収率=80%程度まで低下します。
 
同様に、水分=1%でも、収率=90%程度に低下します。この様な状況で、例え、酸法を行う場合も、原料油の水分低下(除去)の前処理は必要です。
 
使用する硫酸も、水分の影響を弱める為に、可能な限り濃硫酸が必要です。
酸法は、そのエステル反応処理後にアルカリ法を行う2段反応です。
使用量を間違えると後段反応のアルカリ法での触媒量に影響し、エステル交換反応にも影響します。
 
次は、固体触媒法です。
この図も、同様にNextCAT触媒の場合の例です。
水分濃度に関わらず、BDF収率はかわりません。97~98%程度の高収率です。
 
因みに、我々の酵素固体触媒(BioCat)も水分の影響を受けません。
従って、原料油の脱水前処理は不要です。
。。と言うより水分は2~5%程度はないと、反応速度が低下します(実は影響を受ける)。水分補給に代えて、低品質メタノール(純度~80%)が使える、回収メタノールの精製処理が不要と言う大きな経済的なメリットもあります。
 
通常の原料油は、水分は1%程度ですので、通常2%程度の水分を、逆に追加する必要があります。
BDF収率も通常は、100%近辺程度です。
 
以上が、水分濃度が、収率に及ぼす影響でした。
 
第3の問題点は、触媒の再利用性回数です。
 
本来は、アルカリ触媒、酸触媒も、触媒の定義では、自らは減少したり、増加せず無限に使える筈ですが、現実は違います。
 
先ずは、アルカリ触媒です。
ご存知の様に、1回限りの使用です。
この意味では、触媒と言うより消耗化成品です。
また、メタノール中に触媒は溶けるのでBDFとの分離処理も必要であったり、場合によれば困難となります。
 
次は酸触媒です。
この酸触媒も同様に、1回限りの使用で、反応の度に酸触媒を投入する必要があります。酸分離もアルカリ触媒と同じで、困難な場合もあります。
 
最後は,固体触媒です。
 
イメージ 1
 
この場合は、初めて触媒の再利用性が実現できていることになります。
但し、再利用性は、触媒の種類やタイプにより、或いはその製造法に依存します。
固体触媒は、BDF、グリセリンとの分離の容易性(不溶性)という特徴もあるのですが、どうしても固体触媒は、高価であり、再利用できないと経済的に成り立ちません。
 
従って、何回使えるか、何ヶ月使えるかが実用化の鍵です。
実プラントテストで確認が必要な項目の一つです。上の図は、酵素固体触媒(BioCat)の例ですが、他のタイプの固体触媒も同様ですだ、再利用回数は異なります。。
 
この酵素触媒の市販品(NovoZyme)等は、再使用回数と伴に、急激に活性が低下し、使えなくなる例が殆どです。
触媒活性が低下すれば、収率も低下します。
でも、中には、バッチなら連続200回以上、連続プロセスなら6ヶ月以上も使える触媒もあります。
長期に使えれば、当然触媒コストも低下してきます。
 
。。。。と言うことで、触媒のタイプ別再利用性(再利用回数)、収率低下の課題でした。
 
今回は、FFA分濃度と水分濃度、更に触媒の再利用回数の変化と収率の関係を紹介しました
 
そして、固体触媒が何故優れているかの理由の一端を紹介しました
 
皆さん、BDFのアルカリ法による製造で、酸価(FFA)、水分に注意を払いつつ、反応をさせていますか??
これらの分析も必用です。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
 
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