BDF,バイオオイル(SVO),石油ブレンド油のセタン価とセタン価向上剤について(1)!!!!

バイオディーゼル(BDF)の品質規格項目にセタン価があります。
 
これはディ-ゼルエンジンのノッキングの起こり難さを示す指標で、ガソリンエンジンオクタン価に対比されるものとなっています。
別の言い方をすると、自己着火性の良否を示す指標です。自己着火性はセタン価値が高い程高いと言う意味です。
自己着火性の良(否)は、燃料のエンジン内での圧縮から、自然着火までの時間の速さ(遅さ)の遅れ時間(Delayed Time)でもあります。
ディーゼルエンジンは、着火プラグを用いませんので、このセタン価値の高いほど優れた燃料と言える訳です。
 
今回のテーマは、このセタン価です。
各種油脂のセタン価値とそのブレンド例を紹介します。
 
この結果、ブレンド油のセタン価値が使用エンジンの使用条件に対して低すぎれば、その改善策のセタン価向上剤添加などの対策が必要になります。この利用については、次回続編で紹介します。
 
先ずは、セタン価とはの抜粋記事です。
 
Wikipedia 抜粋記事
セタン価(Cetane number)とは、軽油ディーゼルエンジン内でのディーゼルノックの起こりにくさ(耐ノック性・アンチノック性)を示す数値であり、軽油の着火性を表す。15~100の値をとり、セタン価が高いほど自己着火しやすく、ディーゼルノックが起こりにくい。ガソリンにおけるオクタン価に相当する数値である。
 
 軽油成分中で耐ノック性が比較的高いn-セタン(現在のヘキサデカン、C16H34)のセタン価を100、耐ノック性が低いイソセタン(2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、CH3-C(CH3)2-CH2-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-CH3)のセタン価を15とし、試料の軽油と同一の耐ノック性を示すようなセタンとイソセタンとの混合物中に含まれるセタンの割合(容量比)を、その試料のセタン価とする。
 
一般に自動車用としては40~52程度である。ニトロ化合物を添加してセタン価を上げた軽油は、「プレミアム軽油」と呼ばれている。また、JIS軽油の規格であるセタン指数とほぼ等しい。
 
イメージ 1
 
 
イメージ 2
 
上記の定義から解る様に、同じ炭素数が16の炭化水素でも、その分子構造により、上記の上段のセタンのセタン価値は100であり、下段のイソ・セタンのセタン価は15となっています(定義)。
分子構造の違いにより同じ分子量の分子でも、セタン価値は大差がでると言う例です。
 
従って、
 
因みに、バイオディーゼル(BDF)のセタン価は、通常の高速エンジンだと40-60程度は必要の様です。
規格値は、米国(ASTM)は47以上、EU(EN)は51以上、ブラジル45以上となっていて、JISは51以上となっていてEUと同じ値です。
 
過去にも、BDFのセタン価のBlogs記事はあります。
下記は1例です。興味があれば、参照ください。
 
では、脂肪酸メチルエステル(FAME)のセタン価はどの程度でしょうか????
油脂原料による違いです。文献の調査では下記のデータが得られています。
大豆油FAME 45-46
菜種油FAME 50-54
ラードFAME   63-65
牛脂FAME   60-65
となっています。
 
次に、各脂肪酸別のFAMEのセタン価値を紹介します。
ミリスチン酸(C14:0)FAME   66.2(炭素数14の飽和脂肪酸
パルミチン酸(C16:0)FAME 74.5(同じ炭素数の炭価水素は、上記セタンでセタン価=100)
ステアリン酸(C18:0)FAME 86.9(以下は同じ炭素数脂肪酸、こちらは飽和脂肪酸
オレイン酸(C18:1) FAME 42.2(上記と同じ、但し、1価の不飽和脂肪酸
リノレン酸(C18:2)FAME 22.7(上記と同じ、但し、2価の不飽和脂肪酸
 
主な植物系油(FAMEではなく、未処理生油:SVO))のセタン価値の概要は下記です。
大豆油      :38.6
菜種油      :37.6
ひまわり油    :37.1
ポンガミア油   :52.0
パーム油     :42.0
ジャトローファ油 :38.0
 
石油系燃料油のセタン価値は概略下記だと思われます。
灯油       :40-45前後
軽油       :50前後
A重油      :45前後
 
ここから、解ることは、
1)大豆・菜種系のBDF(FAME)はセタン価と言う指標では、ラード・牛脂・パーム系BDFに比べて劣るということです。理由は、各油脂の飽和脂肪酸の構成比の差にあります。
前者BDFの主要脂肪酸は、不飽和脂肪酸オレイン酸リノレン酸FAMEであり、一方後者BDFは、飽和脂肪酸のパルミチン酸、ステアリン酸等が主成分のFAMEだからです。
 
ラード、牛脂、(パーム)は、冬季固化(目詰まり点、CFPP)と言う点で嫌われ者ですが、セタン価値では、逆に優れものと言えます。
 
2)同じ炭素数18のFAMEでも、飽和脂肪酸FAMEのセタン価値が高く、2重結合が1ヶ、2ヶと増えるの従い、セタン価値は86.9、42.2、22.7と急激に低下する事がわかります。
幾ら冬季特性の優れ者オレイン酸100%FAME(CFPP、-30度C)も,セタン価値は、42.2ですので、BDF規格は不合格となります。この改善策がセタン価向上剤ですが、こちらは次回続編テーマです。
 
3)因みに、オクタン価とセタン価は反比例していると言えます。両者相関をとると、セタン価60の燃料はオクタン価0、セタン価0の燃料はオクタン価100と言われています。
 
4)BDF(SVOの場合も同じ傾向)の冬季特性の目詰まり点(CFPP)とセタン価値も、反比例します。
固化し易いBDF(FAME)程、セタン価値は高く、固化しにくいBDF程、セタン価値は低い傾向となっています。
 
一般に、炭素数が多い脂肪酸FAME程、セタン価値は向上し、飽和脂肪酸から、不飽和度が増したり、分子枝分かれ(イソ化)が進んだり、(ベンゼンの様な)リング化が進むとセタン価値は急激に低下する。
 
次に、これらのBDFと石油系燃料油(灯油、軽油重油など)、或いは生植物油(SVO)、動物油脂(ジャトローファ油など)をブレンドした場合を考えて見ましょう!!!!!
 
他に、これらのブレンド油を使う理由はさまざまです。
主な理由は、
5)炭酸ガスの発生を抑える為に、再生可能燃料である生植物油、動物油を100%で、更にはBDF化して、或いはブレンドし使う。
100%使用例が、最も地球環境には優しく、好ましいのですが、通常は石油燃料より、特にBDFは高くなります。現実はコストも考慮すると、このケースばかりではあり得ません。
 
6)燃料油の高騰から、兎に角より安価な燃料油を提供したい。
上記の様な直接ブレンドの理由は、石油系燃料に、BDFをブレンドすると、石油系燃料100%より高価になりますが、植物系油を直接ブレンド(0-100%)によれば、より安価な燃料油が生産できるためです。
 
この場合、ボイラー油の様な燃焼用なら問題ないのですが、ディーゼルエンジン用だと問題が発生します。ブレンド油の粘度セタン価値等です。
前者は今回のテーマではありませんので、後者のセタン価のみに着目します。
 
因みに、ジャトーファ油のセタン価は30-40程度です。
 
これをBDF化(FAME)するとセタン価は50-55前後に増加しますが。。。。。
それなりの費用が発生します。
 
安価なエンジン燃料が目的であれば、例えば、バイオ発電用途等なら、BDF化する製造コストと生油を直接使う(SVO)代わりに、不足セタン価を補正する目的でセタン価向上剤を使うのかと言う選択の問題(費用、他物性)です。
こちらは次回の続編のテーマです。
 
但し、エンジンの選択、燃焼条件及び使用環境を適切に選べば、ジャトローファ油などの生油100%の燃料をディーゼルエンジン燃料の代替としても使われいます。
この場合、価格は最も安価になります。
 
一般に考えられるブレンド油の組み合わせ法は下記ですが、
同時に価格や物性(粘度、セタン価値など)、加えてエンジンの選択・使用環境等を考える必要があります。
 
軽油100%、A重油100%(標準)
ーBDF100%(順標準)
ーBDF/軽油ブレンド(順標準)
ーBDF/灯油ブレンド(車両用は法律違反です!!)
ー各種生植物・動物油、或いはそれらのブレンド油100%
ー灯油・重油ブレンド
ー灯油・生植物・動物油ブレンド
重油・生植物・動物油ブレンド
など各種ブレンド油が考えられます。
 
通常、ブレンド油は、特に、セタン価値が減少します。
用途によっては、セタン価値を上昇しないと燃料油として使用できない場合もあります。
この様な場合、セタン価値を補正・向上させる為の、セタン価向上剤の添加もそれなりのコストアップとなりますが、特に有効であり、必要となります。
副次効果として、窒素酸化物発生減、粘度減等の副次効果もると言われています。
 
更に、粘度改善、ピストン磨耗削減効果等が期待できる添加剤等。。。も別途必要な場合もあります。
その使用目的、価格などを考えつつ、選択が必要です。
 
(追伸)2017・04・10
最近の大型ディーゼルエンジンを使った植物油ダイレクト(SVO)燃料による発電ビジネス(FIT)でも、低セタン価(=油植物油)のセタン価向上対策として本添加剤(2EHN)の添加は有効です。最近、依頼で海外からドラム缶4本を追加購入しました!!ご要望があれば、下記メールアドレスから、ご連絡下さい。
(追伸終了)
 
今回は、ディーゼル燃料のセタン価値の紹介とそれらの各種燃料油とのブレンドに「ついての紹介でした。
続編は下記です。
では、また。。。。
Joe.H
 
追伸)
 上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何かご質問、ご要望、及びご意見等の具体的な相談のある方は、必ずご本人氏名、連絡先電話番号等を添えて、下記へ直接ご連絡下さい。
尚、H.P.経由なら『お問い合わせフォーム( http://www.biofuels.co.jp/page7.html )よりお願いします。 
以上