売電(FIT)向けSVOディーゼル発電、その課題を検討・解決出来てていますか??!!

最近バイオオイル(SVO)を活用したディーゼル発電が各地で小規模から中大規模迄計画、或いは建設中、又は既に稼働開始されている例もあります。

但し、このディーゼル発電機の多くは、主に軽油(時に、重油も)を使う前提で設計・製造されています。
 
安易に、
設備費も比較的安価なディーゼル・エンジン発電で、固定価格(FIT)売電ビジネスを開始するなら、1KWhで24円のSVO燃料に使おう!!。。
と考えるのは多分に危険です!!
 
植物油生焚(SVO)は、軽油重油とはいろいろ油物性、燃焼特性も異なります。
 
燃料の考慮以外に、そのSVOに対する課題・対策法としてのエンジンオイル(潤滑油)の選択、低セタン価格対策、燃焼効率向上対策、エンジンの改造・付加設備対策等も考慮する必要があります。
 
加えて、SVOに適さないエンジン発電機ではなく、SVOを利用しても性能保証されたエンジン発電機の選択法も考慮する必要もあります!!
順次紹介したいと思います。但し、これらは次回以降にお話します。


今回は、先ず燃料としての差を下記の文献を例として、SVOの紹介とその課題を簡単に紹介します。 詳しくは下記を読んで下さい。他にも類似文献はあります。


先ず、最初の下記のテーブルを参照下さい。
1)燃焼エネルギ-の差です!!
軽油(GO: Gas Oil,ディーゼル油) と 植物油(SVO: Straight Vegitable Oil、生植物油)の油物性の違いです。
特に、重要な項目は動粘度(Kinematic Viscosity,㎜2/s=cSt) と 発熱量(LHV: Lower Heating Value、MJ/Kg)です。

ディーゼル・エンジンに,軽油(GO)、重油(HFO),植物油(SVO)等の燃料が、仮に使えて100%完全燃焼したとしても、燃焼エネルギ-差だけの差は発生します。

この例であれば、通常の油の容積(L)で考えれば、

軽 油:42.70x0.827=35.31MJ/L=8,440Kcal/L
植物油:38.14x0.911=34.75MJ/L=8304Kcal/L
となります。

従って、同じ容積の油であれば、植物油は、軽油の98.4%しか動力、或いは発電ができません。
同様に、重量ベースなら、89.3%しかありません。
この例では差は少ない様に見えますが、実際は更に差は開きます。
軽油に対する植物油の燃焼エネルギ-の差は、分析データの項の炭素と水素原子の割合の少なさが原因です。代わりに酸素が含まれています。

尚、植物油は天然製品の為、エネル―値も36~38.5MJ/Kg@LHV程度と変わります。この表の数値38.14MJ/Kgはやや高めの数値です。通常パーム・ステアリンは37MJ/Kg程度が多いと思います。

2)次は動粘度の差です!!
 添付表(Table I)よれば、植物油は、軽油の47.78/3.3=14.48倍もの動粘度があり、それだけ配管、或いは燃料噴射弁等を抵抗が多く、油が流れ難くくなっています。
この流れ難さを補正するだけの圧力をかけられる設備なら流れの問題ないのですが、軽油用のエンジンは、軽油用の動粘度を基準として最適設計されていますので、この余裕度は余りないと思われます。

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 次の図(Fig-3)を参照下さい。植物油、及び軽油に加えてBDFが表にあります。
本Blogでも過去に何回も紹介しているBioDiesel(BDF)ですが、植物油にアルコール(メタノール)を加えてエステル交換反応を行えばBDFとグリセリンができます。BDFだけを取り出したものがBDF燃料です。
余談ですが、ワザワザ植物油をBDF化する目的は少しでも高粘度の植物油(或いは動物油)を軽油の動粘度近くにすることです。植物油の動粘度の10分の1まで、270度K(=-3℃)で下がっています。
この主題は、動粘度値は温度の上昇と共に低下することを示しています。
植物油(菜種油)の動粘度は、370度K(97℃)まで加温すると、270ドK(-3℃)のBDFと同じ動粘度となることを示しています。

植物油(svo)を-3℃の軽油と同じ動粘度にするには、このテーブルから、多分400度K(127℃)前後まで加温する必要があります。

この加温設備は勿論、通常の軽油仕様のディーゼルエンジンには有りませんので、この設備の付加・改造が必要です。
因みに、重油仕様の船舶用エンジン発電機(MANなど大型中速ディーゼル発電機、下記で紹介済)は付加されています。

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 因みに、下記はMAN中速型ディーゼルエンジンで使える重油(HFO)燃料規格の一部です。
特に、動粘度を見て下さい。
動粘度700(mm2/s@50℃)迄OKです。
SVOの動粘度は、上記Fig-3より、50℃(323度K) では30㎜2/s程度ですから、SVOの動粘度の23倍もの高粘度対応も可能となっています。
従って、SVOの動粘度より遥かに高粘度域まで、少なくとも中速型ディーゼルエンジンは動粘度対応できています。

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 下記はMAN社の説明資料の一部で、40℃での燃料粘度比較(Comparison Fuel Viscosity)です。
重油(HFO)の1400(cSt、㎜2/s)に対して、同じ40℃でBDF(FAME,Biodiesel)=4軽油(Gasoil) =2.5に対して植物油(Vegitable Oil)=40となっています。粘度の制限から、通常高速型エンジン(High-Speed Engine)向け燃料は、図にもある様に軽油、BDF迄を、中速型エンジン(Medium-speed Engine)なら、更に植物油重油も使えます。
 
  同社バイオ燃料カタログにも重油用に設計されたディーゼルエンジンなら、大きな変更なしにバイオ燃料が使える』言っています。英語ではDiesel engines designed for heavy fuel operation can use bio fuels without significant modifications”
 
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3) 動粘度の差による油滴粒子径の差(=燃焼効率の差)です!!
 次に、下記の写真を参照下さい。SVO,BDF,及び軽油燃料噴射の写真です。
同じ、条件で燃料を噴射しても、動粘度の差により、噴射長の差(Fig-5)が生じます。
この差は、また噴射油滴の粒子径の差です。粒子径は、例え、燃焼噴射圧を変えても余り変わりません。基本的には粘度比例です。

SVOの油滴は、軽油に比べ、またBDFに比べ、粘度差から大きくなっています。
油滴が小さければ、それだけ簡単に良好に燃焼し、完全燃焼に近ずきます。

この事は、SVO油はエンジン室内で完全燃焼し難いことを意味しています。
言い換えれば、COガスや炭素粒子(黒煙)が排気ガスに出てきます。

これはエネルギー効率低下の他、不完全燃焼により素粒子がエンジン内部に堆積しますので、ピストンの摩耗促進、燃料噴射弁のガス漏れによるエンジン出力低下、オーバーホール時間の短縮、。。などの諸問題が発生します。

)蒸留特性(高温均一成分=粒子径の細分化が起きにくい=燃焼効率の低下)の差です!!
 加えて、更にSVOの問題があります。下記の図が蒸留曲線です。
軽油は各種沸点の混合物です。従って、広い温度範囲で、徐々に蒸発・気化する特性があります。
一方、植物油(菜種油)をみてください。
高温かつ、狭い温度範囲でしか蒸発・気化しません。

 この事は、エンジン室内に噴射されたSVOの大きな油粒子が高温下でも蒸発し難く、粒子径が細かくなり難いことを意味しています。

軽油なら、例え、同じ油粒子径でエンジン室内に噴射されたとしても、低沸点物質が含まれていますので、これらの成分が気化し易くなっています。油粒子内部で気化するとすると同時に、油滴も細分化し、より小さな油滴径となり、その結果より良く燃焼します。

 従って、図(Fig-4)にもある様に、植物油と軽油ブレンドすれば、より低温で気化・蒸発、そして油滴の小粒化が可能となりますが、この場合、植物油に石油(軽油)が混じりFIT24円の電力販売の維持ができなくなりますので、この方策は不採用となります。
 
これは次回までお待ちください。
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最近、ちらほらSVOでエンジンが短期間に壊れた、修理をした、特に出力が低下した等と言うことも聞きますが、これらも一因だと思います?!?!

 
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更に劣化速度の差です!!
 SVO、BDFは油脂の劣化が軽油等に比べて、遥かに早く進行します。
通常、この指標の数値はTAN値(或いは酸価値)として表現されています。概略、この数値の50%が遊離脂肪酸の量(%)となります。例えば、TAN=10のSVOなら、5%が酸化した油(脂肪酸)です。TAN値が10程度は、輸入途中、或いは保管中に簡単に到達する数値です。
この脂肪酸の成分割合が多いと、エンジンの配管、弁類、更にエンジン内部の腐食が発生し、保守費の増大、或いは最悪、エンジンの交換も必要になり得ます。
酸対応・腐食対応の設備を備えたエンジンが必要です。

6)着火性(=セタン価)の差もあります!!
 軽油重油に比べて、植物油、BDFは、低セタン価です。この為、ディーゼルエンジンは圧縮し、その頂点圧力(最大圧力)時に、自然発火するのが理想です。しかし、低セタン価油は、着火性が悪く、その結果、燃焼効率が落ちてしまいます。
 特に低セタン化値の植物油は、通常の高速型ディーゼル・エンジン(毎分回転数1500RPM@50Hz/1800RPM@60Hz)の使用は適していませんし、エンジン・メーカーも、植物油燃料は眼中にないと思います
事実、SVO、或いはBDFでも、100%使用を認めていないと思います。通常は良くて、BDF20%(B20)程度迄です。植物油使用は,ほゞゼロ回答です。

7)植物油SVO)は軽油やBDFとは多いに異なります!! 
 植物油(SVO)は、軽油(GO)、BDFより、むしろ重油(HFO)に近い物性(動粘度、固化温度,等)です!!従って、SVO燃料のディーゼル発電用では、重油(HFO)燃料・船舶用ディーゼル・エンジン発電機の方が遥かに適しています!!
そもそも植物(動物)油(SVO)100%専用に開発されたディーゼル発電機は存在しません。比較的簡単に対応できるのは少なくとも重油用に設計された船舶用中速型(500~1000RPM、500KW~20MWの船舶用中大型、4サイクル・エンジン)の,更に低速型(100~500RPMの船舶用大型・超大型(10MW~75MW)、2サイクル・エンジン)のディーゼル・エンジンが最適であり、FITの様な20年もの間、長期・安定運転には不可欠??です!!
船舶用途では、エンジンが故障すれば、即乗組員生命の危険が大です(=高信頼性要求)。陸上の比ではありません。燃料仕様も、陸上に比べれば運航経費の削減から、遥かに低グレード燃料油しか使えません(=低品質、高粘度油)。
 従って、FIT売電の様な常用ディーゼル発電なら、高信頼性、燃料の多様性等からも船舶用ディーゼルエンジン発電機の利用となると考えます。これが常用発電の常識!?です。故障少なさ、高信頼・連続運転、オーバーホールの長期化対応、常用発電所の実績の多さ等、結局LCC(Life Cycle Cost)を考慮すれば明らかです。
 
 高速型(1500/1800RPM、50KW~2MWの小中型、4サイクル・エンジン)は、殆ど軽油(GO)を使う前提のエンジン設計です!! 植物油(SVO)燃料を高速型エンジンに使う場合は、いろいろ改造、及び運転ノウハウが、例え備わっていても可成り苦労される??と思います。
FIT対応の様な24時間/日、7日/週、8000時間(+)/年稼働要求の様な過酷な連続運転の発電書実績の有無を調査されれば、即ご判断できると思います。高速型の発電機の殆どは、バックアップ用(Stand-by)仕様の発電機であり、連続運転(Prime,Continuous)仕様、それも特にFITの様な長期(20年)連続運転等あり得ない!?!?と思います。

8)ホース、ガスケット類の膨潤・劣化速度の差も忘れずに!!
植物油、特にBDFは、ガスケット、パッキン、プラホース類、O-リング類のゴム製品、プラスティク゚類の膨潤、劣化速度が、軽油重油の比ではありません。最近ある程度対策済の製品もありますが、非対応だと、すぐに使えなくなります。

では、SVO油をディーゼル発電に使用する上で、前述の諸課題の解決法は無いのでしょうか?? 
実はいろいろあります!!

この傾向と対策の解説は次回以降,いつか公開情報限定で行います。
尚、特別お急ぎの方は、下記にご連絡下さい。

では、また。。。。
Joe.H

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