BDF反応の基礎、滴定量に対する酸価値(AV)と遊離脂肪酸濃度(FFA)との関係理解できていますか???

今まで、何度も本Blogで述べてきた滴定法によって測定した酸価値(AV)、或いは簡便法である酸価試験紙によるAV値と廃油中の分離脂肪酸濃度(FFA、重量%)との関係、皆さんは理解していますか???
 
或いは、両者の関係式を理解していますか?? 
 
永年BDFを生産していても、或いは自称BDFの専門家でも、理解できている人は、少ない(?)と思います。
化学系の人なら、当然基礎の基礎ですから、理解していますが、BDF業界には、化学系のジンザイが少ない様なので、。。。
 
そこで今回は、あえて、このAV値とFFA(%)との相関式について、定量との関係も含めて、BDF用に当てはめて簡単に紹介します。
 
先ず遊離脂肪酸(FFA;Free Fatty Acids)、通常は油が分解して生成しますが、一旦出来たBDFが逆反応・分解しても生成します。
 
このFFAは、通常、(廃)油中の遊離脂肪酸濃度として重量%として使われます。
 
しかし、酸価値(AN:Acid Number/AV;Acid Value)は、通常、FFA濃度、油の劣化状態の表現法として使用される場合が多い様です。
 
しかし、ちっとした数式を使えば、どちらかの数値が分かれば、片方の数値に簡単に変換できます。
 
では、遊離脂肪酸濃度のFFA(wt.%)からです。
 
FFA(重量;wt.%)値の定義は、廃油中の遊離脂肪酸の重量%値です。
つまり、全体の廃油(或いは、BDF)の重量に対して、その中に含まれている遊離脂肪酸の重量比を%表示したものと定義されます。
 
一般に、
FFA=TxNx28.25/W      (1)
ここで、
T;滴定法で、サンプル油(W)に対する標準滴定液の滴定量(Titration; mL)
N;標準滴定液のノーマリティ(規定値、後述)
W;サンプル油量(g)
 
尚、Nは、苛性カリ溶液なら(こちらが標準)、苛性カリ分子量=56.1ですので、純度を95%の薬剤を使ったとすると、1gを1000mL溶液を作る場合は、N=1x0.95/56.1=0.017となります。
同様に、苛性ソーダ1gを純水1000mLに溶かした溶液を使えば、苛性ソーダの分子量=40ですので、N=1/40=0.025となります(苛性ソーダは、一般に高純度で、純度補正は不要)。
 
サンプル量は通常、容量1mLの油を使いますので、油の密度(0.92g/cm3と仮定)から、その重量は0.92gです。
 
28.25の数値は、油の各種脂肪酸の代表としてオレイン酸の分子量(MW=282.5)の10分の1の数値です。
 
現実の遊離脂肪酸は混合物であり、オレイン酸ばかりでなく、他に飽和脂肪酸であるステアリン酸(MW=284.4,C18:0)、パルミチン酸(MW=256.5、C16:0)、ミリスチン酸(MW=228.4,C14:0)や不飽和脂肪酸の2価(2重結合が2ヶ)のリノール酸(MW=280.4,C18:2)や同3ヶのリノレン酸(MW=278.4、C18:3)なども含まれていますが、通常のBDF用油は、菜種油だとオレイン酸が70~75%程度と主成分ですので、ここでは代表値として使いっています。
 
BDF原料油は、通常廃油を使い、多くの場合、かつ混合油ですので、どの様な油種か不明の場合が多いと思います。他の分子量は使えませんが、もし多少想像がつけば、調整することも可能です。正しくは組成分析が必用です。
因みに、大豆油の成分分析表(C16:0=9.4%、C18:0=4.1%、C18:1=22%,C18:2=55.3%、C22:0=0.3%)からの計算では、(平均)分子量MW=278.78でした。
 
従って、(1)式は、サンプル油(W)が容量1mLなら
苛性ソーダ溶液の滴定なら、FFA(wt.%) = 0.768xT       (2)
苛性カリ溶液の滴定なら、  FFA(wt.%)=0.522xT      (3)
となります。
 
通常の苛性カリ溶液で滴定する場合は、FFA(%)値は、より正確には(3)式となり、定量(T;mL)の0.522倍がFFA値(wt.%)となりますが、簡略的には、0.50倍(wt.%)となります。
 
同様に、サンプル油(w)が重量(1g)でも、任意の重量、或いは容量でも、更には、苛性カリ、ソーダの純度が解かれば、(1)式から計算できます
 
因みに、サンプル油を1g、苛性カリの純度100%(或いは、純度補正なし)での敵定量(mL)でのFFA値なら、(3)は下記です。
                   FFA(wt。%)=0.504xT     (4)
 
従って、正確なデジタル秤量計などで、サンプル油を重量1g図れて、かつ、高純度100近い苛性カリを使った場合は、滴定量(T,mL)の0.50倍が近似値でなくFFA(wt.%)となります。
 
次は酸価値(AV)です。
 
酸価(AV)値は、通常は、廃油を上記の苛性カリ水溶液で中和するまでの滴定量(mL)と定義されています。
BDF製品の規格項目(ASTMなど)にもなっています。
 
製品規格値はAV=0.5%以下です。
 
AV= TxNx56.1/w                 (5)
ここで、N;苛性カリ値です(N=0.017)
他は、FFAの場合と同じです。
 
結果として、サンプル油(1mL)に対する苛性カリ溶液での滴定量(T;mL)とAV値との関係式は、
AV=1.037xT                 (6)
となり、概略、滴定量(T;mL)がAV値となります。
 同様に、サンプル油(1g)に対しては、
AV=0.954xT                 (7)
 
最後は、AV値とFFA(wt。%)の関係です。
(1)及び(5)式から、
AV=56.1/28.24xFFA(wt.%)=1.987xFFA(wt.%)        (7)
又は、
FFA(wt.%)=0.5036xAV                            (8)
となりますので、
通常は、AV値の50%、半分(50%)の値が、FFA濃度(wt.%)になります。
 
定量(T:mL)と酸価値とは、正しくは、(5)、或いは(6、サンプル1mL)。(7、サンプル1g)式の関係ですが、
滴定溶液として苛性カリ溶液を使う場合は、概略値として 
AV = T                                             (9)
と仮定しても、そう大きな誤差ではありません。
ただし、正しくは、(6)、或いは(7)式となることも覚えていて、損はありません。
 
 
今回は、酸価値(AV)と遊離脂肪酸濃度(FFA,重量wt%)との関係、及びその滴定量(T;mL)との関係を説明しました。
 
尚、滴定の測定器具の例として、ピペットは、前回のBlogで紹介してあります。
 
また、必要な試薬は、中和試薬のフェノールフタレイン溶液、或いはPH計です。
苛性カリ溶液や苛性ソーダ溶液は、BDF反応で使っているものが使用できます。
試験溶液を作る為には、純水が必要です。一度溶液を作れば、6ヶ月程度は使うことができます。
溶剤として、例えば、イソプロピルアルコールIPA)などがあれば、これで全てです。
滴定の測定誤差を少なくするためには、複数回(例、3回分析)の分析も必要です。
 
BDF反応に於ける酸価値(AV)の測定を行わずして、よいBDFはできません!!
アルカリ触媒量計算、酸価の中和補正に不可欠だからです
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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