(続)極寒対応処理済Biodiesel(バイオディーゼル;BDF)の低温流動特性を調べて頂きました!!

専門家による分析の結果、極寒、厳寒(冬季)処理済バイオディ-ゼル(BDF)の曇り点(CP)は、マイナス(-)39℃でした!!
 
期待値を含め予想どうりの分析結果でした。
以下、その報告です。
 
以前に下記のBlogで紹介した様に、
通常使っている使用済油(WVO)をエステル交換反応を行いバイオディーゼル(BDF)を製造し(サンプル1)に対して、各種流動点降下剤(CF;,Cold Flow Improver)をいろいろ評価し(10種)、そのBest-1&2がサンプル2,3、及びサンプル1の冬季処理をしたものが、サンプル4でした。
つまり、無処理BDF,流動点降下剤の添加BDF 、及び極寒冬季処理済BDFの4サンプルの冬季特性(CP,CFPP,PP)の評価比較を行いました。
を参照下さい。
 
尚、前回の検査結果(単位 ℃)は下記でした。
 
サンプル     曇り点(CP)      目詰まり点(CFPP)        流動点(PP)
  1         1            -2                 0
  2         0            -1            -12.5
  3         1            -1            -5.0
  4       -11           -27           -42.5
                 
 
前回のサンプルでは、
極寒(冬季)処理済サンプル4の、特に曇り点(CP)が、私の期待値に比べて、よくなかった
ので、今回は、冬季処理を完全に極寒使用で実施し、更に、処理済BDFの乾燥(水分除去)を完全に行う様に心がけて、追加サンプルの分析をお願いしました。
 
この今回の分析結果の報告が下記ですイメージ 1
 
右の写真が今回分析依頼をお願いした3サンプルです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
分析結果は、下記テーブルに示します。
 
 
 サンプル     曇り点(CP)    目詰まり点(CFPP)    流動点(PP)
  5         -39         -27          ー42.5
  6         -31         -27          -42.5
  7         -35         -27          -42.5
 
各サンプルは、それぞれ添加剤量、処理法などが、多少違いが有りますが、基本は同一です。
 
尚、極寒、冬季対応処理法の概要については、
http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/3879043.html
等を、また流動点降下剤については、
等を参照下さい。
 
 
前回の処理済サンプル4は、曇り点(CP)がマイナス(-)11℃と言うことでしたが、
今回は処理をきちんとした結果、上記に示す様に、曇り点(CP)は、いずれもマイナス(-)30℃以下です。
 
特に、サンプル5の処理例では、曇り点(CP)は、マイナス(-)39℃
と言う結果です。
 
曇り点(CP)の定義から、微小結晶がこの温度で、初めて生成したことになります。 
 
次の流動点(PP)ですが、
規格定義から完全に固化した温度+2.5℃が流動点(PP)となる訳ですので、
完全に固まったのは、マイナス(-)45℃であった
と言うことです。
 
この結果、流動点(CP)規格の定義より、流動点(PP)はマイナス(-)42.5℃
と言う値で報告されたと言うことです。
 
極寒冬季処理済バイオディーゼル(BDF)サンプル(#4~#7)の全てが、何故か理由は分かりませんが、同じ温度のマイナス(-)42.5℃と言う報告結果でした。
 
次は目詰り点(CFPP)です。
目詰り点(CFPP)規格では、バイオディーゼルが固化し、固化結晶で試験フィルターが詰まる温度を目詰り点(CFPP)とする
と定義されています。
 
通常のバイオディ-ゼル(BDF)では、CP>CFPP>PPの順で温度は低下するのが普通ですが、
今回の分析では、曇り点(CP)と目詰り点(CFPP)の温度が、逆になっています。
 
分析者に確認したところ、目詰り点(CFPP)のマイナス(-)27℃でも、全く固化してない!
と言うことでした。
CFPPの分析法では、サンプルをある一定時間に決まったフィルターを通過させ、それを再度サンプルに戻す様になっているとの事で、
今回のサンプルは何れも、フィルターを規格時間内で通過するが、戻り時間がオーバーとなって、この温度となった!!
と言うことでした。
 
原因は固化結晶ではなくて、低温による粘度上昇が原因の様です。
 
低温になるに従い粘度が急上昇することが、良く知られていますが、
固化結晶が原因ではなく、粘度上昇により目詰り点(CFPP)温度が決まってしまった
と言う特殊例です。
エンジンでの実燃焼時など、この温度以下でも、特に問題ないと思います。
 
バイオディーゼル目詰り点(CFPP)規格とその測定法でも、想定外のことが起きた
と言うことが原因だと思います。 
分析結果により、マイナス(-)31~39℃で、初めて一部固化を開始した訳ですので、
CFPPの温度では、固化してないことは、当然だと思います。
 
従って、マイナス(-)39℃から42.5℃迄、
固化が原因でフィルターを詰まらせないバイオディーゼル(BDF)が製造できた
ことが、証明されました。
 
少なくとも、ECO燃料であるバイオディーゼル(BDF)は、以前から宣言している様に、
 
極寒、厳寒の北海道を含め全国どこでも、マイナス(-)40℃程度までは、固化しない状態で使える!!
 
と言う結果です。
 
因みに、飽和脂肪酸はもとより、マイナス39℃では、不飽和オレイン酸(C18:1)・メチル・エステル(融点:-19.5℃)、リノレン酸(C18:2)・メチール・エステル(融点;-35℃)でも、固化している温度レベルです(付録ー2参照)。
 
尚、実使用で粘度が高過ぎる場合、或いは粘度を下げたい場合は、粘度調整剤を考えた方が良いかもしれません。また、セタン価の測定結果によって、セタン価向上剤などを添加した方が良いかもしれません。不飽和脂肪酸酸化も進み易くなりますが、酸化防止剤は添加済です。
 
いずれにしても、極寒(厳寒)冬季処理済バイオディーゼルの分析結果により、
バイオディーゼル(BDF)は、マイナス(-)40℃と言う極低温下でも、固化しない製品が、それも、極く普通の使用済の主大豆油ベースのバイオディーゼル(BDF)製品からでも製造できる!!
ことが実証されたことになります。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
 
追伸)
 上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何かコメント、ご意見、及び質問等具体的な相談のある方は、
 下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
 非公開情報など内容によっては、お答えできない場合や条件付となりますが、
 可能な限り対応させて頂きますので。。。。
  尚、お問い合わせの前、下記を必ず参照ください。
 
 
 
付録-1)
冬季特性の説明(PP,CP<CFPP)
http://www.sebec.co.jp/tech_info/yougo/img/pourpoint.gif
 結晶が凝集し管内でジェル状をなし管内での流動が生じない温度。
日本工業規格(JIS K2269)によれば、石油の流動点は、
試験管にとった試料を46℃まで予備加熱したあと、
規定の方法で冷却していき、予期流動点より10℃高い温度から測定を開始して、
2.5℃下がるごとに試験管を冷却浴から取り出して観察する。
こうして試験管を横にしても5秒間全く動かなくなる温度を求めて
それより2.5℃高い温度を流動点とする。
 
 
http://www.sebec.co.jp/tech_info/yougo/img/cloud.gif
 燃料を静置冷却したときに液体中に結晶が観察される温度。
日本工業規格(JIS K2269)によれば、
試料を予期曇り点より少なくとも14℃高い温度に保ち、
水分があるようなら乾燥ろ紙でこすなどの適当な方法で除き、完全に透明にする。この試料を試験管に入れ、
規定に従って冷却し、試料の温度が1℃下がるごとに試験管内部を観察する。
試料の底部に、最初に明らかな試料の曇りを認めた温度を曇り点とする。
 
http://www.sebec.co.jp/tech_info/yougo/img/cfpp.gif
 曇り点よりさらに結晶が凝集し、それが燃料フィルターで詰まる温度を指す。
日本工業規格(JIS K2288)によれば、
20mlの試料が45ミクロンのフィルターを、
1.96kPaの負圧の背圧のもとで60秒以上通過できる最低温度。
 
 
付録ー2)
 
代表的な脂肪酸・メチール・エステルの融点( Melting Points、℃ )
methyl myristoleate(C14:1)    -52.2   
methyl palmitate     (C16:0)      30     
methyl palmitoleate (C16:1)    -33.9  
methyl stearate      (C18:0)      39   
methyl oleate         (C18:1)    -19.5  
methyl linoleate      (C18:2)    -35
methyl linolenate    (C18:3)    -52  

 
単一成分では、曇り点、流動点、目詰まり点などは無く、
液化(溶ける)する温度である融点のみが存在します。
また、上記例(C18:1)は、C18は炭素数を、:1は2重結合数です。
 
低温特性の優れた脂肪酸(C16:1,C14:1)は、天然油には殆ど含まれていませんので、
残5成分が主要成分で、冬季特性が決まります。
成分割合最適化により冬季特性も変わる理屈です。
 
付録-3)
各種油脂のメチールエステルの曇り点(CP)データ(℃)
Algae 1       -5.2       Hepar, Low IV      6.7
Algae 2        3.9       Jatropha        2.7
Babassu      4.0        Lesquerella fendleri   -11.6
Beef Tallow 16.0       Linseed        -3.8
Borage      -1.3        Moringa oleifera    13.3
Camelina     1.5        Mustard         3.2
Canola       -3.3        Neem           14.4
Castor      -13.4       Palm      13.0
Choice         7.0    Perilla Seed -8.5
Coconut       0.0    Poultry Fat  6.1
Coffee         0.2    Rice Bran   0.3
Corn, Distiller’s -2.8    Soybean    0.9
Stillingia   -8.5
Evening Primrose -7.5   Sunflower   3.4
Fish               3.2   Tung     -10.0
Hemp           -1.3   Used Cooking Oil 2.4
Hepar, High IV     16.0   Yellow Grease   6.0 
 
以上