油種が分かれば、冬季に於けるフィルター目詰り点(CFPP)は推定できます!
今回は、使用油種さえ分かれば(、或いは油種の混合割合が分かれば)、
バイオディーゼル(BDF)のフィルター目詰り点(CFPP)は、(わざわざ実測しなくても)、冬季時どの程度の低温まで使えるか推定できる
と言うテーマです。
曇り点(CP)と目詰り点(CFPP)との相関式については、以前紹介しました。
CFPP(℃)=1.0191xCP(℃)-2.9 By Dunn,1995 (1)
(尚、適用限界についてはNote 参照)
曇り点(CP) は、比較的簡単に(冷凍庫での簡便法でも)測定できます。
概略、目詰り点温度(CFPP)(℃)は、曇り点(CP)より平均3℃低い温度
と言えます。
今回は、その曇り点(CP)が分からなくとも、
従って、CFPP推定のために、油の脂肪酸組成をわざわざ測定までする必要は、通常ありません。
脂肪酸 CME PME SME SFME
C12:0 0.3
C14:0 1.1
C16:0 4.6 41.9 10.5 4.5
C18:0 2.1 4.6 4.1 4.0
C20:0 0.7 0.3 0.3
C22:0 0.3 1.0
C16:1 0.2 0.2
C18:1 64.3 41.2 24.1 82.0
C18:2 20.2 10.3 53.6 8.0
C18:3 7.6 0.1 7.7 0.2
Σ 飽和脂肪酸 7.7 48.2 14.6 9.8
Σ 不飽和脂肪酸 92.3 51.8 85.4 91.2
C12:0 0.3
C14:0 1.1
C16:0 4.6 41.9 10.5 4.5
C18:0 2.1 4.6 4.1 4.0
C20:0 0.7 0.3 0.3
C22:0 0.3 1.0
C16:1 0.2 0.2
C18:1 64.3 41.2 24.1 82.0
C18:2 20.2 10.3 53.6 8.0
C18:3 7.6 0.1 7.7 0.2
Σ 飽和脂肪酸 7.7 48.2 14.6 9.8
Σ 不飽和脂肪酸 92.3 51.8 85.4 91.2
Σ 不飽和脂肪酸=C16:1+C18:1+C18:2+C18:3
次に、これら油脂の物性データを下記に示す。
PP (°C) -9 15 0 -2
計算値(2) -5.6 12.2 -2.5 -4.6
計算値(2) -5.6 12.2 -2.5 -4.6
上記の表で、本来はCP>CFPP>PPの順に温度が低下するはずであるが、
測定法の違いや、CFPPの定義の完全固化 温度+2.5℃等により、
相互に接近している場合は、逆転現象がしばしば見受けられる(例、PME,SME)。
尚、上記計算値は下記の相関式より計算した。
CFPP(℃)=0.438x(Σ飽和脂肪酸、Wt.%)-8.93 (2)
(尚、適用限界についてはNote 参照)
CFPP計算値と実測値を比較すると、ほぼ合致した結果となっている。
この計算式は、混合油でもある程度当てはまる。
下記に1例を示す。
表から目詰り点(CFPP)の凡その推定計算は可能であることが分かる。
50 50 11.5 -7 -3.9
75 25 9.6 -8 -4.7
25 75 13.1 -5 -3.2
50 50 30.9 5 4.6
25 75 22.7 0 1.0
50 50 12.4 -3 -3.4
75 25 13.8 -4 -2.9
特に、廃食油(WVO)は、特定の油種が100%分離されて提供されることは少ないし、
最近の商用てんぷら油も殆ど混合油である。
従って、(混合)廃油ベースのバイオディーゼル(BDF)の最も重要な冬季物性値である目詰り点(CFPP)を推定できることは、価値がある。
但し、上記の数値はすべて新油ベースであり、
廃食油(WVO)では多少高めの温度となるので、補正が必要かも知れません。
同様の補正が必要でしょう(+1~3℃?)。
勿論、前述の式(1)から曇り点(CP)が分かれば、この式からCFPPを推定する方が、より計算精度があると思われる。曇り点(CP)は、目詰り点(CFPP)に比べ、比較的簡単に素人でもある程度測定できます。
勿論、バイオディーゼル(BDF)の目詰り点(CFPP)は使用環境の気温に耐えられなければ、しかるべき処置・行動が必要なことになります。
油種の変更で(前述のキャノーら100%なら)、マイナス(-)7℃までなら使用可能というCFPP値になっています。
2)下記で紹介済の流動点降下剤を添加して、流動点の降下を確認する。
目詰り点(CFPP)の確認であり、流動点(PP)ではありませんので、。。。
効果は限定的か、殆どないと思いますが、。。。
3)下記等で紹介済の飽和脂肪酸を除外するなどの冬季処理を行う。
4)使用をあきらめ、軽油へ切り替える。
もうバイオディーゼル(BDF)の冬季対応は済んでますか??
では、また。。。
何か、特別にコメント、ご意見なり、ご質問や具体的な相談のある方は下記へ直接ご連絡下さい。
Note)
1)(Σ飽和脂肪酸、Wt.%)>5% 程度の通常の天然油脂、或いはその混合油でのみ適用できる。
冬季処理などを行い、飽和脂肪酸濃度を極端に低くした場合は曲線になり、この直線式では近似できません。
因みに、この式では飽和脂肪酸濃度がゼロのときは、CFPP=-8.93(℃)となるが、現実はー40℃以下となる。
2)目詰り点として、CFPP(Cold Flow Plugging Point)が用いたが、これはヨーロッパ規格(EN14214)で、あくまで報告数値であり、夏用・冬用で異なる(BDF,軽油共通)。
類似規格で米国では、LTFT(LowTemperature Flow Test,ASTM D4539)がある。
このLTFTも曇り点(CP)との相関式が成り立つ。
LTFT(℃)=1.0197xCP(℃)+0.4 By Dunn,1995 (3)
ほぼ LTFT(℃)=CFPP(℃)+3.3 (4)
LTFT規格の方が、より安全な(厳しい)冬季規格となっていて、
曇り点(CP)よりやや高い温度(0.4℃)が目詰まり点(LTFT)となります。
事実、植物油ベースのBDF中には、SG(Sterol Glucosides )と言う固形物質が微細な物質が微量含まれ(20~120PPM程度)、最近米国でBDF業界で話題の物質です。
通常のフィルターでは取り除けない固形物質で、BDFがその曇り点(CP;Cloud Point)以上の高温度でも、結晶核存在⇒核成長⇒エンジンフィルター詰まりの原因物質となる。
植物油に、この元の物質が含まれていると言われている。
この除去には、専用の吸着フィルター)や珪藻土などが使われている(詰り防止には、30PPM以下へ)。
新目詰り点規格(CSFT)(ASTM D6751:Cold Soak Filtration Test )として、昨年から追加実施されている。
但し、現実には燃料フィルターがこの温度で100%詰る、或いはこの温度まで詰らないと言うことを示すものではありません。
以上