バイオディーゼル(BDF)のWinterization処理により目詰り点(CFPP)は必ず改善できる!!

前回紹介した様に使用油種さえ解かれば(、或いは油種混合割合が分かれば)、
バイオディーゼル(BDF)のフィルター目詰り点(CFPP)は、わざわざ測定しなくても、概略の目安値を推定できる
と言うテーマでした。
 
今回は例えば、更に適正なWinterization(凍結分離処理)操作を行えば(ウィンタリング、Wintering、晶析分離、脱蝋 等とも言う)、飽和脂肪酸(濃度)を減少させることができ、効果の不確実な流動点降下剤等を使わなくても
バイオディーゼル(BDF)の目詰り点(CFPP)温度は必ず低下改善できる!!
と言うテーマです。
 
この処理により曇り点(CP)や流動点(PP)も、併せて低下改善できます。
 
尚、飽和脂肪酸の低下処理よるCFPPの改善法としては、他に紹介済の尿素(肥料)もあります。
 
油脂の脂肪酸組成も、前回と同じものを添付に示します。
   
天然植物油製BDFに対して、Winterization処理を行うと、例えば、
 
大豆油ベースのBDF(SME)を菜種(キャノーラ)ベースの低温対応BDF(CME)へと変えたり、或いは
・パーム油BDF(PME)から、ほぼ大豆油ベースのBDF(SME)へと変更できるなどが自由にできます。
・一般に、高温固化BDFを低温対応のBDF化へと変更する等が可能です。
・更には、天然油脂では存在し得ない様な飽和脂肪酸濃度が極端に少ない(例、1%以下)、或いは全く含まないバイオディーゼル(BDF)も製造できます。従って、固化開始点(CP)、目詰り点(CFPP)等の温度レベルが低温化されます。
 
因みに、前回紹介した下記の式を用いることにより 、Winterization後の目詰り点(CFPP)を実測しなくとも、ある程度予想できる
 
CFPP(℃)=0.438x(Σ飽和脂肪酸、Wt.%)-8.93  (1)
 
添付テーブルから、例えば大豆BDF(PME) の飽和脂肪酸濃度は14.6%であり、これを6.9%だけWinterization処理で減らすことが出来れば、7.7%の菜種ベースのBDF(SME)と同一となる。 
飽和脂肪酸濃度を6.9%減らすと、式(1)から目詰り点(CFPP=0.438x6.9)実測値は-4℃から計算上3.02℃低下し、菜種BDFの実測マイナス(ー)7℃と一致する事を示している。
 
混合油でも、Winterization処理を行い目詰り点(CFPP)を低下できます
 
Winterization処理は、理屈は簡単で低温になれば、
飽和脂肪酸が固化を開始し(CP)、続いて結晶成長するので、
然るべく温度のタイミングで固化部分をフィルター処理・分離し、
固化しなかった液状のバイオディーゼル(BDF)を得る処理法です。
 
但し、実際はいろいろ製造Know-Howがあり、
通常は曇り点(CP)から流動点(PP)までの温度が接近していて、
一括で固まって固液分離ができなかったり、出来ても、
通常は極端に収率が悪かったりで、実用化出来ない
或いは、必要とする温度レベルまで、飽和脂肪酸濃度を低下できない
とかで、そう簡単ではないと思います。
 
だからこそ、世のBDF製造者も、利用者も冬季対応では困っている??
訳です。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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添付:
脂肪酸組成 は重量%(wt %) であり、 キャノーラ油(ベースのメチールエステル;CME、以下同様), パーム油(PME), 大豆油 (SME), ひまわり油 (SFME) を例として示します。
 
脂肪酸                 CME      PME       SME       SFME
C12:0                            0.3
C14:0                            1.1
C16:0                   4.6       41.9      10.5         4.5
C18:0                   2.1       4.6       4.1         4.0
C20:0                   0.7       0.3                 0.3
C22:0                   0.3                         1.0
C16:1                   0.2       0.2
C18:1                   64.3      41.2      24.1        82.0
C18:2                   20.2       10.3       53.6        8.0
C18:3                    7.6        0.1        7.7          0.2
Σ 飽和脂肪酸             7.7       48.2      14.6         9.8
Σ 不飽和脂肪酸            92.3       51.8       85.4        91.2

但し,、
 Σ 飽和脂肪酸 =C12:0 + C14:0 + C16:0 + C18:0+ C20:0 + C22:0.   
 Σ 不飽和脂肪酸=C16:1+C18:1+C18:2+C18:3
 
及び、これら油脂の物性データを、下記に示します。

                    CME    PME     SME     SFME
セタン価(CN )          48-56     62     48-56     54-58
CP (°C)                0       17      1        5
CFPP (°C)                          -7            12         -4               2
PP (°C)               -9       15           0              -2
計算値(1)               -5.6         12.2       -2.5            -4.6
 
                                                                                                                        以上