バイオディーゼル(BDF)の飽和脂肪酸エステルの分離と相平衡の関係を理解しよう!!

今回は、バイオディーゼル(BDF)の冬季処理を結晶分離(Winterization)法で行う場合、基礎となる相平衡関係を理解しようと言うテーマです
 
前回の寒冷地向けバイオディーゼル(BDF)のサンプル例のテーマの続編、或いは、補充説明となりますので、出来れば下記を先に読まれてから参照ください。
 
どの様な物質でも、その温度レベルは異なりますが、一般に温度の高い状態から低下するに伴い、気体、液体、固体(結晶)へと状態変化します(例外物質もありますが、。。)。
バイオディーゼル(BDF)でも同様です。
 
気体と液体間の二相変化を利用したのが、蒸留分離、或いは気化(フラッシュ)分離です。
同様に、液体と固体(結晶)との相変化を利用したのが、結晶分離です。
目的に応じ、また物質の性質などに応じて、各種分離方法が選択されます。
常温でバイオディーゼル(BDF)は液体状態ですので、蒸留は加熱操作、結晶は冷却操作です。
 
着目する操作目的が、飽和脂肪酸エステルと不飽和脂肪酸エステルの効率的な分離ですが、
BDFの気化温度(液体が気体する)は、これらの温度が接近している為、蒸留は一般に使えません。
BDFの精製に蒸留法を採用している場合でも、BDFの冬季物性(CP,CFPP,PP)は余り改善しません。
BDFより高温、或いは低温で液化する不純物、未反応物などが、その操作温度により除外できるので多少は改善しますが、精製が主目的で、冬季処理法ではありません
蒸留操作のBDFサンプルは、色の不純物などは除外されるので、ほぼ無色となります。
冬季物性の曇り点(CP)等は、冷却テストすれば分かりますが、改善幅は僅かでした。
 
一方、飽和脂肪酸エステルと不飽和脂肪酸エステルでは、結晶化温度は大幅に異なります(ステアリン酸は+30数度、オレイン酸はー20℃)。従って、結晶操作を行い分離すれば、温度差があり、より効率的な分離法と言えます。
蛇足ですが、蒸留操作より(この場合は使えませんが)、結晶操作の方がエネルギー的にもよりECO(エコ)的と一般に言われています。
 
結晶分離操作は、まず冷却すると液体BDF⇒冷却⇒結晶(固化)開始(CP)⇒液体結晶共存⇒完全結晶(固化、PP温度ー2.5℃)と状態変化しますが、
 
液体・結晶共存の状態でフィルター操作や遠心分離操作で結晶分離を実施すれば、
残液体はより固化しにくいバイオディーゼル(BDF)が得られると言う簡単な理屈です。
 
 物理化学や化学工学で習うところの気液間で相平衡状態が存在すると言う理論と同様に、固(結晶)液にも相平衡状態が存在します。
BDFである脂肪酸エステル(FAME)にも、他の物質と同様、相互溶存性(Intersolubility)である気液相平衡固(結晶)液相平衡が成立します。
この為、いくら注意深く(徐々に)冷却しても飽和脂肪酸だけを分離することはできません。
 
従って、飽和脂肪酸エステル量の1倍(等量)だけが結晶化するのではなく、その1.6~2.0倍がどうしても結晶側となり、不飽和脂肪酸エステルが主成分である冬季処理済バイオディーゼル(BDF)は、残液の収率(収量)となる訳です。
 
加えて、バイオディーゼル(BDF)は、上記の固化(結晶)開始の曇り点温度(CP)と、完全に固まってしまう温度(PP温度-2.5℃)とが2~4℃と極く接近しています、
更に、BDF自体が多種のエステル混合物であり、未反応物、水分など不純物の影響も受ける等、複雑であり、効率的な分離はそう簡単ではありません。
多分冷凍庫で単純に冷却したら、分離どころか全体が固まってしまったと言う経験もあると思います。
 
これらを改善する為に、時には結晶調整剤や溶剤などを加えて、これらの平衡物性の改善や冷却結晶操作の工夫等を行わないと、冷却結晶分離(Winterization)操作による液体のBDF収量(収率)は限りなく低下して行きます。
 
でも、この方法で冷却結晶分離が効率的に成功すれば、流動点降下剤の利用など様に、バイオディーゼル(BDF)の冬季特性をだましだまし、それも多少の温度降下レベルの改善
と言った方法ではなく、
原料油種を本質的に変えてしまう方法(例、固まり易い米油を、固まり難い菜種油へと変換する)と言えます
更には、天然油では存在しない様な、飽和脂肪酸を全く含まない冬季用スーパー油から製造したバイオディーゼル(BDF)燃料と言える再生可能ECO(エコ)BDF燃料(特3号軽油を超えたスーパー特3号BDFグレード?)なども自在にも出来ます。
 
尚、この方法は、食品関係(チョコレート、マーガリン製造上、油脂や脂肪酸の分離調整等)では、古くから使われている方法ですが、混合物である為か、天然の不純物が含まれている為か、
物性が変化し、複雑怪奇で、まだ現状でも再現性など充分理解できてない所も多い様です。
この為 、製造現場で各種Know-How類も多いと聞いています。
 
更に、大型の石油精製・石化プラント分野でも、この結晶分離法は、沸点が近い物質や熱分解し易い物質の分離法として多方面で使われています(過去の仕事分野なので、多少詳しいかな?)と思います。
殆どはプロセス特許となっていて、BDFでは考えられない様な桁違いの高額ライセンス料の支払いがないと、勿論使えません。
念の為、。。。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
追伸)
 上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何かコメント、ご意見、及び質問等具体的な相談のある方は、
 下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
 非公開情報など内容によっては、お答えできない場合や条件付となりますが、
 可能な限り対応させて頂きますので。。。。
 尚、お問い合わせの前、下記を必ず参照ください。