バイオマス・エネルギー作物の新顔( Giant-King-Grass、超高収量竹 )等の紹介です!!
今回は、バイオマス・エネルギー作物の新顔(Giant-King-Grass)の紹介です。
尚、これまでも一部紹介済の高収量バイオマス(熱帯性竹)も併せて(再)紹介します。
CO2ニュートラルなエネルギー作物も、次から次へと新しいものが出てきています。
但し、先ずはイントロです。
バイオマスガス化発電でも、メタン発酵発電でも、例えば、FIT(固定電力買取制度)の下、ビジネスとして採算的に成立することが前提です。採算が取れなければ、当然の結果として意味がありません。
そこで、重要なファクターは、次の2点です。
①設備投資額と設備(プロセス方式)の効率性
②原料の確保とその価格
①については、その設備投資価格です。これは、原価償却費として、採算計算の費用項目の大きな要素を占めてきます。
FIT精度では、その期間(20年間)は、買取価格は予め保証されています。言い換えれば、稼働時間と単位時間当たりの発電量が一定なら、毎年の電力売上額は一定になります。
採算向上する為には、運転経費や保守費の削減もありますが、大きな要因は設備投資額、即ち、その原価償却費です。
そこで、この設備費は、1KW当り60-70万円以内に抑えれば、発電ビジネスの収益は、売上との関連で、充分採算取れます。1KW当たりの原価償却費は5.0~.5.8円(@15年償却、稼働8000時間/年)となります。つまり1KWe当たりの売上価格24円とすると、そこから5~6円の費用が、即、減価償却費として差し引かれます。
下記は、当方で現在販売中ガス化装置の2例です。
何れも、殆どのバイオマス材料が原料(Multi-Fuel対応)として使えます。
これらエネルギ作物原料の他、木質チップは元より、RPF等の廃棄物原料もガス化できるガス化(発電)装置です。
こちらのタイプのガス化発電装置なら、1KW当たりの単価60-70万円程度です。
こちらは、更に安価で、1KW当たりの単価40-50万円程度です。
これは輸入材、一般材バイオマスによる発電の1KW単価24円でもです。
間伐材の40円なら、尚更高収益となります。
②もう一つ、重要なファクターは原料の安定的な確保とその価格です。
但し、最近巷で聞くところによれば、
③ 間伐材の量的確保が難しい。或いは、一度は確保できたが、その後、別の顧客に振り向けられた、或いは
振り向けられそう!
元々、PKSは用途もなく、東南アジア諸国では、パーム油の残差、ゴミでしたが、今やバイオマス原料として引く手アマタです。当然の結果として、価格も上昇しています。75~80ドル/トン@FOB)とも言われています。更に、輸入ロットにもよりますが、輸入船賃(15-25$/トン??)がオンされます。
仮に、PKSの価格が110ドル/トン=1.1万円/トン=11円/Kgとし、1KGのPKSが1.3KWhの発電可能としても、11/1.3=8.5円となります。この費用も電力売上24円から、費用項目として差し引かれます。即ち、電力売上(24円)-原料費(8.5円、36%)-原価償却費(5.8円、24%)=残利益(9.7円、40%)です。原料費+減価償却費だけで、対売上額の60%が費用となります。勿論、更に経費項目として他にも装置保守費、人件費、。。。があります。
例え、この価格で最終的に採算が取れたとしても、長期的に、同じような価格で、量的に価格出来るか、多いに疑問です。PKSは今や、パームオイル等と同様に、国際商品化(Commodity)しているからです。将来にわたり価格を無視すれば、量は確保できるでしょうが、それでは採算は取れません。
同じ、パームオイルの残差でも、そのパーム果実の枝房PFB(Palm Fruit Branch)なら、PKSより今の処、用途も限られ、例え、ペレットやブリケット加工しても大幅に安価で調達可能の様です。
この意味から、ガス化のバイオマス輸入原料としてPFBに最注目しています!!
下記はEFBを裁断後、ペレット化したものです。
⑥それなら、自分で原料確保するしかない!??
最も確実な方法です。必要な土地なら、資金なり、そしてその土地に適したバイオエネルギー作物があればですが。。。?!!
これは、石油会社が自主原油の確保に向かったり、製鉄会社が鉄鉱石や石炭の自主確保に向かうのと同じ論理です。但し、このアプローチも全て確実、最善の策とは言えない場合もあり得ますが、自主原料が確保できれば、その後はその原料の生産(製造)費がどうかです。
勿論、バイオマス原料の確保、自主栽培と言っても、通常の杉や松の栽培では、今後20~30年も経たないと原料として使えません。
木質原料でも、成長の早い、特にエネルギー原料向けに改良された、例えば、エネルギ-用途向けに改良された柳、ポプラ、ユーカリ、桐などがあります。
同様な目的の草類もあります。当Blogでも既に紹介している有望なGiant-Miscanthus (巨大ススキ)、Sorghum(ソルガム)等の他に、未紹介のNapier-Grass等です。
下記は米Nexsteppe社( http://www.nexsteppe.com/palo-alto-biomass-sorghum/ )のエネルギ-作物ソルガムの生育中の写真です。 国内でも、戦前戦後は食料・資料(コーリャン)として使われ、最近ではエネルギー作物(アルコール製造)として研究紹介もされています。繁殖は種子、1年草です。
下記の写真がNapier-Grassです。
Giant-King-Grass,或いはElephant-Grassと同じ仲間の草(Grass)であり、共にアフリカ原産とのことです。
前置きが長くなりましたが、今回のテーマは、このススキより有望かな(??)と言うエネルギー作物の紹介です。
その植物は、Giant-King-Grassと言う植物です。
下記がその写真です。
この植物は、どうやら砂糖キビ等のイネ科植物だと思われますが、米国のベンチャー企業VIASPACE社が販売しているエネルギ-作物(植物)Giant-King®草(Grass)です。商標ですので、植物名ではありません。
用途は、
・乾燥してガス化発電、或いはボイラーバイオマス原料用
・粉砕してメタン発酵発電用
・家畜(牛等)の飼料用
等です。
最大の特徴は、その多収穫性です。
販売会社の説明では、94トン/haも取れると言うことです。
この数字が事実なら、これまで紹介してきたジャイアント・ミスカンサス(Giant-Miscanthus)(https://joeh.hatenablog.com/entry/20758554)の収量50-60トン/haの1.5~2.0倍弱も採れることになります。
但し。熱帯性植物ですから、日本では殆ど栽培出来ないと思われます。
更に、特定の選抜熱体性竹の栽培なら、驚異の150-200トン/haとも言われています。
下記Blog 記事の後半に概略紹介しています。
下記の写真の様に肉厚質な熱帯性竹(Beema Bamboo)です。
これに対し通常の竹(Wild Bamboo)は薄肉質です。国内の真竹、孟宗竹も類似の薄肉質です。
肉厚な為、当然収穫重量も多く、燃焼エネルギ-量も大です。
外見は異なりますが、何れもイネ科植物です。従って、草(Grass)類ですが、この竹は肉厚で、正に木の様な植物です。そこで木の様な竹(Woody Bamboo)とも呼んでいます。
この熱帯性のエネルギー作物の竹ですが、インド原産のもので、日本でも霜が降りない下記のTropical Grass Zone(赤色部分)なら、栽培できると言う情報も得ています。地図には、含まれていませんが、当然、沖縄は問題ありません。
近々、バイオ技術(Tissue Culture)無菌苗を輸入の予定です。
但し、植物検疫証明書(輸出元発行)、輸入許可(日本は許可不要)等の申請で手間と時間がかかります。
乾燥時の燃焼エネルギ-は、4055Kcal/Kg(@水分8.8%)程度で、Giant-Miscanthusと類似、大差ない様です。
例えば、Giant-Micanthusなら、100~130haも栽培も栽培すれば、1年を通じて1MWのバイオマス発電が可能ですが、一方、今回紹介のGiant-King-Grass(草)なら80~90haの栽培で1MWガス化発電が可能となります。
更に、このスーパー竹なら、計算上は50ha以下の栽培で充分1MW程度の発電が年間を通じて可能!?!?かもしれません。
但し、植物はその気候、栽培法、環境等にもより、大幅に収量は変わりますから、試験栽培による実証が必要です。
どちらも、ガス化発電の場合、少なくともチップ化する必要があります。ガス化装置によっては、ペレット化が必要になる場合もあり得ます。
但し、このGiant-King-Grassの問題は、比較的温暖な地域しか栽培できません。
米国では、カルフォウニア州南部で主に栽培されています。
一方、日本であれば、沖縄は栽培可能と思われますが、九州など一部地域では栽培可能かもしれません。
この様に、植物はいくら収量が多くても、地域性があります。
Giant-Miscanthusなら、日本全国どこでも栽培可能だと思います。
尚、このGiant-King-Grassの繁殖法ですが、砂糖キビと同じように、通常下記の様な1本の茎を1節ずつ幾つかに切り、それを適当な幅毎に土中に埋め植え付けます(下記写真の次の写真の右側。或いは茎をそのまま埋めます(同じ写真の左側)。この場合、各節々から発芽します。
すると節からやがて芽が出て、それが成長します。
一旦植えたものは、刈り取っても根が残り、数年は苗(茎)の再植え付けは不要の様です。恐らく砂糖キビと同じだと思われます。
但し、実際の栽培はこれからで、まだ広く普及しているわけではありません。