超音波法によるバイオディーゼル(BDF)反応速度向上法の紹介です!!

バイオディーゼル(BDF)反応は、通常バッチ攪拌方式が殆どです。
 
この方式は、最も安易な、どこにもある方式ですが、
最も非効率的な方式である
ことは、,本Blog記事で何回も紹介済です。
 
では、連続式なら効率的かと言えば、必ずしもそうではありません。
例え、連続式でも、攪拌羽根による連続攪拌方式(CSTR)では、余り効果はありません。
 
連続方式にするなら、方式に合致した攪拌方式の選定が不可欠です。
 
特にアルカリ触媒、即ち均一触媒方式では、油とメタノールエタノールでも同様)がお互いに非溶解であり、液体同士が反応する為には、化学工学で学ぶ物質移動速度を如何に早められるかに掛かっています。
 
この物質移動速度を早める為には、両液体の接触面積に比例します。
両液体が相互溶解性であれば、接触面積は無限大近くになり、両分子同士が接触し、反応速度は極限に達します。
 
現実は、BDF反応のエステル交換反応の油(親油性)メタノール(親水性)は、油と水の関係(犬猿の仲)で、相互非溶解性です。
 
余談ですが
BDFの反応にしても、グリセリン分離、精製にしても、油、メタノール、BDF,グリセリン、触媒、石鹸、及び水分との相互溶解性(親油性、親水性)、及びエステル交換反応速度とその平衡関係が理解できれば、即、卒業です!!
本Blogにも部分的に既に説明しています。これらを探して、纏めるだけで、簡単に理解できます…化学知識も、特に必要ありません
 
 
両液の接触面積をなんとか増やそうとして、攪拌羽根などで、経験的に撹拌するのです。
 
従って、この接触面積をどの様な手段で、より効率的に増大させるかが、BDF反応速度を決定つけます。
 
確かに攪拌羽根もその一つの方法ですが、余りにも非効率的です。
特に、バッチ容量増により、単位容積当たりの攪拌(接触面積)は減少します(無駄なエネルギー)。即ち、実行反応速度が極端に遅くなることになります。
 
より効率的な方法としては、高せん断力方式、超音波方式、電磁波方式、スタティクミキサー方式、マイクロミキシング・マイクロ・リアクター方式、。。。などがあります。
 
これ等は、何れも別の言い方をするとMicro-Mixing、Intensificationhttp://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/11135474.html ) などとも呼ばれている方式です。
如何に少ないエネルギーで、かつ効率的に混合(ミキシング=接触面積増大)を行うかの技術であり、競争です。
 
紹介済のMSR方式は、スタティク・ミキサーを極限状態まで最適化した手法です。
これにより、最小エネルギーで、超高速のBDF反応を実現しています。それも超安価で。。。
 
 今回は、上記のBDF業界一般で好評な超音波(Ultrasonic Wave)方式について紹介します。
 
この方式も、Blogでも過去に多少紹介済ですが、今回はやや詳しく紹介します。
 
超音波方とは、我々の耳に聞こえる音波より周波数の高い(高)周波音です。
人間の耳に聞こえる音は、~15Kヘルツ(サイクル)程度ですが、BDF反応では、20~25Kヘルツの(超)音波を使います。
 
超音波を出す器具ですが、空気中であれば、スピーカーの様な振動板を電磁気エネルギーで振動させて、空気を振動させれば、音はでます。
 
BDF反応は、液体ですので、これら液体を小さな容器に連続的に流して、その間に超音波装置が振動することにより、液体を強力に振動させる様な装置が超音波反応装置です。
 
下記がその例です。
混合済液は、写真の左下段から入り、中段よりやや上で連続的に排出されます。この間、液体は上部の超音波エネルギーを受けます。超音波により、圧力の変動(超高圧、超低圧)が振動数に比例し、また投入エネルギーに比例した強さと量が発生することになります。
 
この分野の専門家の報告では、瞬間的には振動により高圧力は2000気圧にもなり、逆に低圧力で真空状態にもなります。真空状態では、液体は気化し気泡が出来ますが、次に瞬時に高圧になり気胞は破裂します。これがCavitationです。
これが高速に繰り返されます。高圧力で部分的に超高温(絶対温度5000度K、摂氏4727℃)になると共に、気泡(バブル)が破裂するときに、衝撃波(280m/秒)もでます。この流速による摩擦もあり、更に液滴の粒径は小さくなります。この為、攪拌が超高速で進み、極く小さな液滴が生成され、接触面積も増大し、熱エネルギーも加わり反応も高速化すると言う次第です。
 
 
下記は、通常の攪拌方式(青)と超音波方式(赤)との液滴の粒径分布図です。
超音波方式の平均粒径は130ミクロン程度、攪拌羽方式は、400ミクロン程度です。攪拌羽根の条件は不明ですが、通常はこの様に小さな粒径まで攪拌できませんが…。
それでも、液滴の表面積と容積との関係から、接触面積は増大し、液温度増にも伴い、反応速度は増大することになります。
 
 
この装置は、有名なHielscher社の製品で1KWから、いろいろの能力のものが発売されています。価格は、2.5万ドル(200万円)ぐらいだったと思います。
 
この会社のホームページは下記です。興味があれば、参照ください。他のメーカーでも何社か製品はありますが、中規模から大規模プラントで実績のあるのは、殆どこの会社の製品だと思います。
 
 
 下記は、超音波方式によるBDF装置全体の模式図です。
 
 
反応はメタノール量によって、油滴と出会う確率が増大し、反応速度は増大します。
 
この超音波方では、反応速度が早いと言うことで、使用過剰メタノールも50%程度まで減少できるそうです。
 
エステル交換反応式より、油1モルに対して3モル(約12.0~12.5%、油脂により変動)は必要ですが、通常は5(20%)~6モル(24%)を使いますが、4.0モル(16%)~4.5モル(18%)程度まで減少可能だと言うことです。
 
使用メタノールが少なければ、メタノール費用減ばかりか、更に、触媒量減等の他、グリセリン分離速度も向上し、プラント全体の効率化も図かれます。
 
特殊ポンプ・せん断方式でも、MSR方式でも、同様に使用メタノール、触媒量は減少できます。
 
次の表は、使用エネルギーの比較です。
超音波方式(グリーン)と高せん断方式(だいだい色)、及び磁気Hydrodynamic方式(赤)とのエネルギー比較です。通常の攪拌方式であれば、更に大幅に多い攪拌エネルギー必要なります。
 
現状、計算していませんが、MSR方式なら超音波方式より少ない攪拌エネルギーであることは、ほぼ間違いないと思います。
 
 
現状、この超音波方式は、すでに公表されてから5年以上は少なくとも経過していますが、大型プラントなどでの実用化は公表されているものは数件で、そう多くはありません。例えば、下記の記事です。
 
超音波の周波数や強さの最適化、チュウニング等が難しいのかも知れません。実現には、いろいろノウハウが必要の様です。
 
この手法を含めてMSR法等でも、遊離脂肪酸(FFA)濃度の高い場合、同じ均一触媒法である酸(硫酸)法の反応速度向上策としても同様に使えます。
 
今回は、高速BDF反応方式の一つである超音波方を紹介しました
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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