バイオディーゼル(BDF)バッチ反応器の基本型とその比較検討!!

前回は、新バッチ方式として、2槽(タンク)を使った例を紹介しました(  http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/10541340.html )
 
この方式は、Micro-MIxingによる高速バッチ反応を実現する手法で、連続反応方式の長所(Micro-Mixing)を最大限取り入れた方式で、この為に2槽(或いは、それ以上)の容器が必要でした。
 
今回は、この様な新方式へ行く前の、従来方式のフローを紹介します。
これは、標準的なバッチ方式の反応器周りの基本的な概略図です。
2方式を纏めて表示しました。
総て、1槽(タンク)の方式ですが、基本の1段アルカリ反応の他、グリセリン前処理、2段反応、酸・アルカリ法、及び乾燥工程でも対応できます。
 
左側の例は、攪拌翼混合器(Blade-Mixer)を利用したバッチ反応器で、我が国では、殆どの製品はこの方式だと思います。皆さんのBDF反応器はこの方式ではありませんか??
 
一方、右の例はポンプ循環(攪拌)(Pump Circulation)を利用したバッチ反応器で、海外の殆どは、この方式です。
 
何れの方式も通常のバッチ方式であり、基本はMacro-Mixing方式ですので、高速反応はあまり期待できません。加えて、高転化率も期待できませんので、高メタノール添加や2段反応は不可欠です。
1段反応で終わっている方は、高転化率のBDFは出来ていないと思った方が良いと思います。
 
海外の製品は殆ど、日本の製品でも一部の製品は、メタノール回収設備なども付属していますし、Dry-Process精製処理器付の製品も有りますが、この図では省いてあります。
 
勿論、日本製の(超)高価な製品では、蒸留精製設備付などの製品や、(ラインミキサーを使っていると言う意味で)図の右側の様な類似の製品も有る様ですが、国産製品の詳細は不明です。
 
今回、注目しているのは、原材料投入、攪拌方式などが主な注目ポイントですから。。。。。 
 
イメージ 1
まずは、最もポピュラーな左の攪拌翼方式です。
 
この方式はエステル交換反応(BDF)に限らず、最も古典的なバッチ方式で、それなりのの利点も有りますが、同時に欠点も多々あります。
 
その前に使い方は、反応容器の上部の蓋を開けて、手動、或いはポンプ経由で廃油(WVO)を投入し、加熱・攪拌を行う。そしてグリセリン前処理(オプション)や乾燥工程が済めば、次はメトキシド溶液を同様に投入する。
加熱器による反応温度の維持と攪拌を継続し、希望の転化率を確認するか、一定の反応時間後に反応停止をし、グリセリン沈降・分離を槽底部より行う。2段反応であれば、再度繰り返す。
水洗法なら、数回の水投入・洗浄・廃水を繰り返し、最後は乾燥工程を行いBDF製品を得る。乾式法で有れば脱メタノール処理後に、バブリング(乾燥)・静置沈降処理を行う。次にDry-process装置に掛けて、同様にBDF製品を得る。
 
先ず利点ですが、
・構造がシンプル、反応器内で石鹼分など、何かが詰まっても、比較的簡単に清掃などできる。
・バッフルや攪拌翼などの為に、基本的は(密閉方式ではなく)オープン方式であり、内部の様子が確認できる。
・どこでも見たり、聞いたりできる方式なので安心できる。
 
では、欠点は何でしょうか?
反応温度やメトキシド等は一定と仮定すれば、反応は攪拌翼の形状と回転数+バッフル形状により一律に決定されるが、充分攪拌ができない例が殆どである。
従って、反応時間が掛かったり、不充分な状態で反応停止している。この傾向はバッチサイズが大きい程顕著である。
・設計方式(法)が複雑で、充分解析できていない。或いは、過去の化学工学や反応工学の知見を、装置設計者は充分反映出来ていない場合が殆どです。
・反応容器がオープン方式では、密閉しにくく、どうしても猛毒のメタノール・ガスが洩れてしまう。
メタノール回収装置を取り付けた製品も有るが、益々、高温メタノールガスが外部に洩れる。
・機能に比べ、価格もあまり安価にならない(特に、日本では高価)。
理由は、攪拌効果増を目指して槽の内部にバッフルを取り付けたり(無い製品もある)、槽内ヒーターの取付加工費、或いは攪拌翼(モーターを含め)が高価である。
・完全なMacro-Mixing方式であり、幾ら攪拌モーターを強力なものを使っても、完全混合状態を作り出せていない。
高温反応(加圧)方式による反応速度の向上策が取れない。一般に、構造上無理がある。
 
 
一方、ポンプ循環方式はどうでしょうか?
 
この方式の処理法は、まずポンプで定温の廃油(WVO)を吸入しつつ、加熱し反応容器にWVOを投入する。WVOの投入が終了しても、希望の温度に上昇するまで、WVOをポンプで循環・加熱操作を継続する。
 
希望の温度になれば、(オプションで)前回精製したグリセリンを、図上のWVO入口からポンプ軽油で、或いはメタノール・触媒投入口からInjector(Eductor)経由で投入し、充分に循環・混合させる。その後ポンプを停止し、グリセリンをタンク底部から抜きます。
 
次の反応工程では、同じInjectorを介して、定量メトキシドを同様に添加します。
添加が終了しても、希望の添化率、或いは時間まで、ポンプ循環を継続する。
その後ポンプ停止し、グリセリンの沈降・分離を行う。
2段反応であれば、再度同様の操作を繰り返す。
 
尚、ポンプ循環は、図に示す様に槽の底部に加え、上部からも含めた両方から、吸い込む方が反応上は好ましい。
理由は、密度の軽いメタノールは上部に、BDFは中間域に、より重い未反応油やグリセリンは底部に偏るからである。底部の未反応油を幾ら循環・混合(せん断力混合)しても、メタノール(メトキシド)が含まれなければ(或いは、少なければ)、当然反応は進展しないからである。
 
次に、水洗法であれば、同様にInjectorを使って、水の投入・静置・分離を数回繰り返し、最後に加熱器・循環ポンプを使って所定の温度に上昇させ乾燥を行い製品BDFを得る。
 
乾式の場合は、グリセリン分離後、別の静置タンクに祖BDFをポンプ移送し、バブリング・沈降分離・乾燥工程を行う。
この処理済祖BDFをDry-Processに通してBDF製品を得ると言う方法が一般的方法です。反応・グリセリン分離直後の祖BDFをDry-Processに直接掛けると、一般に石鹼分濃度が高過ぎて、使用可能な吸着剤・イオン交換樹脂の寿命を短縮化させるので、得策ではない。
 
ではポンプ循環方式欠点です。
槽(タンク)内の状況が見えない、或いは、石鹼などを詰まらせた場合、除去に苦労する。
図上では無いがレベル計等は、実際は付随している。詰まり防止の為に、アルカリ触媒として固まり難い水酸化カリウムを使ったり、底の部分の配管やバルブを大きめのものを使ったり、保温したり対策工夫をする場合もある。
・メトキシドとWVOオイルとの混合(ラインミキサー)の流量管理、及びラインミキサーの選択(設計)の知見が必要である。
循環ポンプの選択を含めて、設計能力が問われる。槽内に攪拌翼が無いので、ポンプ循環で充分攪拌効果が無いと、当然反応は全く進まない。
反応容器内の循環ポンプ配管の位置なども工夫が必要であったり先端にTank Mixerなどの補助器具をつける場合もある(追加・加工可能な場合)。
 
次は、長所です。
・WVOオイルとメトキシドの混合は、Injector(Eductor)、Venturi(添付写真)等のライン・ミキサーを介して、Micro-Mixing効果がある程度可能となっている。
他に、ライン・ミキサーとしてStatic-Mixerを使う例、或いはより完璧に混合・反応を完遂させる為、Eductor+Static-Mixerを連結で組み合わせた例もあります。
 
写真のEductor(Injector)で示す様に、その理屈は、WVO油は左から右に、ポンプ加圧状態で流れます。流体力学ベルヌーイの定理Bernoulli's principleは、流れに沿って成り立つエネルギー保存の法則)
から、中央の絞られた部分を油が通過するときは液体速度が速まり、その前後に比べて低圧(負圧)が発生します。この結果、中央入口(Suction)部から、流体が自然に吸い込まれると同時に、強力なミキシング混合が起きるという理屈です。このSuction流体は、前処理グリセリンであったり、メトキシドであったり、水洗法では水となります。
 
但し、混合液は反応が終了しない内に、タンク(槽)内で、Macro-Mixing状態となるので、効果は限定的となる。この部分で工夫した実際例もある。
この問題点を改善する為に、通常は、ポンプタイプの選択と流量設計が鍵を握っているが、攪拌翼方式より最適設計は簡単である。加えて、ポンプ価格も、800~1000Lバッチでも3.2万円程度と安価である。
容器内部に特別の構造物の設置が必要無いので、既存のLPGタンクや温水ヒーター容器(この場合は、ヒーターも付随している)などがそのまま使える。
必用なら高温加圧(最大2気圧程度)による反応促進や、多少減圧下でのメタノール高速回収も簡単に対応できる。
・通常は加熱器も外付であり、価格も安い。メインテナンスも容易である。
・全体の材料価格も安価である。また自作も簡単にできる。海外の自作派は殆どこの方式(+メタノール回収+Dry/水洗精製)。既存の販売製品も多い。
反応槽として、既存の廃容器が見つかれば(800Lクラスを仮定、この場合、タンク容量は1000~1100L)、材料費はポンプを含めて、配管、バルブ、混合Injector(5~6000円)など総てでも、6~8万円程度と超格安である。小型100L程度のバッチであれば、更に安価で2~3万円程度でできます。
 
以上、今回は通常のバッチ方式反応器の2方式を紹介しつつ、その長所、短所を簡単に比較して見ました。
両方式の違い、更には前回紹介の新バッチ方式との違いを理解していただけたでしょうか??
これらの3方式が理解できれば、BDFのバッチ反応の装置面では卒業です。
後はその利用運用面だけです。
 
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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