装置が悪いから完璧なBDFができない!!等と信じていませんか??

本日は既に1月5日、大変遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
バイオディーゼル(BDF)を製造している皆様方、或いは、
今後製造したい方にとって、本年が実り多き年であることを願っています。
 
使用しているBDF装置は、XX社製だから良いBDFが製造できない?
或いは、
弊社装置で製造した100%BDF(B100)は、最新コモンレール車での使用はできません!
。。等の話を、巷では囁かれている様です。
 
年初でもあり、誰でも可能な高品質バイオディーゼル(BDF)の製造法全般を紹介します!!
 
前提として、
・良いBDF,或いは完璧なBDFと言う定義は、エステル交換率が規格以上と言う前提です。
・装置は初期の稼動状態である、つまり撹拌器や加熱器が動かない等と言う状況ではない。
・反応時間などは、自由に設定変更可能とします。マニアル操作可能という前提です。
・原料油(WVO)は、過度の遊離脂肪酸を含まないとします(酸価値8以内程度)、固形ゴミや水分(最大0.25wt.%)も有りです。
・精製は、装置内、別装置を使用し水洗法、乾式法、或いは等価な手法で、石鹸分等を規格値以内まで除去できること。
以上です。
 
上記の諸条件の範囲内であれば、
どなたでも、どの様な装置でも、必ず最新のコモンレール車で使えるBDFが製造できます!!
要は、急がず、キチンとステップを踏んで処理すれば、例え、エネルギーや時間的に効率的でなくとも最高品質のBDF製品は必ずできます。どなたでも、。。
 
1)原料(WVO)の受入と処理法
集荷した廃油(WVO)はそのまま装置に投入しないで下さい。BDF装置の少なくとも2~3倍の容器に移し、2日以上、望ましくは1週間程度以上静置された油の上部2分の1から4分の3を必ず使用してください。
容器内の油を加熱可能なら、40~50℃程度まで、一旦加熱後に静置すれば、次の脱水工程が簡略化されます。
固形ゴミのフィルター処理は通常不要ですが、大きな固形ゴミでポンプを破損する場合がありますので、容器に投入時にでも除去してください。容器に各種廃油をプールすることにより、廃油品質の安定化も図れます。
 
2)BDF装置への原料油の受け入れと脱水処理法
静置容器の4分の3以上の上部廃油(WVO)のみを、手動,或いはポンプでBDF装置に定量移します。
次に水分除去(脱水処理)を行います。通常、水分は1500~2500PPM(0.15~0.25wt.%)は含まれています。前段で、加温後静置処理が行われていれば、水分は1000PPM前後まで低下していて、この処理をスキップ可能です。水分測定をすれば、完璧です(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4297798.html)。
 
脱水処理は、前回の副生グリセリンを使う方法と使わない方法の2つが有ります。
いずれにしても、油を攪拌・加熱し、少なくとも70℃以上に加熱します。
グリセリン使用の場合(グリセリン前処理法)は、投入し攪拌を30分以上継続します。その後攪拌を停止して、グリセリンの沈降を待ちます。完全に沈降・除去させる必要はありません。次工程の反応温度は60℃前後ですので、いずれにしても、この温度に低下するまで待ちます。グリセリン水分は吸収され1000PPM程度以下まで低下します。、同時にゴミ類も吸収され、除去されます。
グリセリン未使用の場合は、加熱器・攪拌器を使い、70℃以上まで昇温後、加熱器・攪拌器を停止し、常温近くまで温度低下させます。望ましくは12時間以上経過後、BDF装置の底部から1%程度の油を抜き出します(100L反応器であれば、1L)。この部分は大量の水分が分離・混入・沈降していますので、1)の静置容器に戻し、今回の反応には使いません。例えば、100Lの油を使いたければ、予め原料油を101L投入し、1L抜き出す方法もあります。
 
3)原料油の品質確認と反応工程(1段目)
アルカリ触媒量の必要量の計算を行います。
酸価の測定は、滴定法などで行います。方法は以前紹介済です(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4440816.html)。
無理なら、簡易測定紙、或いはヤマカンで決めてください。ヤマカンの場合は、多少文献値などより多めに入れた方が安全です。水酸化カリウムなら、その純度や油の酸価値にもよりますが、原料油1Lあたり、10gが一応の目安です。特に、油の品質劣化が進んでいると思われる場合(酸価値が高い)は、10~20%増しとすれば、良いと思います。
使用するメタノール量は、原料油に対して、容量比で20%が目安ですが、BDF品質に、特に不安で有ったり、過去に品質トラブルを経験された方は、費用はかかりますが、多めに25~30%程度まで使用すれば、より反応速度は増します。特に、撹拌力が弱いと思われれる方は、メタノールの増量がお薦めです。
メタノール液にアルカリ触媒を投入して、完全に溶けるまで撹拌をし、待ちます。
反応工程は2段法がお薦めします。通常装置で1段法では、高転化率は無理です。
原料油が定温(60℃前後)になったことを確認後、上記準備のメタノール・触媒溶液(メトキシド)を徐々に、75~85%分投入します。撹拌が弱い場合は、この投入を特にゆっくりと行ってください(目安は、15~20分)。1段反応の反応時間は、特に撹拌力が弱かったり、200L程度の装置まで、最大45分程度で、撹拌・加熱を停止し、グリセリン沈降を行います。自作簡易転化率キットで測定していますが(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/9388759.html)、80%転化率で反応時間は、わずか5~10分程度です。
グリセリンは30分程度沈殿後、抜き出します。完全除去は不要です。
 
4)2段反応工程
再度撹拌・加熱を開始し、残メタノール溶液を投入します。2段目の投入では、特にユックリ投入しなくても構いません。また、加熱器が温度制御機能が付いていない場合は、液温度が50~60℃の範囲内となるように、加熱スイッチのオン・オフを調節すれば充分です。ここでも、転化率キットがあれば、完璧に何時に反応を停止するか、解かるのですが、。。私の場合は、自作キットで測定して、5分程度で反応は停止しています。
何も無い場合は、ヤマカンで30分を目安に反応を停止します。これで、充分だと思います。
通常は、次にグリセリン沈降を行います。グリセリン沈降には時間をかけて、完全に行います。
カセイソーダを使う場合は、グリセリンが常温で固化しますので、この方法は採用できませんが、水酸化カリウムなら1昼夜放置後、完全にグリセリンを抜けば、完璧だと思います。
急ぐ場合は、反応停止後、原料油に対して2~3%の容量の水を投入して、若干撹拌後、グリセリン沈降をさせれば、グリセリン沈降を早めることができます。但し、グリセリンが水で薄められ、グリセリンの利用法によっては使えない場合があります(例、2)のグリセリン前処理用は不可、メタノール回収も不可)。
私の場合は、一応反応液のPHを確認後、直ちにメタノール回収工程に移ります。通常はPH調整用塩酸などを使いますが、必要は無いPHレベルです(滴定により、適正なアルカリを投入している為)。ヤマカン法でアルカリを投入した場合、かつこの方法でメタノール回収を行う場合は、酸で中和をします(逆反応の危険性)。
 
5)メタノール回収(可能であれば)
BDF装置でメタノール回収が可能であれば、温度は91~2℃まで昇温・撹拌をしつつ、メタノール回収を行います。多くの既製BDF装置には、付属メタノール回収機能が無いと思いますが、無い場合は余剰メタノールは水洗水に溶けてしまいます。
ちょっと工夫すれば、メタノール蒸留装置は自作でも可能ですが、。。。。
また、グリセリン中のメタノールも併せて、回収できます。
 
6)祖BDF静置タンク処理
私の乾式法では、2段反応後のメタノール回収・グリセリン分離後、静置タンクでエアー・バブリングを8時間実施後、少なくとも8時間以上静置し、ほぼ完全に石鹸分、残留グリセリンなどを沈降分離した後に、乾式処理を行っています。これにより、精製に処理後のBDFの品質向上(石鹸分、グリセリンなど不純物除去)と乾式の吸着剤やイオン交換樹脂の寿命を長く出来ます。
メタノール回収設備のない方で、乾式法を採用される場合は、お薦めはできませんが、。。
4)の2段反応で充分グリセリンを除去後の祖BDFを静置タンクに移し、少なくとも24時間以上、出来れば2~3日静置します。この間に、メタノール分の多くは蒸発します。と、同時に、残留グリセリンや石鹸分も沈降し、分離します。揮発メタノールの換気、及び火気は充分注意ください。
メタノールの蒸発はイヤと言う方は、4)で2~3%の水投入・グリセリン分離後、再度70℃まで加熱後、この静置タンクに移し、上記のバブリング・静置処理工程を行います。
残留メタノールの多くは、水分に吸収され、本工程での蒸発は少ない筈です。代って水分除去に注意を払う必要があります。
 
7)BDFの精製工程
精製工程には乾式と湿式の方法があります。
私は、吸着剤とイオン交換樹脂を使用した乾式法(Dry-Process)で処理しています(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4023626.html)。
6の静置タンクの4分の3以上の上部祖BDFをポンプで吸入して、処理しています。
処理後は3ミクロンのBDF専用輸入フィルターで処理したものを、BDF製品タンクに投入します。併せて、酸化防止剤などの添加剤も投入します(通常は、5)の工程の最後に添加剤を加え、各種品質確認などを行った後に、
6)の静置タンクへ移送)。
不可欠では無いのですが、静電フィルター処理機を使いサブミクロンのフィルター処理も実施しています。BDF製品をすぐ消費してしまうのであれば、3ミクロン程度のフィルター処理で充分だと思います。静電フィルターは時間とともに発生するスラッジ類などの除去目的でもありますので、。。。
通常の乾式処理法は、イオン交換樹脂だけ、或いは、吸着剤だけでもある程度対応できます。
この場合は、製品BDFをタンク内で充分な時間静置してください。少なくとも1週間後に、上部4分の3から5分の4を使用すれば、問題無いと思います。底部に石鹸分(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4602097.html)など不純物が濃縮されています。
 
湿式法は、使用経験が有りませんので、確かなことは言えませんが。。。。
5回程度の水洗を繰り返せば、良い様です。4)で2~3%の水を投入してグリセリンを除去した場合は、この水洗工程は1~2回減らせて使用水を減らせます。後は乾燥工程です。通常、加温し、水分を除去します。120℃まで、加熱が必要です。その後、降温し添加剤を加え、製品品質を確認し、フイルター処理後、製品BDFは完成です。
ただし、洗浄水の処理はどうしていますか??
殆どは無処理・放流、良くて中和程度だと思います。COD,BODを基準値以内に下げるより、乾式法の方が遥かに簡単です。
 
乾式も、湿式も無理と言う方は、そのままの状態で1ヶ月以上、タンクで放置する方法もあります。1ヶ月以上も静置すれば、メタノールは完全に蒸発し、グリセリンや石鹸分、そして微小固形分さえも沈殿しますので(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/10209494.html)、上部BDF液を使えば、問題ありません。
個人的に、特にお薦めはしませんが、海外では特別珍しくはありません。
 
今回は、BDFの製造法を簡単に紹介しました!!
 
では、また。。。
本年もよろしく。
Joe.H
 
追伸)
 1)上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何かコメント、ご意見、及び質問等具体的な相談のある方は、
 下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
 
以上