バイオディーゼルの製造条件は、何時も同じで良いのでしょうか??

前回に引き続き、今回もバイオディーゼル(BDF)の入門編として製造条件、つまりレシピーの変更の必要性を少し考えて見ましょう!!
 
皆さんは、BDFの製造条件を何時も変えていますか?
それとも、(BDF機器を購入以来、)同じでしょうか?
或いは、変えた方が良いとは思っても、何処をどう変えたら良いか??
などいろいろだと思います。
 
BDFの製造設備によって、何処まで自動化された設備か、或いは全くの手動マニュアル操作でバイオディーゼルを製造するのか等によって多少状況は変わります。
 
装置メーカーのキャッチフレーズに全自動装置とか言う宣伝文句が時にあります。
この全自動と言う言葉の定義は不明ですが、以下は米国の類似の装置からの仮想自動BDF製造装置の場合です。
国産の装置も、自動化を謳っている場合は、多分類似していると思います。
 
予め決められたレベル(容量指示)まで、或いは定量の廃油、メタノノール、そしてアルカリ触媒(別々に投入すれば、メトキシド溶液は装置が自動で)を投入して、後はスイッチをオンすれば、OKと言うことではないでしょうか?
 
つまり、この状況では、
廃油量
触媒量(酸、アルカリ)
反応温度と反応時間
等は、毎回同じだと言うことになります。
そして、事前に決められた時間後に、副生グリセリンを除去し
 
再度スイッチをオンすれば、水洗処理(水道栓に接続のみで、スプレー散水、ミキシング・廃水など総て自動で)や乾燥処理を自動で行い、
そして、決められた時間後に、BDF製品は出来上がっている。
と言うことではないでしょうか?
(日本製装置は、ここまでは自動化されていない??実態は解りません)
 
 
米国の自動化の装置では、必ず使用可能な廃油(WVO)の品質上の条件が具体的に制限されています。
少なくとも、装置に掛ければ、必ず品質規格に合致するBDF製品が製造できる様な廃油品質が、逆に規定されています。少なくとも、遊離脂肪酸濃度(酸価値、AV値)の値、或いはその範囲です。
 
この為、必ず装置を購入すれば、付属設備として、これらの滴定、測定の器具も付属しています。
通常は、必ず原料油滴定http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/4440816.htmlをする様に勧めていますし、その方法も操作マニュアルに記述されているはずです。
 
どうしても滴定が面倒と言う顧客向けには、滴定と理屈は同じですが、例えば、GO/Not-GOキットと言うものがあります(写真参照)。
このキット価格は10個で20$弱(1700円)です。
 
 
方法は、BDFを製造する前に、廃油(WVO)を付属の注射器で1mL測り、このキットの溶液に注ぎ、良く攪拌すれば、溶液の色で、反応工程を進めて良いです!原料として使えます!!(GO)、或いは使用不可、ダメです!(Not-GO)を色でチェックしてくれます。
 
これは、予め受け入れ可能な酸価(AV)値以内で、溶液の色が変わる様に、試薬が調整されているからです。
因みに、この製品は、AV=0~9(遊離脂肪酸濃度、5%以内)で色が変わる様に調整されています。
この装置の場合は、酸・アルカリ法なので、AV値がある程度9までと高くても(遊離脂肪酸濃度が5%と高くても)、対応可能なのです。アルカリ法だけであれば、AV値は5以下程度となります。
 
尚、任意の酸価(AV)値で液の色が変わる、類似の自作試験キットは、一寸滴定の知識があれば、簡単にできます。勿論どなたでも自作可能です。原料価格なら、更に安価です。
ご自分で、直接の滴定が無理なら、放置しておかず、この様なキットを使われたらどうでしょうか??BDFの品質等は必ず大幅に向上します。
 
ダメと判断された廃油は、劣化していない油とブレンドして、再度測定するか、或いは、自動化処理ではなく手動操作で対応できます。
 
この様に、ある範囲内の廃油であれば、最適レシピーからはややかけ離れていても、事前に決められた上記レシピー量で高転化率の、そして規格値以上のBDFが自動化運転でも出来ることを保証している訳です。
製品BDFの品質確認は、通常は常時出来ないので、逆に受入の廃油品質を確認している訳です。また、規格外で再処理をしなくて済む様に考えてのことです。
 
日本の自動化システムはどうでしょうか??
メーカー側は多分、この様な廃油の滴定分析やキットもないし、必ず分析をする様にとも言わないで、単に自動化で簡単で製造できると言うセールストークだけだと思います。
一方、製造者・ユーザー側もこれを100%信じてか、何の疑いもなくどの様な廃油でも、同じ条件レシピーで自動的に製造出来て簡単と喜んでいるのでは??
と思います。
 
確かに、自動化は簡単で便利ですが、その分装置が高価であったり、品質のばらつきや、低品質のBDFが出来てしまう場合も有ったり、加えて原単位(メタノール、触媒、電力などの使用比)が高くなり、経済的では無い場合が殆どです。
また、諸条件を自動化の範囲内でも変更できない場合もあるのではないでしょうか?
 
いっそのこと、廃油の滴定やグリセリンの分離なども自動化されれば、好ましいのですが、装置価格が更に、2~3倍に膨れ上がり、小規模では非現実化します。
廃油の自動滴定を行い、アルカリ触媒量を自動的に調整できれば、理想ですが、。。
大型の石油装置などでは、当然、例えば原油の品質によって、蒸留塔の運転条件を自動的に変更できますが、桁違いの設備費を掛けていますので、。。
 
新油で品質が一定の油を何時も処理するのであれば、キチンと規格値を満たすレシーピー条件でチューニングされていれば、その後は同一条件の自動化法で問題ない筈す。現実には、有り得ないのですが。。。
 
では、総て手動で操作する装置の場合はどうでしょうか??
製造者は、たえず反応の進行を見守る必要があるばかりでなく、滴定をはじめ、転化率(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/9388759.html)、や石鹼分、水分の測定などの測定をしないと、規格外のBDF製品が何時もできてしまう可能性は大です。
 
これら分析知識があれば、すばらしい高転化率のBDF製品が、少ない材料費、エネルギーなど低原単位で製造できるのは言うまでもありません。
 
因みに、廃油のAV値が1上下すると、使用アルカリ量は廃油1L当り、1g上下します。
また、使用メタノールも、転化率を確認し、調整すれば、廃油1L当り、5~最大10%は増減します。
反応時間も同様で、少なくとも2分の1から、最大10分の1程度まで減らせます。
それより大きい利点は、品質が一定になり、かつ高品質になればエンジントラブルの防止やBDFの信頼性向上も可能です
 
BDF製造の3種の神器は、最初の原料油酸価の滴定に始まり、反応時の(簡易)転化率測定、そして、最後の製品石鹸分の滴定と言えます。
 
今回は、BDF製造のレシピーは、いつも同じで良いのでしょうか??
と言う初歩的な話題でした。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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