バイオマス原料のドライ・ソルガム、商業化・栽培面積が急激に伸びている様です!?!?

今回は、元々熱帯アフリカ原産植物、日本でもバイオ・エタノール原料として、時々大学や専門企業で話題のバイオマス原料用ソルガム(モロコシ科、コーリャン)の話題です。
 
但し、通常のこのソルガムは、一般にスィート・ソルガム(Sweet Sorghum) と云われる品種で糖分を多く含み、そして成長力が強く、短期間で収穫できるのでバイオマス原料として注目されていますが、砂糖キビの様な植物です。コーン等の仲間です。
従って、通常水分を多く含んでいます。バイオマス原料と云っても、酵素醗酵等で主にエタノール製造原料として使われています。
 
当方の興味の熱ガス化(Thermal Gasification)、或いは触媒直接油化(Catalytic Depolimerizaition)
等のプロセス分野の原料としては、使えない代物です。
 
今回、紹介するのは、同じソルガムですが、収穫時は、ほぼ乾燥状態(枯れた)で得られる 新ソルガム(モロコシ、キビ)原料植物 の話題です。
 
 
このドライタイプのソルガムですが、米国の有名なバイオマス植物種子ベンチャーNexSteppe と云う会社(http://www.nexsteppe.com/ ) のハイブリッド種子です。
名前は、Palo Alto Biomass Sorghum(パロアルト・ソルガム以下,勝手にドライソルガム)と云うバイオマス用植物品種です。彼らは、通常のソルガム(Malibu Sorghumの種子)も、同様に数種類販売しています。尚、Palo Alto も Malibuも、ご存知の方もおられると思いますが、南サンフランシスコの町名で、何故か彼らのソルガム品種名として使っています。
 
イメージ 1イメージ 2
 
上記写真は、ドライ・ソルガムは成長期の写真ですので、通常のスィート・ソルガムと外観は同じ様な感じです。
 
但し、収穫期になると水分が抜けてほぼ乾燥状態になり、次の写真の様になります。
 
一見、以前紹介した注目の多収量バイオマス原料の巨大ススキ( Miscanthus giganteus ) と同じような乾燥状態(?)で収穫できます。
イメージ 3
 
従って、彼らはこのドライ・ソルガムを、エタノール醗酵原料の他に、バイオマス化発電原料等としても宣伝しています。
 
まだ商業化して間もないのですが、ブラジルで1昨年は1000ヘクタールの試験耕作であったものが、昨年度は10,000ヘクタールへと10倍も急激に耕作が伸びたと云うことです。
 
そして、単位収穫量も20-25トン/ヘクタールも収穫できるので、10,000ヘクタールなら、250,000トン(ドライ)もとれた計算とも云っています。
 
彼らは、今後ブラジル以外の地域にも販路を広げることを目指している様です。
また、会社は、各投資べェンチャー企業から、昨年だけでも22M$(約26億円)の資金を調達しています。
 
主な特徴は下記です。
耕作者にとって、
1) 多収量である(20-25トン/ヘクタール)
2) 収穫期間は3-4ヶ月
3) 他の作物と輪作が可能(逆に、毎年は耕作できない、耕作障害)
等です。
 
種苗会社にとって、
4) 種子の大量販売(耕作)、拡大が用意
5) 種子の生産体制(ハイブリッド化法が確立)
6 )類似品種も多く、今後の品種改良の余地あり
 
製造利用会社にとって、
7) ほぼ乾燥状態であり、運送費節減、ガス化利用等も可能
8) 原料の供給地が広範
 
巨大ススキにとって、強力なライバル出現(?)かもしれません。
 
では個々の項目で比較してみましょう。
 
1) 巨大ススキは20-25トン/エーカーも最大では採れますので、ヘクタール当たりでは、2.5倍もの収穫量差です。
2) 巨大ススキは、収穫は1回/年です。ソルガムも3-4ヶ月で収穫と云っても、温暖でない場所では、年2回は生産できないと思います。輪作障害もあります。 ですが、他の作物と併せて耕作できれば、利点になります。
3) ソルガムの最大の特徴は、毎回種子を播種する必要がありますが、耕作後は他の作物が耕作できます。つまり輪作が可能です(実は継続的に同じ場所では、耕作できない)。
例えば、大豆、小麦、ソルガム等です。大豆や小麦は、同じ土地には毎年耕作できません、3-4年毎になります。
但し、ソルガムは地中深くまでの肥料分を吸収してしまいますので、次の耕作作物に対し必要な肥料の施肥は必要です。
4)これもソルガムの利点です。巨大ススキは地下茎ですので、急激な耕作拡大はできません。組織培養苗の供給も可能ですが、それでもソルガムの播種法に比べ、急激な拡大生産・耕作ではかないません。
但し、ソルガムの類似種・雑種は日本を含めて多種多様です。
ソルガムは簡単に新たな雑種が自己交配でできてしまいますので、新たな植物問題が生じる可能性もあります。また、鳥類により、別の場所で繁茂する可能性も大です。
一方、巨大ススキは種子ができませんので、これらの心配は全くありません。
5) 巨大ススキは、組織培養による大量育苗法しか方法がありません。種子によるソルガムの方が優れています。
6) 巨大ススキは、現状類似品種はありませんし、できません。但し、これはススキの欠点でもあり、最大の特徴です。交雑種の心配がありません。
7) どちらもガス化原料として使えますが、巨大ススキは、水分10-15%でほぼ完全に乾燥状態ですが、ソルガムはドライと云っても水分は50-55%は含まれるそうです(スィートソルガムは75-80%水分)。従って、ガス化等では、ススキは乾燥工程が不要ですが、ソルガムは必要です。加えて、水分の差による運送コストの差も大です。
8) ソルガムは元々温暖地の植物です。冷涼地でもある程度耕作可能ですが、収量を含めて制限があります。従って、これら冷涼場所にある処理工場は、近隣で耕作できませんので、ソルガムの使用もできません。
一方、巨大ススキは、南から北まで、どこでも耕作できますので、制限はありません。加えて、雨量や土地の品質(耕作放棄地)など制限もススキの方が少ないと思われます。
 
。。。。と云うことで、最近バイオマス原料として急激に伸びている新ドライ・ソルガムを紹介し、併せて巨大ススキと比較を簡単に行いました。
どちらが、優れているかは、Case-By-Caseだと思います。
比較的優良な農地で輪作等の目的もあるならソルガムがお薦めです。
耕作放棄地、荒れ地で、人工も掛けたくない粗放栽培の場合なら、明らかに収穫量が多く、ほぼ乾燥状態で得られる巨大ススキが有利だと思います。
 
余談ですが、現在、当方で巨大ススキの組織培養苗、試験的に輸入手続中です。
バイオマスガス化発電、ボイラー・チップ化用等で巨大ススキの栽培に興味があれば、お問合せ下さい。
国内への輸入は、地下茎(Rhizome)では、植物検疫で輸入しずらい様です。無菌で土壌を使わない組織培養(Tissue Culture)苗なら、輸入時の植物検疫もパスしそうです
 
(後日追加)
5月21日に無事輸入できました。5月23日付の下記Blogを参照下さい。
(追加以上)
 
では、また。。。
Joe.H
 
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