BDF製造に朗報か??エタノール価格急落、メタノール価格急騰!!!

今回は久しぶりにBDF関連の話題の紹介です。
BDF製造コストの3分の2を占めるメチール、エチール・アルコール価格の話題です。
 
バイオディーゼル(BDF)の製造は、殆ど通常メタノールを使っています。
エタノールも使えますが、ごく限られた例だけでした。
例えば、エタノール製造量が多いブラジル等の国々、或いはコーン等からのエタノール工場での廃エタノール(低品質)、及びコーン油の利用、或いは、冬季特性の改善の為に、やむなくエタノールを使う例などに限定されていました。
余談ですが、バイオエタノール工場の隣接地で、不要なコーン油と廃エタノールの供給を受けたBDF工場が最近稼動したり(米国)、計画中です。多くは酵素法、或いは固体触媒法です。
 
エタノール利用が限定的な理由は簡単です。最大の理由は、おそらくメタノールに比べ価格が高いからです。
 
そこで、今回は最近、このエタノール価格が急落と言うニュースの紹介です。
 
詳しくは、下記を参照下さい。
 
記事によれば、EUのスポット市場価格は4年来の安さだそうです。
スポット価格は、590.57$/KL(1L当たり60円)という事です。
確かに、エタノールに限らず、総ての汎用市場製品・原料は、スポット価格は急騰、或いは急落しますので、通常の市場価格ではありません。
 
でも、この価格は、有機化学品では、最安値のメタール価格よりも安価な感じです。
メタノールが急騰している現状なのに、理由は何???という事になると思います。
 
メタノール価格の急騰については、最近,、本Blogsで紹介済です。
 
価格は、通常1L当たり小売だと100円前後します。
国際的に、大量でもも、80~90円位では?と思います。
 
一方、エタノールは例え、スポット価格と言えども1L当たり60円です。価格の逆転です。
逆転まで行かなくとも、少なくとも同じ様な価格帯となっています。
 
エタノール急落の原因は何でしょうか??
要は需給関係の悪化です。
 
バイオ燃料と言えば、即エタノールと言う考えで、多くのエタノール工場が最近稼動開始し、供給量は急激に増大しています。
一方、需要はそれほど伸びていません。エタノールのガソリン燃料へのブレンドも余り変化がありません。また、その他化学製品(DME:ジ・メチールエーテル等)の原料としての需要も同様です。
当然、お酒にはつかえません!!
 
そこで、エタノール工場も、最近赤字で稼動を停止したり、工場が転売されたり、或いは破産したりと言うニュースも時々あります。
 
従って、国際的にも、国内的にもバイオマス利用⇒バイオ燃料エタノール製造は見直しのチャンスを迎えていると思います。
 
代って、バイオマス利用⇒バイオマス燃料⇒合成軽油ディーゼル)、或いはバイオディーゼル(BDF)、或いは合成ガソリンとなれば、良いのですが、どうでしょうか??
世界的には、少なくとも需要より、供給不足ですが、問題は提供可能価格です。
当方で、最近低価格の合成軽油プロセスも検討中です。
本Blogsでも、一部公開中です。
 
BDFは品質の問題があり、合成軽油は、多くの場合、製造コスト低下が依然として課題です。
BDFの課題の一つに、低温固化、冬季特性の悪さがあります。
 
過去に何回も説明している様に、少なくともメタノール代替にエタノールを使えば、冬季固化温度は4~5℃確実に改善されます。これをお金に換算すると5円/L程度の効果があります。つまり、目詰まり点降下剤、原料油選択等の利用で、固化温度を改善する場合の費用換算です。
 
これは、確かにBDF生産者にとっては朗報です。
単純に反応論的に考えれば、オレイン酸1L(約3モル)を使いメタノールBDF(FAME)を製造するのに、メタノールは理論上3モル約96g=約108mLとなります。
同様にオレイン酸1L(3モル)を使いエタノールBDF(FAEE)を製造するのに、エタノールは理論上約138g=約178mL必要です。
この計算からも解る様に、理論上でも、18.5%(容積換算)余分に投入が必要です。
 
更に、現実は、メタノールエタノールの反応速度差からの考慮が必要です。メタノール同様に、過剰に投入が必要です。当然、エタノールBDFのメタノール過剰比は1.5~1.9倍程度ですが、エタノールの場合はそれ以上必要です。
過剰量は、プロセスの工夫で、回収可能かもしれませんが、回収エネルギーも必要ですし、100%回収は不可能です。
エタノールは蒸留操作だけでは、最大でも純度は96-96%位までです。
それ以上は、水とエタノールの沸点が同じ温度になり、熱操作の蒸留は無意味となり(共沸、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E6%B2%B8 )ます。
更に、純度を上げるには、第3の物質を投入する共沸蒸留法、或いは吸着剤による残流水除去等が必要になります。
従って、メタノールの様に簡単な操作ではありません。
 
その他、エタノールBDFの課題はいろいろあります。グリセリン分離の難しさもあります。また、反応温度、反応速度もかなり異なります(遅い)。。。。
反応速度向上対策としては、紹介済の超高速反応(MSR)技術等も特に、有効と思われます。
例えば、興味があれば、下記のBlogs記事です。
 
高純度エタノールが不要な固定酵素法、或いは酵素なら、このエタノール純度の問題は全くありません。
高濃度アルコールを水で薄める手間が省けて好都合です
酵素法は、下記、他を」参照下さい。
 
この意味からも、最近、海外の大規模BDF生産者から、固定酵素法の問い合わせが増えています。
まだ、BDFは死んでないと言う実感です。
 
従って、何方でも、価格だけでBDF製造のアルコールをメタノールからエタノールに、既存のアルカリ触媒法で転換できると考えない方が良いと思います。
 
でも、エタノールが安価になることは、BDF製造者にとっては朗報です。
今後、海外の大型BDFプラントでは、プロセス転換と伴にエタノール使用が増えそうです。
日本でも、我はと思われる方、挑戦されたら如何でしょうか??
 
今回は、エタノールの価格低下のニュースとBDFへの利用について、若干の解説をしました。
これで、BDFの将来展望が開けるとも思いませんが。。。
 
では、また。。。
Joe.H
 
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