酵素触媒による循環式・BDF充填塔反応装置(100L)の製作実例です!!

酵素触媒XZyme®:)(See Note)を使ったBDF装置の設計例は、過去Blog記事で何回か紹介済です。
その1例は下記でした。
 
今回は、既存の槽型(バッチ)反応器(例、S社など)に循環方式の充填塔・反応装置を付加した制作中の実例を紹介します
既存装置部は、無改造ですので、必要なら従来のアルカリ方式+水洗法も、自由に切り替えて並行して使用可能です。
 
この図は、某顧客用に依頼され、現在制作中のものです。
既存反応器容量は100Lバッチ反応器であり、現状は水洗方式によって粗BDFを精製しています。
 
今回は、この既存バッチ反応器を生かしつつ、下記の充填・循環式の酵素触媒反応器を付加し、更に続いてメタノール回収装置、残留FFA(吸着)処理、Dry精製装置などを加えて、完全な酵素触媒方式・Dry方式の装置として製作しています
 
イメージ 2
 
既存バッチ反応装置(添付図のMixer&Heater)の新たな役割は、
・原料油、反応中、反応後の粗BDF用タンク;既存バッチ反応器のタンク利用
メタノール・原料油の簡単なプレ・ミキシング(混合);既存攪拌器利用
・加熱操作(30~35℃);必要に応じ既存バッチ反応器のヒーター利用
グリセリン分離;反応後グリセリン分離を底部から抜く(従来法と同一)
などで、反応工程、水洗精製などは、当然行いません。
 
固定化酵素触媒の粒子は、イオン交換樹脂塔と同じく圧力損失が大きいのが特徴(課題)です。圧力損失の計算は、下記の様になります。
 
圧力損失:DP(mPa)
流速:V(Cm/Min)
粘度:Vis(cP)
塔長:L(Cm)
塔内径(Cm)
ポンプ流量:Q(L/min)
塔断面積;S(Cm2)
系数:k(ー)(正確には、実験で求めることができます)
    
DP/L=k x V x Vis               (1)
Q= S x V                     (2)
S= 3.141 x D x D /4          (3)
 
DP= k x Q/S x Vis x L
    = k x Q/(3.141xDxD/4) x Vis x L               (4)
から計算できます。
 
今回の装置は、この圧力損失を考慮したものです。
 
一方、反応速度は、触媒量、(内部拡散ではなく、外部拡散速度が律速支配的である範囲では)流速(V)、及び(触媒熱劣化が起きない範囲で)温度など比例しますが、逆に流速を増大すれば、、上記(4式)から塔の圧力損失も限りなく増加してしまいます。
 
そこで、今回は、充填触媒の体積(1kg当たり3.8~4.0L)を考慮して、できる限り大きな内径(D)の塔を使い塔断面積(S)を大きくしました。
また,触媒粒子の破損を防ぐ為に、2塔に分割しました(3~4塔の方がより望ましいのですが、予算と許容圧力損失から2塔構成)。
 
装置の入口と出口間の圧力損失(DP)は同じでも、塔を分割することにより塔数(n=今回は2)を増やせば、触媒に直接加わる力はDP/nとなり軽減するからです。今回は2分の1となり、それだけ流速(V)を早めることができます。
 
塔を分割しないと固定化酵素触媒の媒体樹脂を破損させる可能性もありますこの結果、流速を下げざるを得ないことも起きます。
 
或は、ポンプの揚程(Head)不足で流量が流なくなったり、流量低下が起きてしまい、結果的には流速(V)低下を招き、反応速度低下します。
 
全体の圧力損失は多段塔構成でも、1段塔構成でも、流速や触媒量、塔内径が同じなら、変わりません。
 
具体的な対応策は、
・低揚程ポンプを使う場合(30~50m)は、塔と塔との間にもポンプを、何台か設置して、ポンプ数の倍数の揚程をえる方法(ポンプの多段Booster化)、或は
・全体の圧力損失(DP)に耐ええる揚程をもつ高揚程圧力ポンプを設置
等の選択法です。
 
 
今回は、添付図の様に、高揚程多段ポンプ(MuliStages Pump)を使います。
形状がチョット普通のポンプとは違います。この種のタイプのポンプは縦型、横型、或は各種段数のものがあります。
 
今回は下記の製品(ステンレス製、BDF対応Viton製O-Ring)を購入し、使います。
1HP(馬力)の14段(Stages)のもので、流量は、ポンプ出口圧力(100psi=0.69mPa=6.9気圧)時に、毎分11.3ガロン(毎分42L)のものを使います。
 
但し、ポンプは米国製の60Hz仕様ですので、関東での使用は、毎分35L程度に落ちます。揚程も同時に低下しますが、充分過ぎる位のHead能力(180psi=1.24mPa=12.4気圧)あると思います。
 
価格は、米国製なので、通常のポンプが1~3万円位なのに比べやや高価ですが、国内製品に比較すれば安価です(675$=5.5万円)。
 
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このポンプ流量に併せて、米国・ステンレス製の多段Static-Mixer(3/4インチ)のものを使います。
尚、循環式触媒充填反応塔の本体(10インチ)は、可能な限り低価格化する為、通常の上下フランジ構造・ボルト締め+金網(80~100メッシュ)・サポート付ではなく、上下溶接・容器(タンク)仕上げとしています。また、圧力損失を考慮して断面積が多く取れる様に反応液出口側は反応器挿入型金網ストレーナー(100メッシュ)を使います。入口側に汎用ストレーナー(80メッシュ)としました。
 
触媒交換は、1~2年に1回程度ですので、この時はストレーナー類(2種、上下)を外して、交換すると言う方式です。何本ものフランジ・ボルトの取り扱いより簡単です。
この結果、製造コストの大幅な低下ができました。塔本体の材質も鋼管仕様で製作しています。
具体的な使用済触媒の除去は油、或はBDFを塔頂から流し込めば、塔低から簡単に塔外に取り出せますし、新触媒の投入も塔頂から、ロートなど簡単に使い投入できます。
 
余談ですが、Dry-Process塔のイオン交換樹脂塔、吸着塔は、従来法では石鹸分、残留触媒・グリセリン溶液の固化等の為に、本方式は使えないと思われます。通常のフランジ・金網構造の塔となります。
 
この添付図は、既存バッチ槽(100L)対応のものですが、仮に200Lバッチ装置対応であれば、同一サイズで4塔構成で可能です。
また50Lバッチであれな、1塔構成となります。
 
下記2枚は制作中の写真です。
 
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右の写真は完成した循環方式の反応塔です。
色は、ブルー色の焼付塗装です。
特注仕様ストレーナーは、パンチメタルで作成し、最終的には100メッシュのステンレス網を巻きます(実際は金網袋)。触媒を投入後、反応塔上部から挿入されます。一式で2塔シリーズ接続構成です(上記、フロー図参照)。
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全て新設の場合は、既存反応装置の様な機能をもったものを新設することも可能ですが、我々は、同じ塔構成、サイズのものを使います。即ち、2塔反応塔+2塔分離槽方式です。
 
この場合も、或いは、新設の場合でも、4塔構成の100Lバッチ装置は、驚きの低価格提供できます
 
また、ごく小容量の50Lタイプなら、1反応塔+1分離塔の2塔構成となり、更にお得な価格となります。
 
何れにしても、酵素触媒付の反応装置の製品化を考慮中ですので、そう遠くない時期に、公表可能だとおもいます
 
。。。。と言うことで、今回は酵素触媒の循環式充填反応塔の製作図例の紹介でした。何か、お問い合わせがあれば、ご連絡ください。
 
では、また。。。
Joe.H
 
Note:
BDF反応用に使っている固定化酵素触媒は、現状2種類あります。
XZyme®及びEZyme®触媒です。
 
両触媒は、当社(Joe.Hの所属国内会社)が、海外酵素触媒開発・製造会社からOEM契約に基づき、当会社、顧客先(国内、海外クライアント向け)に供給しているBDF専用の酵素固定化触媒製品です。
 
XZyme®(Xザイム)
TransEster反応とEster反応を同時並行的に行う機能をもった酵素触媒(Enzymatic Catalyst)です。
改良型複合リパーゼ固定化酵素触媒です。通常、BDF反応の前段の反応に使う触媒で必ず必用です。リパーゼによる油脂分解速度を高める為、水分存在下(2~4%)で反応を行います。
この結果、遊離脂肪酸(FFA)が1~3%程度残る傾向があり、この処理が車両用燃料、或はBDF規格(0.5%以下)を満たす為には、次の別触媒EZymeを併せて使う方法、多少収率ロスを犠牲にしても、装置及び触媒費が省ける吸着分離法、アルカリ除去(鹸化)法などで、FFA分を除去する方法があります。
 
EZyme®(Eザイム)
専らEster反応を得意とする同様の改良型複合リパーゼ固定化酵素触媒です。
この触媒はオプション使用で、BDF反応の後段で使う設計です。
実際、TransEster反応も行える触媒機能が備わっていますが、反応環境(低水分雰囲気)から,残留FFAをBDFに収率ロスなく変換できるエステル反応触媒として主に利用しています。
オプション触媒であり、残留FFA濃度制限の緩やかなBDF燃料(ボイラー燃料、発電用ディーゼル用燃料等)、小型・少量BDF生産では、通常使わず、主に大型プラント用です。
 
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