バイオディーゼル(BDF)用の高性能減圧蒸留装置の開発を検討中です!!

 今回は、BDF減圧蒸留装置の話題です。
最近一部で導入されつつあるバイオディーゼル(BDF)の蒸留装置の話題と多少の考察の紹介です。
 
通常、BDFは、原料油の性状把握をキチンと行い、適切な反応条件を守れば、それが従来のアルカリ法でも、最新の固体(酵素)触媒法であれ、BDF規格(JIS、ASTM、ENなど)以上の品質のBDFを継続的に常時製造することは、そう困難なことではありません。
 
ところが現実には海外で販売されているBDF製品でも、国内で製造されえいるBDFでも、品質規格以上の製品は多くない様です。
 
『品質規格に合うBDF製造ができないからと言う理由からBDF蒸留装置導入は危険である』 
ことは、言うまでもありません。先ずは反応工程をキチンと行うことが先決です。
 
現状、国内で販売されている減圧蒸留装置)の課題は(一部だと思いますが。。。 )、
1)蒸留装置(減圧蒸留)は、極めて高価です。毎時100L程度(或は以下)の機械でも、1000万円を遥かに超える高価格です(能力比較で)。
2)現在国内市場で販売されている製品には、極端に蒸留残渣が多いものもある様です。
前段の反応添化率が低いと更に、残渣が増えます。3分の1以上が残渣であり、製品量は3分の2程度しか得られないと言う例も珍しくはありません。
3)蒸留法によるBDF製品の品質向上も期待できますが、…時には、
4)残渣は、蒸留時の高温状態で、長時間バッチ状態で曝されるので、他の用途には使えず、多くは廃棄物扱いの状態です。
生成グリセリン、石鹸分(個体触媒法は生成しない)に加えて、更に残渣を加えると、原料油(廃油)の50%が廃棄物と言う計算も成り立ちます。
ECOを目的にBDF製造使用しているのでは??とも思ってします。
5)この蒸留残渣量を減らすには、更に高温で蒸留すれば良い訳ですが、この場合はBDF製品の品質劣化(未反応成分、ポリマーなどの製品BDFへの混入、BDF製品の熱劣化)、及び残渣油の粘度上昇による蒸留機器の詰まり、保守・クリーニング作業増等となる様です。
6)多量の熱エネルギーを蒸留工程で使用する。熱エネルギーが増えれば、更に冷却用水、及びこの冷却塔設備も必要となります。熱の回収・有効利用がなされていません。
。。。。などです。
 
但し、適切な減圧蒸留技術・方式を使えば、上記の課題の多くは、解消、或は改善されます。
 
因みに、下記はオーストリアUIC社の蒸留データです。
確かに、10%残渣、(動物油脂でBDFを製造する場合に問題となる)硫黄分、残留モノグリセリド(MGs),グリセリン(要注意!国産蒸留装置は除去不可製品も)などの品質改善効果は優れています。加えて、冬季特性の目詰まり点(CFPP)の改善効果も3~9℃程度あるとの報告です。
 
下記の表の右側は、蒸留を行わないで得られた品質性状例です。
日本で話題の10%残留炭素も0.01も充分低い値です。転化率も99%と高転化率ですので、当然かもしれませんが、…
 
 
 
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但し、彼らの減圧蒸留方式は、国内製品とは全く異なります
 
主なものは、
A)バッチ法ではなく、連続法であり、大型装置です。従って、価格も高い。
B)減圧レベルが、国産製品に比べて極低圧(高真空の絶対庄10mmHg~0.001mmHg)であるため、比較的低温でも充分蒸留できる。
C)蒸留装置内に留まるBDF液は、1時間単位ではなく10秒以下と超短時間
かつ蒸留操作が低温である為、熱劣化が少ない(殆どない)。
D)残渣量が少ない(2~10%程度)。原料油、転化率により変わりうる。
E)BDFより(やや)低沸点成分の除去グリセリン、水分、残留メタノール)もできる。
国産では、グリセリンなどの除去も出来ない模様。。。。
蒸留装置は、基本的には、熱エネルギーを使い1塔では、低温側(BDF)と高温側(残渣)の両者に分離しかできません。
従って、BDFの蒸発温度以下の成分は全てBDF側に混入してしまいます。これらの分離には、蒸留塔の追加が必要となります。詰まり3成分なら2塔、4成分なら、3塔構成と言った具合です。
 
下記は、オーストラリアFT-Technologies社の製品です。 
2個の丸い部分が蒸留塔部分ですが、遠心分離器+分子蒸留(Molecular Distillation)技術を組み合わせた装置で、毎時600~1000Kg程度の蒸留能力があります。
主に精油分野、オメガ脂肪酸などの分離・精製用に開発されたもので、1秒以下で効率的に減圧蒸留(0.001mmHg)ができる様です。
 
蒸留性能的には優れていますし、極めてコンパクト化ですが、価格はAUS$1.3M(1億円強)と高価です。通常分子蒸留装置は、このクラスの製造能力だと高さ5~6mもあり、室内設置は難しい場合もあります。
 
尚、小型の毎時100kg、200kg程度の装置もあります。
この能力で最低でも4000~5000万、,300kg,400kg程度で8000万円はします。
 
予算があれば、実績のあるこれらの製品を購入すれば、リスクもなく、優れたBDF製品ができます。
 
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同様に、下記は米国のMyers Vacuum社の類似の分子蒸留装置です。
このタイプは最大毎時400Lb(180kg)のものです。
 
或は、Artisan社のRotothermと言う製品フロー(横型Thin Film Evaporation技術)もあります。
 
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次は
資金的にそこまではとても無理!!
と言う多くの方向けの紹介です。
 
機能的には大差なく、少なくとも国産の減圧蒸留装置の諸課題を解決すべく、新たな蒸留装置の設計を始めています。詳細は非公開です。。。。
 
まだドラフト段階ですが、下記がその公開フロー例です。
設計目標は、下記です
 
1)毎時200~300L程度の連続減圧蒸留装置を目指しています。
目標価格は1000万円程度、出来ればそれ以下、最悪でも1500万円は超えない
他の生産能力でも勿論実現可能ですが、価格は変動します。
 
2)粗BDFから、残留メタノール・水分除去・回収、グリセリンなど低沸点成分の除去、ポリマー・未反応成分、及び石鹸分の除去(残渣)を行います。従って、3塔構成です。
メタノール回収・乾燥工程(水分除去)後の粗BDFなら2塔構成となります。
更に、低沸点成分の除去も不要な程の粗BDFなら1塔構成まで、簡略化可能となります。
 
3)エネルギー回収を徹底的に図り、エネルギー使用を極力抑えたECO設計です。
 
4)滞留時間低減化と蒸留の低温度化を図ります。熱劣化も抑えます。
 
5)製品純度を保ちつつ、残渣量は極力減らす工夫です。
 
6)反応側はアルカリ法であれば、MSR方式の反応後に接続できます。
酵素触媒方式(連続式が基本、バッチでも)でも同様ですが、この場合は理想的なプロセスと成りえると思います。残渣を再度反応原料油として循環使用する予定ですので、蒸留残渣は殆ど発生しないと思います。
 
7)最近、BDFの蒸留法が注目されている理由は、原料油多様化・低コスト化と高品質・低硫黄軽油との比較からBDF製品 品質規格以上の製品が要求されつつあります。この様な場合は、汎用の精製技術である減圧蒸留法が有力となります。
 
8)今後、詳細設計で、フロー図も変更されると思います。
 
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。。。。。。と言うことで
 
今回は、超高速MSR反応装置、酵素触媒CP法等の高純度精製装置減圧蒸留方式の話題でした。
 
興味のある方は、直接ご連絡ください。
 
では、また。。。。
 
Joe.H
 
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