酵素固定化触媒によるマイクロ・バッチ法BDF反応試験の紹介です!!(その2)

固定化酵素触媒によるマイクロ・バッチ法によるBDF反応試験の2回目です。
 
尚、1回目は下記です。こちらが未読なら、こちらを最初に参照ください
 
今回紹介するのは、酸価値ほぼ200(FFA濃度100%近い)油を使ったバイオディーゼル(BDF)の製造の紹介です。
 
新油なら酸価(AV)値は、0~0.5程度ですし、国内の通常廃食油でも、酸価値は、2~5程度が殆どです。
 
これ等油と酵素触媒を使ったBDFの製造法は、全く同じ条件(メタノール量、反応時間など。。)です。
勿論、このレベルまでの廃油であれば、通常のアルカリ法が使える範囲です。
 
最も、最近ある方から、充分(過ぎるくらい)使い込まれた廃食油を頂きました。
 
英語で廃食油はYellow Greaseと呼ばれる様に、廃食油の色は通常の黄色、または多少黒ずんだ褐色(Brown)をしています。処が、この廃油は褐色をしていました。酸価値は10でした。。。と言うことで、Yellow-Grease
を通り越してBrown-Greaseの入口の油の状況でした。
 
但し、酵素法のマイクロ・バッチ法でBDFは問題なく製造できました。
 
下記の写真が反応後の写真で、上部液が粗BDF、下部層がグリセリンです。
酵素触媒法では、通常のアルカリ法とは逆で、グリセリンの色の方が、白く薄い色となります。
 
酸価値10の廃食油なら、何か酸法等の前処理なしでは、アルカリ法では使えません
 
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今回紹介するのは、この程度の良質油(?)とは全く異なる
酸価値190~200の油と固定化酵素触媒を使ったBDFの反応です
 
先ず、下記がその油の写真です(知人からのサンプル提供油)。
 
一見グリセリンと見間違える程の黒い油です。
実際はペットボトルの上部の黄色を極く濃縮した色ですが、目視だと黒々とした油です。
 
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実は、この油は、ほぼ100%石鹸分の下記から抽出された油です
カレーを作っているのではありません。
 
既に、ある程度処理をした後ですの、多少黒色の液(油)も見えますが、当初は黄色の柔らかな固体状の石鹸(油)です。
何かを想像する様な硬さ、色、そして臭いがします。その為もあり、屋外に持ち出しての処理です。
 
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油(写真2番目のペットボトルの油)のPH値は、下記の様に4程度です。
油色素の影響で、余りPH用紙の色判定によるPH値は、判断しにくいのですが。。。。
 
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下記の写真は、触媒の入ったCoca-Colaのペットボトル、即ちマイクロバッチ反応器です。
 
下側の固体粒子が酵素触媒(100g)で、今回で15バッチ目程度、新油、廃油等で、これまで使っています。
通常は500~750バッチ程度使える筈ですので、触媒は全く問題ありません。
 
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下記は、反応終了直後の状態です。
中央がBDF、底部が酵素触媒、変わっているのは上部のです。
 
通常のアルカリ法だと泡は石鹸成分ですが、酵素法だと石鹸はできません。
 
この油に、何か植物性の発泡性成分が混入している様です。
成分はよく解りませんが、精製油(廃油)には殆ど含まれていないリン化合物などかもしれません。
これらが濃縮された状態で混じっているものと思われます。但し、2~3時間で泡は消滅しました。
 
他に、変わった事に気がつきましたか??
そうです。グリセリンがありません!?
通常の油脂なら、最初のBlogの写真の様にグリセリンが副生します。
 
当然といえば、当然ですが、この油は酸価値200近くですので、全て遊離脂肪酸です。
油脂成分(TGs,DGs,MGs)成分は殆ど含まれていませんので、グリセリンが副生する筈がないわけです
 
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簡易転化率テストも、下記の様にOKです。
 
むしろ、酸価値が高いほど高所反応速度は早い様です。
今回は1段反応のみで1時間で行いました。
反応時間は、他の酸価値の油と同じです。 反応温度も夏期温度温度で、無加温、無調整です。
 
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下記の写真の右がBDF反応前の油原料(殆ど遊離脂肪酸)、左がBDFです。
 
余りにも色が褐色色なので、目視ではどちらが原料か、製品BDFかの区別がつきません。
僅かに、BDFの方が粘度が低くサラサラしているかな?と思う程度です。
 
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BDFの色が多少脱色出来るか、活性白土で脱色しましたが、数%程度の添加・脱色では殆ど色の変化は有りませんでした。逆に色素がそれだけ多いと言うことです。
主な色素成分はポリフェノール系の抗酸化物質が濃縮された状態です。
 
更に、白土の量を増やせば脱色出来るかもしれませんが、余り実用的ではないことと、色の濃淡が燃料の良否には関連しませんので、この状態で終了としました。
 
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。。。と言うことで、今回は石鹸の柔らか塊から回収した油(遊離脂肪酸ほぼ100%)からのBDFの製造の紹介でした。
 
この様に、酵素触媒なら遊離脂肪酸が0~100%まで全ての油脂で、同一反応条件でBDFを製造できます
 
我々の廻りでこの様な油は、実は未利用、或いは有効利用されないままに、これまでは放置されていましたが、BDF原料の一つとして、今後は有効に使える様になります。
 
特に、大型ディーゼルエンジン(及び発電機)には、低価格原料油として充分使えますし、採算性も向上するはずです。最近、この種の大型BDF案件も少なくないので、注目しています
 
でも、Blogの読者諸氏には関係無い??ことでしょうか。。。。
実は処分に困っているアルカリ法のグリセリン中には、大量の油脂成分(石鹸、BDF、未反応油、。。)が含まれていますが、これ等は簡単に、酵素法ならBDFとして回収できますし、これによりBDFの収率向上が図れるばかりか、グリセリンの品質も向上します
 
。。。と言うことで、
今回は遊離脂肪酸ほぼ100%の油からBDFをマイクロバッチ法での製造例を紹介しました。勿論、この場合は、通常のエステル交換反応ではなくエステル反応だけです。
 
酸価値200近い極限状態の油を使ったBDFの製造の紹介は、国内外でも殆どないと思います!!
 
興味がある方は、直接下記にメールください。
 
では、また。。。
Joe.H
 
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