極寒仕様バイオディーゼル(BDF)の最近のQ/A例です!

最近、某バイオディーゼル製造者(法人)の方から、極寒、厳寒仕様のバイオディーゼル(BDF)について( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/3879043.html )、お問い合わせがありました。
添付は、この質疑の一部です。
 
 
Q:「飽和脂肪酸を除外してしまう方法」を教えて頂く事は可能なのでしょうか?
もちろん秘密保持契約を交わさせて頂きたいとは思いますが、BDFを北海道等の極寒の地での普及の為にも宜しくお願い致します。
A:ライセンス契約、秘密保持契約など、諸条件が整えば可能です。
 
 
Q:冬季処理の設備及びライセンスなどの費用を教えて頂ければありがたいです。
A:冬季処理で、 飽和脂肪酸を除外する方法はいろいろあるのですが、
設備費が一番安いのは、結晶成長促進剤+結晶分離法ですので、この方法を前提としてのお返事です。
仮に、月6000Lで、20日間製造すると仮定した場合、1日当たり300L程度の処理となります。 このベースでの設備としては、手動で下記のものが必要です。
・冷凍設備:少なくともマイナス25度C以下まで冷やせるもの。望ましくは、マイナス30度以下。容量は1000~1500L程度の業務用冷凍庫など(中古でも可能)。200V仕様で、予算50万~100万円程度で購入可能だと思います(時間を掛けて探せば、更に安価なものが見つかると思います)。結晶成長に12日かかりますので、23日処理分の600~900L程度のBDFを冷凍する冷凍設備と言う前提です。
・結晶分離装置:最安価な方法は、フィルター設備ですが、真空ポンプを含めて概略予算は50~100万円程度あれば、充分だと思います(同様に、時間を掛けて探せば、更に安価なものが見つかると思います)。
・他に、ドラム缶などの容器+加熱器、攪拌器など、10万円以内で(既にあれば、不要です)
・結晶成長促進剤は、別と購入が必要です。
・凍結分離された冬季処理済のBDFは、最終的には乾燥処理が必要ですが、これらは、既存BDF設備を利用と言う前提です。
・ライセンス料は、諸条件によって変わりますが、大した額ではありません。
何れにしても、多少は販売価格に費用を上乗せした方が良いと思います。人件費もかかりますので、。。。
勿論、(御社が、)他では真似の出来ない極寒仕様のバイオディーゼルを供給できるPR効果も大であるとは思いますが、。。
 
Q:夏用BDFの貯蔵とはどういう意味になりますか?冬季処理をして、分離した固まったBDFを夏用に取って置くという意味でしょうか?
A:分離した飽和脂肪酸を利用する方法を申し上げているのですが、
・自動車燃料として利用する場合は、暖かくなったら、他のBDFブレンドして使うことになりますので、夏までとは言わないまでも春過ぎまで保存貯蔵しておくと言う意味です(付録2参照)。
・或いは、別と室内でボイラーや温室用などのヒーター燃料、或いは農機具用として軽油ブレンド使用するニーズがあれば、これらに使う。
・他の用途、例えば、固形、粉石鹸用の製造原料などとして使い、燃料としては使わない。
などが、分離飽和脂肪酸エステルの使い道です。
 
Q:排水処理は、北海道はそれ程、規制が厳しくないので、
問題ないのですが、排水よりは、グリセリン処理が問題です。。。
A:グリセリンが生成しない方法もありますが、一切費用が掛からないと言う夢の様な話はありません。私はお勧めはしませんが、或いは、役所の規制が厳しくなく無視できるなら、排水に総て溶かせば、処理は不要になります(が、法律違反です。止めた方が良いです。)!
当方では、100%ECO石鹸へ変換する方法で消費していますが、。。。
ついでに、廃水も何れ問題になると思います、北海道でも、。。。
 
Q:流動点降下剤は、昨年まではウィントロンXC-30というモノを使用しておりましたが、(国内取扱店が中止したので、)今年度から入手が出来なくなり、今年は国産品を使用しております。
A: この製品は、BDF業界では、BDF専用として古い製品で、評判も良いようです。他に、Synergyという製品があり、こちらの方が、値段も高いのですが、性能も良いと言う触れ込みです。
但し、テスト的に使用したのですが、一応本場でもまれた製品なので、勿論国産より良いのですが、大きな効果はありませんでした。ご参考までに、。
 
Q:これからの時期は、サラダ油かキャノーラ油の使用になります
A:キャノーラ油系BDFは、冬季特性が優れているのは事実ですが、それもマイナス20度前後までの様です。あまり菜種油系BDFは経験がないのですが、低温がマイナス25~30度C、或いはそれ以下だと、 かえって大豆油系の方が、冬季仕様のBDFが作り易いです。多分、理由は菜種の主成分はオレイン酸であり、このBDFはマイナス20度前後で固化しますので。。。
Q:費用をかけずに(添加剤は別として)、冬に使用できるBDFは製造できないものでしょうか?
 A:何も(設備)費用を掛けずに冬用BDFの製造法は、油種を変えるか、アルコールを変えるかしか有りません(それでも、極寒仕様では、無理ですが、。。)。
ECOも考えず、単に利益だけを追求するのであれば、もう手遅れなのですが、BDFビジネスなどに手を出さないか、国内の高価な機械を遣わず、ご自分で機械を作るか、海外から輸入するかです(資金難であれば、これでかなり資金が浮きます)。
お使いの200Lタイプで、メタノール回収もでき自動化された機械でも、海外なら70万円程度で購入できます。他に、輸入送料、関税を入れても、たいした金額にはなりません。(この他に、何百万もする高価な設備を買わないで設備投資額の低減化に加えて、製造原価も検討すれば、大幅に低減でき採算性は好転します。簡単な例では、メタノール回収もできない機械が日本ではほとんどですが、8~10万円以下の設備投資で、200LクラスのBDF装置のメタノール回収を行えば、すぐ30~40%の製造原価(メタノール費)は、簡単に下げられます(付録1参照)。
設備費の件ですが、時間が有り、隣近所、或いはジャンク屋などで、古冷凍庫などを探せば、限りなく設備費はゼロに近づきます。
また、フィルター設備も古着(例、ジーンズ)の布でも使えますので、こちらも限りなくゼロとなります(実はフィルター処理が殆ど不要なほど、固液分離が完全にしますが、。。)。
この辺の事情が解らないのですが、。。。 
必要なのは、情報開示料だけとなります。こちらとても、いろいろBDF周りの物理化学を研究されれば、自社開発できるはずですので、不要かもしれません(情報と時間の対価を払うか、否かでしょう)。
(あまり役立ちませんが、)流動点降下剤ですら、ご自分でもある程度自家製造できますので、外部購入は不要かもしれません。 
。。。と言った具合で、能力と時間さえあれば、費用は限りなく幾らでも落とせます(但し、全く費用ゼロで極寒仕様のECO燃料のバイオディーゼル(BDF)の製造が出来ない事は、何年もBDFに携わっていなくても、充分お解かりだと思いますが?? 費用も不要で、簡単なら、既に皆さん実現している筈で、問題など発生しないです)。
 
以上ですが、何れにしても、多少なりともECOに関心をもった製造者と使用者が存在する前提でないと、極寒仕様のバイオディーゼル(BDF)は、生産販売することが難しくなります。
安い軽油代替燃料として使いたいと言うだけのニーズでは、通常のBDFを含めて、限界があることは、最初から明らかです。
石油は100年の歴史と、これまで膨大な資金、研究蓄積と大規模生産による効率化などの結果、製造された汎用燃料ですので、。。。
 
では、また。。。。。
Joe.H
 
追伸)
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付録1)
単純に何もしないで経費の低減化ができればそれに越した事はありませんが、通常はこんなうまい話はありません。例え、設備投資をしても、その結果経費が低減できれば、その方が得策です。設備投資では、Pay-OutーYearと言いますが、何年で(あるいは、何ヶ月や何日で)投資が回収できるかが重要な意思決定ルールです。通常は2~3年で元が取れれば、それ以降は利益だけとなります。
より正確に行うには、DCF法(Discount Cash Flow)を使い判断する場合が多いです。つまり、現在の投資が将来に渡ってどれだけの利回りの投資になるかを現在価値に引き直して判断する計算法で、例えば、15%とか言う数値になります。この場合、借り入れ金利を例えば、5%を支払っても(あるいは、金利5%の貯蓄をしておくよりも)、DCF=15% なら、10%分の利益があり、投資する価値は、充分あると言う意味になります。ただ、預貯金もなし、借入金の信用もない場合は、所詮無理な話ですが、。。。
 
付録2 )
以前に、下記で紹介したのですが( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/8514315.html )、BDFに限らず石油精製に於いても、季節変動に合わせて製造したり、需要期まで貯蔵をしています。
例えば、灯油(ケロシン)やADO(自動車用ディーゼル油)は、原油が決まれば、分解装置(FCC)を使わない限り、収率は一定です。従って、灯油は夏場需要が少ないので、ケロシンはタンクに貯蔵しておき、冬季の灯油需要期に備えます。更に、軽油は、冬季は固まるので(1号軽油)、ADOに加えてケロシンブレンドした軽油(2、3号軽油)を製造するので、尚更、ケロシンの冬季需要は増え、夏場の貯蔵が必要になってきます。
 
バイオディーゼル(BDF)も同様で、本来は、夏場も生の冬季無処理BDFを出荷するのではなく、夏場は、夏場処理(冬季処理と同じ処理、但し、固化部分を夏用BDFとして出荷し、液部分は冬季需要に貯蔵する)を行い、冬季時には、冬季処理の液部分と併せて出荷すれば、1年中一定の量のBDFを、それぞれの季節に併せた品質で出荷できて、需要家からも、ECO燃料製造者として信頼性が高まると思われます。
事実、米国などでは、現実にこの様な形態で製造、及び原料の選択を行っている。つまり夏場は、固まりやすく、従来使われていなかった動物性の油脂や排水中の油脂(分離脂肪酸濃度も高い)なども回収して、製造原価を下げる努力をしている。
最新の情報では(http://www.biodieselmagazine.com/article.jsp?article_id=4504 )、米国では、従来品質規格が一つであったBDFのASTM規格が、軽油と同じ様に、複数規格を定めるか、否か決めつつある様です(年末頃までに)。多分、冬季用(No.1Biodiesel)と、通常用(No.2biodiesel)です。
それだけ、BDFが米国で認知された証拠でもあるが、いずれ日本でも同様な動きがあるかもしれない。
前記の様に、夏処理により、いやでも高セタン価(CN=65前後)の高性能BDFができるので、軽油では得られないプレミアムBDFとして、(夏場に)新たなBDF需要、市場を喚起、開拓すると言うビジネス戦略も考えられる。
それだけ冬季処理法は、広い可能性も持った技術であると言えよう。
 
 
 以上