石油精製とバイオマス(バイオディーゼル)精製工程について、比較して見ました!!

今回は、バイオディーゼル(BDF)燃料に興味があるなら、競合する兄貴分ディーゼル燃料を製造する石油精製(Refinery)全体から多少は勉強し、かつバイオマス精製(Biomassrefinery)構想とも比較して見よう!!
と言う趣旨から
 
石油精製(Refinery)設備とその製品群を簡単に紹介し、どの様に我々身近でCO2を発生する石油製品が出来るのか
更には、
バイオディーゼル(BDF)或いは、BDFを含めバイオ燃料全体との関連を比較して見たい
と思います。
 
下記の添付は、WikiPediaより、転写したものです。
参照しながら、見てください。
主に、中東からタンカーによって運ばれてきた原油(Crude Oil)は、真っ黒な液体で、原油の取れた場所により成分割合や密度、物性(CP,CFPP,PP)も異なります。丁度、BDFの原料が菜種、大豆、米油、ラード、ココナッツ油など各種あるのと同様です。
 
まず、この原油は、常圧蒸留装置(Atomospheric Distillation)にかけられ、沸点の差を利用し、主に炭素数の少ないものから、多い順に分離されます。
 
沸点温度の低い、蒸発(気化)しやすい物質ガス(Gas)類が塔頂から出てきます。
ガス類(炭化水素;炭素水素化合物)には、炭素数により、水素(炭素数が0)、メタン(1)、エタン(2)、プロパン(3)、ブタン(4)等があり、プロパンやブタン類は、LPG製品になります。
その他の物質は自家燃料(Refinery Fuel)として、主に使用されます。
 
アルカリ法などのBDFの製造では、これらのガスは出ませんが、他の方法(発酵法、高圧法など)では、これらに相当するガスが生成する場合もあります。
 
次に沸点の低いものが、ナフサ類(Light & Heavy Naptha)です。
余り聞きなれない言葉かも知れませんが、所謂、揮発油です。
ガソリン(Gasoline)のブレンディングの主成分であると同時に、
熱分解反応装置(Thermal Cracking、エチレンプラント)により石油化学基礎原料となり、プラスティツク、合成ゴム、合成繊維、そして、BDFに使うメタノールなども。。。。。。。
殆どすべての石油化学製品が出来ます。
ナフサは炭素数が5~8程度の組成です。
 
更に、ガソリンの品質改善の為に、水素添加(hydrotreater),異性化(Isomerization),改質(Reformer)等の装置にかけられます。
BDFの品質向上(CFPP改善など)のために行うオゾン処理、脂肪酸の異性化、改質、紹介済のグリセリンセタン価向上剤へ変換する方法などが対応すると思われます。
 
次は、ケロシン(Kerosene)成分で、製品としては、灯油やジェット燃料になります。
航空機は、高度の高い所で低温域(-40度C)を飛ぶので、固化しにくい燃料が必要になります。
バイオ燃料をジェット燃料にするには、固化を防止するために、ケロシンとのブレンディングや紹介済の極寒冬季処理BDFなどが必要不可欠となります。
 
次が、ADO(Automobile Diesel Oil)、即ち、ディーゼルで、軽油のことです。灯油と比べると固まりやすく、使用場所や季節により、ケロシンブレンドし、固まりにくくする場合(3号、特3号軽油)もあります。
BDFが原油処理の軽油に相当している訳です。
この図では説明がありませんが、原油には多量の硫黄成分が含まれいますので、脱硫(硫黄除去)装置、ブレンディング装置を経て、製品化されます。
 
BDFは硫黄分がないので、脱硫装置などは不要です。
最近の軽油燃料の硫黄分の規格値の低下に伴い、エンジンの潤滑性(磨耗防止)の添加剤が不可欠の様です(硫黄成分が役立つ)。この点でも、BDFは優れもので、一部ブレンド(B5)しただけでも、この潤滑性効果大と言われています。
 
更に、蒸発(気化)しにくい成分は、無理に沸点まで高温にすると成分自体が分解、炭化、重合などを起こすので、そこまで高温には出来ません。
そこで、減圧にし蒸発しやすくして、蒸留分離します。真空蒸留(Vacuum Distillation)です。
この装置により、LGO(Light Gas Oil),HGO(Heavy Gas Oil) が分離され、残りは道路舗装などに使われるアスフアァルト(Asphalt)成分となります。
LGO,HGOは、やはり脱硫装置、ブレンディング装置を経て、A重油(中型ディーゼルエンジン油)からB重油、C重油となり、主に発電所用大型ボイラー燃料や大型船のディーゼル燃料になりますが、これらの需要が少なく、ガソリン、灯油の需要を見たす為に、触媒を使って分解して、これらの基材油としています。
この為の装置が接触分解装置FCC)、水素添加分解装置(Hydrocracker)です。これらの装置の御かげで、白物(ガソリン、軽油、灯油、軽油)と黒物(重油)の季節変動や需給ギャップを、原油の種類を変えなくとも、ある程度調整できる様になっています。
バイオ燃料では、これらに相当するのは、油を直接分解する装置で、石油会社などで研究開発中です。
 
残留成分のアスファルトも、同様で需要に対して余剰ですので、より有用な成分に分解している製油所もあります。これがボトム(成分)分解装置(Bottom Cracker)と呼ばれるもので、この図では、Delayed Cokerとなっています。
残った少量のコーク(Coke)炭素繊維、カーボンブラックの材料などにもなります。
 
油から通常の反応で出来たBDFは、物性的に石油の軽油とLGOの中間成分近辺のものが殆どで、少量のガム質などが、A重油以下の沸点成分に相当していて、原油に比べ狭い範囲の均一な成分構成と言えます。
炭素2重結合を多く含んだ不飽和エステル成分であり、沸点差が殆どありません。石油製品の軽油の様に、固化温度の異なる製品を供給する為に、BDFでは蒸留装置は使えません。使っても、目的は精製用であり、BDF中のメタノールグリセリン、ガム質等の不純物除去で、固化温度の異なるBDF製品の分離法ではありません。この目的に対して、紹介済の尿素法、結晶分離法など沸点以外の物性を利用した手法となります。
 
 
下記添付は、バイオ・リファイナりーの構想図の一例で、現在の油からBDF製造はその一部です。
再生可能原料(Biomass)として、澱粉セルロースなど多種ありますが、まだ実用化には至っていません。将来展望図で,石油精製の様に確立した図はありません。
 
この図では、植(動)物油を(固体)触媒でエステル交換反応(Catalytic Transesterification)を行い、バイオディーゼル(BDF)を作ることが、中央部に描かれています。
固体触媒だと、ほぼ純粋なグリセリン(Glycerine)が得られるので、これを分解して石化原料とすれば、エタノールメタノールをはじめ、各種石油化学製品へのルートが開けます。
 
別の構想図が、上記図です。やはり、油からDiesel油を製造している箇所がありますが、これは、エステル交換反応ではなく、熱分解(Pyrolysis)と言う方法で、丁度石油と同じ様な化学構造、物性のディーゼル油を製造する考えの様です。
現在のナフサ・ベースの石油化学原料をつくるエチレンプラントの様な感じです。
より、石油精製・石油化学に近い構想となっています。
 
原料の前処理(Pre-Treatment)を行い、大きく加水分解プロセス酵母、酸触媒)と熱分解(Pyrolysis)、ガス化(Gasification)とに分かれる様な構成図です。
特に、分解してSyngas化一酸化炭素と水素ガス)して、その後は合成反応(フィツシャー法など)で、広範な燃料や化学製品の原料を製造する考え方です。
 
いずれにしても、まだまだ先のことで、誰も判りません。
 
では。。。
Joe.H
 
追伸)
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 可能な限り対応させて頂きますので。。。。
 尚、お問い合わせの前、下記を必ず参照ください。
 
2)過去に石油・石油化学会社の技術部門に長年勤務していたもので、
 一般的な石油設備や燃料の知識はあります。
3)石油精製とBDFの規模を比較して見ました。日本で最大規模の石油装置は、常圧蒸留装置の規模で、1日当り処理能力は28万バーレル程度です。1バーレル(樽)は159Lですので、1日当り約4,500万Lです。一方、BDFは、日本で最大でも1日あたり4、000L以下だと思いますので、石油設備は、BDFの約1.1万倍の製造規模だと言えます。個人や小規模生産者は、1日当り最大でも200Lとすれば、23万倍の規模となります。
この様な規模の差が有るのに、軽油と同じ値段どころか、1~2割安く販売したのでは、利益が出るはずもありません。
但し、軽油には、税金が1L当り32円一寸加わっての販売価格ですが、。。。
その日本最大規模の製油所も縮小閉鎖か??
と言うニュースもあります。
それだけ、ガソリンや軽油燃料などの需要が減りつつある
のだろう思います。
 
これって、ECO活動の効果??
ガソリン、軽油からエタノール、BDFに燃料が代わりつつあるから??
それなら、好ましいのですが。。。。。
 
以上