新世代バイオディーゼル(BDF)製造法は、固体触媒法なのでしょうか??

今回は、従来の酸化カルシウム、イオン交換樹脂触媒などと言う固体触媒とは異なり、最近注目の
新タイプの固体触媒(不均一触媒)を用いた新しいバイオディーゼル・プロセスを紹介します
 
直接使用しなくとも、バイオディーゼル(BDF)製造に関心があるなら、多分最新,最先端の動向として知っていて損はないと思います。
 
バイオディーゼル(BDF)の製造法は、個人レベルや少量製造業者では、ほぼ100%近くがアルカリ法(苛性ソーダ、水酸化カリウム)です。
中酸価(FFA)の廃油の場合でも、酸・アルカリ法だと思います。
 
日本の大規模製造所のプロセスでも、これらの手法を使っていると思います。
それも、連続プロセスではなく、バッチ法、或いはセミ・バッチ法だと思います。
最も、日本の大規模プロセスは、世界基準では、中小規模ですから、当然かも知れません。
 
世界的には、この1~2年は、中規模以上のプロセスでは、油とメタノール・触媒溶液を瞬時にマイクロレベルに混合できるCavitaion法などを用いた連続プロセス、高速・高率転化率手法が,商用生産の主流となっています。
等が、最も高率の良い製品として出回っていて(主に、エステル交換反応部分)、商用生産稼動中です。
これらの処理能力は、最低でも毎時1000L以上、最大はほぼ無制限です。
 
このプロセスでは、幅広い原料油に対応できるばかりでなく、高速反応が実現できていますし、石鹸分など生成もある程度抑えられると言うことです。
類似の方法では、超音波http://www.hielscher.com/ultrasonics/products.htm?gclid=CIq2ybOwyKQCFQvObgodD0XS-g ) や電磁波(電子レンジと類似)等を用いて、混合する方法もあります。
 
酵素法のバイオディーゼル・プロセス等も、パイロット・プラントのテスト運転がされていますが、
 
今回は、更に進んだ有望な方法で、石鹸等が生成しないと言う新世代の固定触媒法が注目され、実用化されようとしています。
 
その1例が下記で、Mcgyan Processと呼ばれる方法です( http://www.sartec.com/mcgyan.html )。
 
 
これらの宣伝文句(セールスポイント)は、
・固体触媒なので、現在のアルカリ触媒の様に消費されない(何回でも使える)
・精製が不要なので、水洗法時の水が不要、乾式なら、イオン交換樹脂、吸着剤が不要
・石鹸分が生成しないので、化学品グレードのグリセリンが得られる
・アルカリ触媒使用時の廃棄物扱いのグリセリン処理、廃棄などが不要
・従来のプロセスに比べ新プロセスはコンパクトである(建設費が安価、広い土地が不要)
・水分が有っても問題ない(石鹸分を生成したり、反応が進まないことはない)
・遊離脂肪酸(FFA)があっても問題ない(酸触媒の様に、BDFへ変換される)
・危険薬品である強アルカリ、強酸を使わない
・高転化率で、高速(秒単位)である(現在のアルカリ法でも、高転化率は実現できますが、。。)
・より広範囲の原料が使える(高FFA油の下水排水等からの回収油分など)
・連続プロセスである(連続プロセスは、Cavitaion法などでも、可能)
等と、長所ばかりで、問題が無いように見えますが、。。。
 
まだパイロットレベル、商業プラントの建設中と言うことで、確認が必要なのは、
・固定触媒は、どれだけ長期に使えるのか?、固体触媒は研究レベルでは、これまでも報告が多いいが、。。。触媒活性が低かったり、すぐ活性が減少して、交換が必要など
・ライセンス料が高い(加えて、処理量比例のローヤリティ費が別と必要など)
・プロセスによっては、高圧が必要(常圧では低転化率
等の問題があった。
このプロセスが、これらの問題は無いのか、評価は今後となろう。
 
次に紹介する方法は、SCRO-80触媒と言う触媒を使うプロセスで、最新の米国Biodiesel雑誌に掲載されているものです( http://biodieselmagazine.com/article.jsp?article_id=4430 )
詳細は上記URLを見ていただきたいのですが、概要は下記です。
 
アイルランドの会社が最近アナウンスした革新的な触媒と言う触れ込みです。
・触媒は、SCRO-80と言う名前、彼らはスマート触媒と呼んでいます。
・高速、高転化率が実現できる(10秒で、転嫁率98%+)。
・触媒は劣化しなく、何度でも再使用できる(と言ってます)
・副生グリセリンの純度は98%で、化学原料として利用、販売可能
・固体触媒(粉状)なので、リサイクル、再使用できる(触媒は、本来再使用できるもの)
・建設費は、1000万ガロン/年(10MMgy;約3800万L/年産)の能力で、7万ドル(現在の為替レートで580万円)とのことです。前提の稼働日数は不明ですが、1年365日24時間運転とすれば、4300L/時(72L/秒)の能力です。
・建設費が安価(既存プラントでも使用可能)
パイロットプラント(セミバッチで、毎時1800kgのBDF生産)を建設、稼動(オランダ)で、高反応転化率(未反応物は、0.01%)。
・触媒のみも、販売予定(商用プラントで、年末から来年にかけて販売開始予定)
YouTubeに簡単なデモ動画があります( http://www.youtube.com/watch?v=xosLuAElSwU )
 興味がある方は、見てください。
 
 蛇足ですが、私も良く見ているこのYouTubeには、バイオディーゼル関連の動画が沢山あります。英語版ですが、興味があ人は、こちらも見られたら、どうでしょうか??
等です。
 
Magyanプロセスが固定床反応器であるのに対し、こちらは粉状触媒で原料との混合、反応、触媒分離操作が必要な様です。
常温、常圧で反応する様ですが、触媒の分離ロスなども考えられると思います。
 
他にも、いくつか最近欧米で固体触媒(不均一触媒)のBDFプロセスが発表されています。
例えば、
・BioFuelBox's NovoStream™ process ( www.biofuelbox.com/municipal-fog.html )
・こちらは希土類ルテニウム(Ln)+Ca酸化物などを使う米Wayne大の研究者の開発のNextCAT触媒です。特徴は、エステル及びエステル交換反応が並行して進行するようです。http://nextcatinc.com/News51710.htm 高遊離脂肪酸(~20%)や水分(~5%)でも問題なしとも言っています。
Ln触媒は、名古屋大の研究報告もありますが、実用化は未定です。NextCATは、実用化も近そうです。
・或いは、イオン交換樹脂に酵素を付着させたタイプの固体触媒例です(イスラエルベンチャー)。http://www.transbiodiesel.com/products/
・臨界温度(圧力)+溶剤添加+固体触媒で、エステル反応+エステル交換反応を行う例もあります。米国立研究所(INL:Idaho National Labo. )の特許US Patent.6,887,283)をライセンス。特定の触媒の発明ではなく、臨界+溶剤(均一化)を狙った手法(http://www.texasbiodiesel.com/research.htmhttp://www.texasbiodiesel.com/images/continuous-solid-catalytic-.jpg
  
・同様に溶剤添加+固体触媒で、エステル反応+エステル交換反応を狙い、固体触媒として酵素を使う例(台湾)もあり、パイロットは稼動中です。http://www.sunhobiodiesel.com/english_home.htm 、 http://www.sunhobiodiesel.com/files/sunho_brief_technology_overview.pdf
・前述のSCRO-80触媒の様に、固定床ではなく、スラリー状の固体触媒の例として、CATILINと言う会社のT-300触媒もあります。エステル交換反応を通常の反応温度(60~70℃)で行うということで、触媒も販売している様です。http://www.catilin.com/index.html
 
 等です。
 
日本でも、固体触媒は研究されていますが、実用化に耐えるプロセスはまだ無い様です。
 
特にアルカリなどの均一触媒に比較し、固定触媒はどうしても、油、メタノールと触媒の接触面積が少なくなり(エステル交換反応は、触媒活性が同一強度なら、接触面積に、反応速度は比例する)、反応速度が遅くなります。
これを補う為に、高温、高圧プロセスとなったり、触媒の細孔内での反応が廃油ので詰まり、再利用が制限されることから、触媒の交換(高コスト)などの弊害が、何時も問題となります。
 
最新の固体触媒は、活性強度が従来の固体触媒より数段強力なのだと思います。
 
何れにしても、現在のアルカリ触媒法は、当分存在し続けると思いますが、
何れは一部の先進的なBDF製造者は、この様な固体触媒法を使い始めるのではないでしょうか??
予想では、米国で1~2年後なら、充分可能性ありだと思います。
 
日本では、どうでしょうか??? 早くて4~5年後かな。。。。??
 
尚、その後の続編は、
に有ります。
 
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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