バイオディーゼル(BDF)反応の転化率の確認法とその対処法です!!

今回は、何らかの原因でバイオディーゼル(BDF)反応の転化率が不充分(規格値以下)か、どうかの判断(測定)法と、その対処(処理)法について考えて見ましょう!!
 
まず、エステル交換反応が1段反応であれ、2段反応であれ、反応停止後転化率が規格値以上か、或いは、少なくとも近くまで反応しているのか、BDF製造者なら誰でも必ず気になると思います。
 
反応工程の前に、原料油(WVO)の前処理が、気になる方は、下記を参照下さい。
 
或いは、反応後の精製工程も気になる方は、処理が正しく行われたかの判断(測定法など)と、失敗した場合の再処理法などDry-Process法について、別といつか紹介します。
 
Dry-Process法は、まだ使用者が少ないと思いますので、使い方の説明等、取りあえず下記を参照下さい。
精製工程の水洗法は、実施経験もないので、他人情報だけで調査もしてなく、あまりコメントはできません。
 
今回のテーマに戻って、反応工程はメーカーなどの指示どうりの条件(メタノール、アルカリ量、反応温度、反応時間など)を守っているので、気にならない??
気にもならない、気にしない、或いは、心配ない!と思っているなら、以下はスキップしてください
 
気になる方は、どうしてますか??
具体的な確認法は幾つかありますので、紹介します。
まずは、転化率の確認法から、。。。
 
・ガスクロ(GC)や液クロで、正規の分析法分析する⇒
或いは、分析を外部に依頼する。これが一番確実です。
但し、このBlogの読者では、ほぼ100%このケースはないと思いますが、。。。
 
例え、この場合でも、分析時間はかかるし、費用もかかります。
もし、反応部だけが終了し、まだ精製工程(Dry-Process、或いは水洗法など)が未処理の場合はどうされますか??
分析結果が出るまで待てますか??
因みに、海外の大規模製造業者でも、最終品質確認はGC分析などで行いますが、反応工程管理(反応の途中での品質管理)では、これらは使わないのが普通です。
他の手法の簡易分析法を含めて(例、下記の分光法キットなど)分析法と結果が求められています。
 
分光法などで分析する
添付機器はハンディ形式で、インピーダンスを測定することにより、グリセリン等を分析を行うもので、2年ほど前から発売されています(米国製、i-SPEC Q-100、添付写真)。
数分で簡単に分析でき、かつかなり正確に測定できるので、商業規模のBDF生産者が主に工程管理に使用している機器です。
値段が数十万円するのと、毎回の分析消耗品もかなり費用がかかります。
類似の方法を用いた器具が、他にも2~3社で発売されています(価格は50~70万円)。比較的、薬品など消耗品費が安価な製品もあります。
費用の点で、個人や小規模生産者には、少し縁遠いと思いますが、購入できない程の値段では無いと思います。。http://t1.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcSjH-DsmV3--Ea4zxkQ1nXIFPNePoYCEPS03XXBYxIgM2MDrXc&t=1&usg=__JPbMI6E-CqeOkb3g1_jYWKHTWaM=
 但し、この機器(iーSpec)は残留グリセリン濃度を測定するので、グリセリン除去後でないと、転化率の推定(測定)には使えません。グリセリンが含まれているサンプルなら、除去した後に、分析します。従って、どちらかと言うと最終品質確認用です。
 
 
簡易法で確認する⇒
購入済の簡易分析キットが手元にあれば、すぐ手早く確認できます。
これまで何度も紹介している自家製簡易キットでも同様です。
ガスクロや分光法に比べれば、精度は劣るものの、問題が発生したり、何か心配な点が発生したときは、数分で確認できるので、とても便利です。
 
グリセリンの有無に関わらず使えるのが大きな特徴です。
BDFの分析法では、最も重要で、良く使うものです。具体的な使用法は、何回か説明してますので、そちらを参照ください。
 
或いは、下記写真のグリセリン測定簡易キットも米国で発売されていて、使用しています。
5~10分ぐらいで簡単に、全グリセリン濃度が計量できます(価格は6回で1万円程度です)。
グリセリン濃度から、転化率を推定できます。グリセリン濃度により、P.H.試験紙の様に発色の差で測定する方法です。
但し、このキットも、分光法(iーSpec)の機器と同様で、グリセリンが除去された工程でしか使えませんので(反応中、或いは、直後は使用不可で、グリセリン除去が必要)。
主に製品の最終確認用としての用途です。
 
 
Micro-Batch法で確認する
簡易キットがないと言って諦めるのも自由ですが、方法はあります。
ちょっと面倒ですが、Micro-Batchで確かめる方法です。
分析結果は、30~60分で分かりますので、工程の中途でも、多少全体の処理時間が長くなりますが、許容範囲だと思います。
 
確認方法は、
 
1)まず測定したいBDF,例えば100Lの一部、1Lをビーカーか、ペットボトルにとります(サンプル量は自由に変更できます)。
BDFサンプル温度が50度C以上あれば、加温は必要ありません。
それ以下なら、容器に入れる前に、60~65度C程度に加温します。
グリセリン除去前のサンプルであれば、サンプルのグリセリンを必ず除去してください。
 
2)BDF中にメタノールが含まれない場合(脱メタノール工程後、或いは水洗処理後)は、やや多めですが10%程度のメタノールを、
BDF中にメタノールが含まれている場合(反応停止直後など)は、5%程度のメタノールを計量し、適当な大きさの容器に入れます。
 
3)アルカリ触媒は、化成ソーダでも、水酸化カリウムでもかまいませんが、
化成ソーダなら3g、水酸化カリウムなら5g程度を測定し、2)のメタノールと良く混ぜます。
必ず触媒をメタノールへ入れること、逆は危険です!
 
4)充分溶解したメトキシド(メタノール・アルカリ溶液)を、
1)の測定サンプルBDF容器へ投入し、10~15分程度攪拌します
攪拌後、静置する(10~30分)。
 
5)反応転化率が不充分なら、反応が進展した結果、底にグリセリンが沈殿する。
もし反応が充分なら、何も沈殿しない。
前者の場合は、元のBDF転化率を逆算推定出来ますが、省略します。各自で考えてください。
後者の場合は、転化率は、充分高率でほぼ完全に反応してましたので、次の通常工程へ進んでください。
 
6)前者の場合は、再反応(Re-Batch)が必要です。
テスト済サンプルを元に戻し、必要なメタノール、アルカリ触媒量をバッチサイズ(A L)に合せて計算します。
メタノール量(L)はAx(単位メタノール量比、0.10、又は0.05)、アルカリ量(g)は、Ax(単位アルカリ量、苛性ソーダなら3g、水酸化カリウムなら5g)です。
充分溶解したら、反応BDF液に投入します。
液温は通常の反応温度で行ってください。
工程のグリセリン除去がまだでしたら、必ず除去後に行います。
 
)反応時間は、装置によっても異なるのですが、30分程度を目安とします。
多分充分なはずです。
時間が経過したら、次の通常の工程を実行しましょう!
 
8)どうしても、心配なら、再度1)から行い再確認も可能ですが、99%必要はないと思います。
 
簡易転化率キット、或いはガスクロ(GC)、液クロ、分光法での分析の結果、未反応が確認され、転化率が充分でない時は、再バッチが必要になります。
 
再バッチの方法は、上記Micro-Batchでの再バッチと同じです。即ち、
 
1)必要なメタノール量とアルカリ量を計量します。必要量は、前述の2)、3)、6)です。
2)次に、出来たメトキシドを投入します。反応時間は、30分を目安で行います。
前工程でグリセリンを除去してなければ、グリセリン除去後に、これらの処理工程を再開します。
 
今回は、バイオディーゼル(BDF反応の転化率の確認法と、それが不充分な場合の対処法(再バッチ法)を紹介しました
 
勿論、転化率が多少悪くても、気にしない方は、そのまま次工程を、
或いは、別と良好なバイオディーゼル(BDF)が在れば、これらとブレンドするなどの方法もあります。
 
反応工程でのトラブルは、転化率の問題が多いと思いますが、それ以外では、
 
・前処理が適正でなく、水分過多で石鹸分が大量に精製した場合
原料油(WVO)の前処理は、水分除去が主目的で最も重要です。
具体的な対処法は、前述の前処理法の項を見てください。
既に、石鹸分が大量に発生している場合の対処法は、一旦反応を停止し、グリセリン沈殿を行います。
上部に石鹸幕などが大量に有れば、物理的に除去します。次に、前述の何れかの方法で、反応率を確認し、不充分なら再処理を行えば、良いと思います。
 
グリセリンが固まって、配管やポンプ類が詰まった場合
苛性ソーダ触媒を使用している場合、かつ石鹸分が多量に生成した場合、及び苛性ソーダが充分メタノールに溶解してない状態で使った場合など、特に固まりやすいので、なるべく素早く、高温の内にグリセリン除去を行います。まだグリセリンが充分沈殿していない場合でも、何度かに分けて、除去する方法がお勧めです。
 
不幸にも詰まってしまった場合は、まず配管類を使わずに、手作業で総てのBDF反応液を反応器外へ取り出します。
空の反応器のバルブなどを閉めた後、温水(60~70度C)を投入します。温水で固化グリセリン(+副生石鹸分)が溶け出せば、バルブの詰まりは解消し、バルブから溶けた溶液が出ます。
まだ詰まった状態なら、塩酸や硫酸類などの温水に添加します。量は1~2%程度で充分でしょう。但し、強酸は、特に銅やアルミ類などの金属類を腐食しますし、肌に触れると危険ですので、充分注意してください。
最後は充分水で洗浄することが重要です。酸を使わず、針金などで、固化分が取れる事も有ります。
 
適量のメタノール、触媒を投入したのに、反応が進まない
メタノールについては、正規購入品なら品質上問題ないのですが、回収メタノールの場合は、メタノール純度を確認しましょう(密度計などで)。水分が多いと反応はしません。純度の高いメタノールで再バッチ処理です。私は、100Lの原料に対し、通常20Lのメタノールを使用し、3~4L回収メタノールを混ぜて使用しています。
 
次は、アルカリ触媒ですが、あまり古くなったものは、反応しません。
特に、空中水分を吸収し、劣化するので、密閉容器内での管理が必要です。
現実に反応は進展しなかった場合は、新しい触媒で再処理を行います。
 
等のトラブルがよく発生します。
 
では、また。。。
Joe.H
 
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