Biodiesel(バイオディーゼル;BDF)の副生グリセリンの沈降を早める一つの方法

Biodiesel(バイオディーゼル;BDF)反応が完結すると、次は副生グリセリンを沈降させ分離する工程に移ると思いますが、
副生グリセリンの沈降分離の遅さと処理時間に苦労していませんか??
 
特に、苛性ソーダに比べて水酸化カリウムは沈降時間が掛かリます。
 
この副生グリセリンの沈降速度を早める方法はいろいろあります。例えば、
 
1)遠心分離機法:商業生産の連続プロセスや大規模バッチ生産では、遠心分離器を通常使えば、殆ど時間はかかりませんが、機械の値段が高くて、小規模では使えません。
 
2)静電気沈降法:小規模でも可能です。10,000V程度の電圧を掛け、静電気が帯電した微小なグリセリン滴を大きな塊に急速に凝集させ、沈降分離を早めてくれます。
バッチ反応装置のオプション機器として米国で販売されています(写真)。
通常この装置では12~16時間ぐらい掛かるものが、10分以内でほぼ完全に沈降します。
但し、これは、他の装置では使えません。他に、類似のものもある様ですが、詳細は不明です。
 
3)5%PreーWash法:どの様な装置でも、規模の大小に関係なしに使用できる方法で、今回は細かく紹介したいと思います。
 
まず、反応転化率テストに合格確認後、又はヤマカンの反応時間経過後、或いは装置メーカーのお勧め反応時間後に、通常は攪拌・加熱を停止し、副生グリセリン沈降を開始する工程に移ると思います。
 
その前に、使用廃食油(WVO)に対して容量比で5%の水を加えて、弱めに数分攪拌を継続した後に停止し、グリセリンを沈降させ分離工程に移るという簡単な方法で、5%Pre-Wash法と呼ばれていて、元々米Iowa大学で開発された方法で、現在海外の多くのBDFファンが採用している方法です。100Lの廃油に対して5Lをゆっくり投入します。
この方法は1段法(Base)での例を紹介しましたが、2段法(Base/Base)法でも、少し方法や水の使用量は変わりますが、使れている方法です。
 
この方法を使うと沈降速度が速まり、使用した経験では20~30分以内に95%以上のグリセリン沈降が完了します。加えて、粗製BDF側の石鹸分やメタノール分も水に吸収されます。石鹸分は30~50%減少すると言われていますので、グリセリン分離後の粗製BDFもより澄んだ色合いとなります。
 
この方法は次工程の水洗浄法でも、乾式(Dry-Process)法でもどちらでも使うことができます。
 
水洗浄法では、洗浄回数を大幅に減少します(5回洗浄から2~3回洗浄へ減少と言う報告もあり、個人的には水洗浄法は採用していないので、使用経験はなし)。
この為、洗浄廃水が減少し、エコ(ECO)的と言えると思います。
 
Dry-Process(乾式)法では、まず粗製BDFの脱水乾燥工程を行い、そしてDry-Process工程に移れば良く、粗製BDFの脱メタノール工程が不要となります。
 
水を投入するので、メタノール回収は困難になりますので、
メタノール回収を優先する場合は5%Pre-Washより、前回紹介したWBD法の方が、水を使わないので優れています http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/7501399.html )。
我々も当初はこの方法を使っていたのですが、種々の理由から、現在はWBD法を使用しています。
 
もう一つ、この5%Pre-Wash法の課題は、副生グリセリンの用途によっては、この方法は使えない場合があります。
我々はグリセリン石鹸材料として全量使用しているので水を含んだ副生グリセリン(15~20%水分)は使い難い状況です。また、燃料用途でも、使い難いと思います。
 
また、副生グリセリンを次回廃食油グリセリン処理(Pre-Glycerin Washing)用として使う場合も、5%Pre-Wash法は使用できません。
堆肥促進剤、家畜飼料の利用など、水分が問題とならない用途にはお勧めです。
 
今回の5%Pre-Wash法は、
・とにかくグリセリン沈降速度を速めて、全体のBDF製造時間を早めたい
・Dry-Processを使いたいが、メタノール回収機能がないので、脱メタノール状態のDry-Process用フィードができないく、困っている。
水洗浄時間の短縮、洗浄廃水量をECO的な観点から減らしたい
・苛性ソーダ使用の場合、副生グリセリンが装置内や配管、容器で固化しない様にしたい(水分で固化し難くなる)。
・できれば安価な苛性ソーダを使いたいが、固化が問題なので、より高価格の水酸化カリウムを使っている
 
などの目標を達成したり、課題を解決する方法の一つの手法で、その代わりに前述の様な副生グリセリンの用途制限は付きます。
 
では、また。。。
 
追伸)
1)水投入により、反応は停止しますので、逆反応などは起こりません。
2)条件により、稀にエマルジョンが発生することがあります。この場合はあわてずに、塩水などで、エマルジョン除去を行ってください。
 
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