冬季対応のバイオディーゼル(BDF)の作り方、尿素肥料を使おう!!

梅雨時の天気が続いていますが、来るべき冬に備えてと言う訳でもないのですが、寒さに耐えるBiodiesel(バイオディーゼルBDF)の試作品を紹介します。
 
以前に紹介したECO(エコ)燃料であるバイオディーゼル(BDF)製造法は、特殊な添加剤などを使い、冷却・分離・精製する(Proprietary)方法( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/3879043.html )でした。
 
今回は、この方法とは全く異なり、尿素の包接錯体化合物(Inclusion Complex,Host-Guest Complex)を利用した方法です。
今回は、ミニバッチでトライして見たものを紹介します。
 
まず廃油定量(400g)に対して、尿素を同じ量(400g、写真)を計量します。尿素肥料は白色の結晶粉末で、窒素肥料として使われています。園芸店や農協などで、25kg袋で1200~1300円で購入できます。
化成肥料とは、異なりますので、注意してください(化成肥料は、尿素+リン酸+カリの混合物)。
 
 
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この尿素は正式には化学薬品を使うべきですが、、安価な尿素肥料で充分使えます。
この尿素が100%溶けるだけのメタノール(+第2の溶剤添加も)を投入します(尿素の3~5倍)。常温では一部溶けなくても(写真)、多少加温すると良く溶けます(40~50度C).
 
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次に、尿素メタノール溶液に、廃油を加え、攪拌しながら55度Cまで上昇させ、20~30分維持します。
その後、混合液を10~20度Cまで冷却します(次写真)。
温度が低下するにつれ、尿素結晶が析出してきます。つまり、固体結晶と液体との2層に分離します。
尚、尿素の析出時に、飽和脂肪酸エステル(或いは、飽和脂肪酸も同様)を優先的に抱え込んで結晶を作る性質があることが、1940年代から知られています(飽和化合物から、順に不飽和化合物へ、また分子量の大きなものから、順に小さい化合物へと)。従って、
 
液体部は不飽和脂肪酸エステル・リッチなバイオディーゼルBDF)となり一方,固体結晶部は飽和脂肪酸エステル・リッチなBDFとなっています。夏季BDFとして等、使用できます。
 
この尿素結晶は加熱し飽和脂肪酸エステルと尿素結晶に分離させるか(但し、120度C以上に加熱すると尿素が分解し、有毒なアンモニアガスを発生するので、要注意)、
或いは水処理すれば、飽和脂肪酸エステル・リッチなBDFと尿素水とに分離しますので、分離できます。
尿素水から、水を蒸発等で除けば、得られた尿素結晶は再使用できます
 
或いは尿素水は液体窒素肥料として、薄めて使えば、野菜や花も良く育ちます。また廃水もなく、こちらの方がECO的かな?と思います。
 
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次写真は、結晶をフィルターで取り除いた後の液体部を示しています。
不飽和脂肪酸エステル、及びメタノール、及び極少量の尿素が含まれています。
メタノールは、蒸留などの操作により回収すれば、再度使用可のですが、今回は、少量テストなので水洗除去しました。
水洗により、微量の尿素も除去できます。
 
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最終的に精製後の冬季対応のBDFが次写真です。
サンプルが少なかったことと、フィルター処理の不手際等で、収率は35%程度でしたが、シュミレーション計算の結果では、本来の収率は50%前後は可能なはずです。
 
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次の写真は、これを冷凍テストした状態です。
マイナス30度の状況です
上記は無添加の状況ですので、流動点降下剤などを加えれば、更に少しは低い温度に耐えるBDFとなります。
また、極限まで精度を高めれば(飽和脂肪酸を除去できれば)、マイナス50度Cまで使用に耐えるBDFができるはずですが、。。。
 
今回の試作品では、この程度が限界で、極寒の地の北海道などでは、ギリギリの状況の品質までしか、得られませんでした。
シミュレーションを繰り返し、-40度C程度は得られる様に、逆にレシピーを考えたのですが、。。。。
性能的には、以前報告の方法の方が、簡単で、取り合えず性能も良さそうです。
 
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今回は、冬季対応のBiodiesel(バイオディーゼルBDF)100%燃料を、別の方法である尿素+メタノールで作って見ました。
尿素肥料でも、無処理や添加剤を加えてだけのBDFに比べれば、大幅な性能向上が得られると言うサンプルです。
 
では、また。。。
 
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2) シミュレーターにより、原料油の脂肪酸組成と量、目標とする冬季対応固化温度(CP、PP)を決めれば、
必要な尿素メタノール量が求められますので、レシピーは簡単に決まります。併せて、製品の予想組成も計算できます。
3)以前には、75Lバッチで異なったレシピーで、目標の仕様(PP,CP)をー15Cを狙って、同様に使用済油(WVO)で製造したことがあります。勿論製品はできましたが、固まる温度目標が高いので、使用割合は大幅に少ないですが、でも大量のメタノール回収や尿素処理が大変でした。
 
以上