廃油(WVO)の滴定法によるAV値測定とアルカリ触媒量の計算法

廃油(WVO)を使ってバイオディーゼルBDF)反応を行う場合、滴定法などで酸価(AV値)を求めないことには、使用するWVOがどれだけ酸化しているのか、更にドレだけアルカリ触媒(酸性触媒も)を使うべきか、何も答えが出ない。
 
日本に於いてBDF装置メーカーは、ある定量の触媒を使うことを進言している場合があるかも知れないが、これでは、品質が一定に保てない、石鹸が多量に出きてしまった、エマルジョンができた、反応転化率が規格値まで達しなかった、未反応がある。。。などと言うトラブルの原因となる。
 
以前述べたが、欧米では例え安物のBDF装置でも、必ず滴定キット(器具、薬品、マニュアル)がついてくるのが、常識となっている。
 
滴定法は、高校(?)や大学の化学の実習で習った人には、常識だと思うが、その他の人は参考にして欲しい。
 
先ず、滴定に当り用意するもの、写真(1)の容器(ビーカーなど、何でも良い)、注射器(WVOをより正確に1mL計れる物)、中和表示液、溶剤(IPA)を準備する。
中和判定は、表示液として、ここではフェノール・レッドを用いている。他にはフェノール・フタレン、ターメリック(食料品店で売っているウコン粉、或いはカレー粉があれば、最も安価で、かつ簡単に出来るので、海外のBiodiesel製造者は多くが使用中)等が利用できます。使用試薬により、中和時の色は異なります。濃赤はターメリック、赤はフェノール・レッド、フェノール・フタレンはピンク色です。
尚、細かいことを言うと、変色時のPHは、使用液によって多少異なるので、そこを考慮する場合もある(上級者)。この場合はデジタルPH計がれば、これで確認する。
 
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写真(2)はビーカーに注射器(3mLのもの)で正確に1mL計り、ビーカーに注ぎ、溶剤(IPA,エーテルでもOK)を10倍(10mL)程度投入し、良く混ぜた状況 。
注射器に泡が入るので、より正しい方法は、1mLを注入するのではなく、例えば2mL入れて、1mLまでWVOを押し出し、注入すると良い。
 
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ここで、参考までにAV試験紙でも、この溶液を測定して見た(次の写真3)。AV値が幾つか判断できますか?? それに、これでは4以上は測定できません。
 
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次写真は、ビーカーに中和指示薬を数滴入れ、計量秤にかけて、ゼロアジャストした状態。この秤は100分の1gまで正しく計れるが、できるだけ精度の良いものが望ましい。
 
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次の写真は酸価を測定するアルカリ水溶液で、水酸化カリウムの1000分の1溶液として作ってあったもの。作る方法は、1000mlの蒸留水(中和の水なら、OK)に正確に水酸化カリウムを1g計量し、混ぜた溶液。 試験試薬を使う方が良いが、反応で使う水酸化カリウムを使う場合は、それでも良いが、工業用の水酸化カリウムは純度が低いので(92~95%)、これを補正しないと誤差となる(純度確認できれば、。。OK)。どうしても、水酸化ナトリウムを使いたい人は、それも可能である。事実使っている人も、海外では多い。但し、両者の変換は必要です。
 
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水酸化カリウムの1000分の1溶液(重量)を注射器やピペットで、少しずつ攪拌しつつ、投入する。下の写真は2.05g投入した後の状況。黄色なので、まだまだ酸性の状況。。。従って、AV値は2.05以上と言うことである。
尚、正しくは容積ベースが正しいが、重量の方が、正確に計れるので。また測定精度差もない。
 
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次の写真は、更に指示薬を投入し、軽く振って攪拌した状況。色が黄色から、少し赤みがかってきた(4.9g投入時)。中和はまもなくか。
 
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更に、注意しつつ投入すると、更に赤くなってきている。この状態(5.05g)でほぼ中和となっている。デジタルのPH計があれば、確認しても良いが、大差なかろう。この場合は使用しなかった。
 
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因みに、この状態(5.30g)では、投入過多と言えそう。
従って、このWVOの酸価は5.05となる。前に表示したAV用紙でこの値を推定できましたか??
より正確には、この作業を何回か行い、平均値を用いた方が良いが、大差ない。
要は正確に計量すれば、結果もばらつかない。
 
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よって、このWVOは、酸価AV=5.05となる(1LのWVOを中和するのに必要な水酸化カリウムの重量5.05g)。
 
1バッチが100Lの処理をする場合、先ず1L当りの水酸化カリウムの触媒量は(基準値)+脂肪酸中和量(5.05g)となる。
反応基準ベース値は、装置によって代わるとか、これをソフトとして販売する人、或いはKnow-How と考える人などいろいろ。。。ここでは、どの様な人が閲覧しているのか、不明なので、一般論としてのみ表示すると一般に4.5~9.0gと言うことにする。こうして、1L当りの水酸化カリウム量が決まれば、バッチサイズが100Lとすると、100倍すればOKとなる。ベース値が6(適当な値なので、注意)と考えるなら、KOH=6+5.05=11.05gとなり、100Lあたり、11.05x100=1105gとなる。
水酸化ナトリウムなら、投入量は水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの1モルあたりの分子量と、使用薬品純度(滴定と反応用)補正する必要がある。
 
グリセリン前処理や、酸(+アルカリ)反応(Acid/Base)の場合は、処理後のWVOを滴定すれば良い。2段反応(Base/Base)などを行う場合も同様に多少補正が必要であるが、基本は同じ。また製品BDFの酸価も滴定できる(製品規格AV値は0.5以内)。
 
アルカリ触媒の量が少なすぎると、いくらメタノールを入れても反応は進まないし、多すぎると石鹸分を多く副生し、廃水の垂れ流しにならないように、お願いします。イオン交換樹脂でも、詰まるので要注意!!
 
英語での説明のみであるが、米国YouTubeには幾つか動画サイトがあるので、これを見ることも参考になろう。
 
今回は、最も重要なWVOの酸価測定法を説明した。
では、また。
 
付録:
AV値=5.05の廃油の遊離脂肪酸濃度(FFA)は幾らか解りますか???
答は、FFA(%,W)=0.5463xAV=0.546x5.05=2.76%
と言うことになります。
追伸)
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