ガス化装置内の化学反応を考えて見よう!!!
ガス化と言っても、今回はガス化装置の内部で起きる化学反応を考えて見ようです!!
ガス化(Gasification)の化学反応(Chemical Reactions)は、ガス化条件(反応温度、圧力)及び使用原料により、化学反応の進展はそれぞれ変わってきます。
ガス化プロセス内で、通常の燃焼(Combustion)反応も起きています。
通常の燃焼では、燃焼に必要な酸素(空気)の理論量、或いはそれ以上の過剰酸素(空気)が供給されます。しかし、ガス化では、その必要量の5分の1(20%)から3分の1(33%)程度の酸素(空気)が供給されます。
このことは、原料のバイオマス(炭素原料)を部分燃焼(酸化)させます。
この部分酸化(partial oxidation)により、主な燃焼可能な燃料(Combustible products)は、主成分の一酸化炭素(CO)、及び水素(H2)、そして副製品として完全酸化炭素化合物としての炭酸ガス(CO2)が生成されます。この部分燃焼熱により、ガス化装置内で起きる吸熱ガス化反応熱(Endothermic Gasification Reactions)を供給しています。
従って、ガス化プロセス下、主反応は、炭素(C)、一酸化炭素(CO)、炭酸ガス=2酸化炭素(CO2)、水素(H2)、及びガス化で添加される(場合が多い)蒸気=水(H2O)、そして少量副生するメタンガス(CH4)の化学反応式は、次の様になります。
尚、数字(MJ)は、単位反応量(Kmol)当たりの反応熱(1MJ=239Kcal,)であり、マイナス(-)は発熱反応、プラス(+)は吸熱反応です。発熱反応及び吸熱反応が混在しているのがガス化反応の特徴です。
燃焼反応(Combustion Reactions):
1. | C + ½ O2 → CO | (-111 MJ/kmol) | |
2. | CO + ½ O2 → CO2 | (-283 MJ/kmol) | |
3. | H2 + ½ O2 → H2O | (-242 MJ/kmol) |
その他の
重要なガス化反応(Other Important Gasification Reactions):
4. | C + H2O ↔ CO + H2 | "Water-Gas Reaction" (+131 MJ/kmol) |
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5. | C + CO2 ↔ 2CO | "Boudouard Reaction" (+172 MJ/kmol) |
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6. | C + 2H2 ↔ CH4 | "Methanation Reaction" (-75 MJ/kmol) |
上記の燃焼反応は、通常のガス化反応条件で起きています。
高温炭素反応条件下では、反応式4~6の不均一反応( Heterogeneous Reactions/固体・気体反応 )は、次の(反応式7~8)の反応に,さらに転化し、平衡状態になります。
これらの反応(反応式4~6、及び7、8)はいずれも可逆反応( ↔)であり、平衡状態で量的にバランスします。
可逆反応であれば、当然の結果として左側から右側(→)への反応が発熱反応(-)であれば、逆反応(←)は逆に吸熱反応(+)となっています。
特に、反応式-7は、蒸気(水)ガスシフト反応と呼ばれているもので、ガス化炉に、空気に加えて蒸気を投入することにより、より高濃度水素(H2)が得られます。
反応式ー8は、現在主要水素製造法の反応式で、天然ガス(メタン:CH4)に蒸気(H2O)を加え、高温で改質し、水素(H2)製造をするメタン改質法の主反応です。ガス化炉でも、同じ反応が一部で起きています。
バイオマス由来水素の場合、殆どはガス化炉の合成ガス(SynGas)中の水素を分離する方法(例えば、PSA:Pressure Swing Adsorption、或いは膜分離法)が主力、代表的です。水素分離に際し、高圧化エネルギーが必要だったりして、水素1Kg当たり500-1000円程度の石油・天然ガス由来の水素に比べて製造コストは大幅にアップしそうです。
いずれ紹介したいと思いますが、現状、一般非公開です。
尚、バイオマスガス化も何時までも、発電、発電。。ばかりではなく、そろそろ分散型の水素製造(燃料電池)、化学原料、バイオマス燃料(ガソリン、ジェット燃料、軽油など)の製造を目指す時かもしれないと、最近時々思います。海外では、この種のニュースも多々あります。
以上、余談でした
。

7. | CO + H2O ↔ CO2 + H2 | "Water-Gas-Shift Reaction" (-41 MJ/kmol) |
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8. | CH4 + H2O ↔ CO2 + 3H2 | "Steam-Methane-Reforming Reaction" (+206 MJ/kmol) |
ガス化装置内の様な酸素分が少ない状況下では、原料中に含まれる(少量の)硫黄(化合物)成分(S)は、殆ど硫化水素(H2S)となり、硫化カルボニル(COS)は極く少量しかできません。
同様に、窒素(化合物)成分(N)は、通常、主に窒素ガス(N2)に、一部はアンモニア(NH3)、或いは極く一部はシアン化水素(HCN)に変換されます。
同様に、塩素(化合物)成分(Cl)は、主に塩酸(HCl)に転換されます。
但し、石炭であれば、硫黄分も多く、特別な処理が必要です。
http://www.netl.doe.gov/Image%20Library/technologies/coalpower/gasification/1-1_2.jpg | |
原料中には、更に微量の有機、無機成分が含まれています。
それらは水銀、ヒ素、及び重金属類であり、これらは灰(Ash)や排ガス中に混入しますが、通常はこれらを分離しなくとも、合成ガスとして発電等に、問題なく使うことができます。
但し、通常のバイオマスではなく、廃棄物原料ガス化(MSW)では問題となり得ますので、注意が必要です。
右の表は、固体のバイオマス中の各元素(C,H,N,S,O)がガス化(Gasification)、及び燃焼(Combustion)で、どう化学的に転換し変化するかを纏めた表です。
ガス化では合成ガス(SynGas)となり、燃焼は排ガス(Exhaust Gas)となります。
尚、今回のガス化の化学は、下記(英文)記事からの紹介記事(転用),及びコメント追加です。
http://www.netl.doe.gov/research/coal/energy-systems/gasification/gasifipedia/gasification-chemistry
ガス化装置を検討されている方、或いは既に保有されている方、ガス化方式と併せて、少しはガス化の化学も考慮されたら、より理解が深まると思います
。

では、また。。。。
Joe.H
追伸)
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