バイオディーゼル(BDF)の水分除去とバブリングの関係を考えよう!!

今回は、バブリングによる水分除去(乾燥)の基本的な理屈(理論)の紹介です。
 
バイオディーゼル(BDF)中の最大水分量は、規格(ASTM,EN)で決まっていて、上限値は500PPM(0.05%)となっています。
 
通常、反応終了、そしてグリセリン分離後の祖BDF中には、メタノール、石鹸分、残留グリセリンの他に、水分等が含まれています。
 
メタノール分は、メタノール回収、或いは水洗法で除去できますが、では水分除去、つまり乾燥工程はどうするのでしょうか? 
祖BDFには、最低でも2500~3000PPMの水分が含まれていると思われます。水洗法なら、更に多くの1~2%台の水分が最低でも含まれています。
 
BDFの乾燥処理法は、いろいろあります。その代表的な方法は、下記です。
加熱除去法
・吸着除去法
・バブリング法
等です。
 
加熱法であれば、確実に水分は、規格値以内まで除去できます。
問題は、その使用エネルギーとBDFの熱品質劣化です。常圧加熱脱水法では、最低でも120℃で1~2時間継続する必要があります。
加熱温度を低下させ、BDFの品質劣化を防ぐ方法は、減圧脱水法です。
中規模以上のBDF製造で多く採用されている手法です。減圧の圧力水準により加熱温度は異なりますが、通常は60~80℃で乾燥できる減圧レベルを設定しています(例、200Torr)。
この方法は優れた方法ですが、設備費などを考えると小規模では無理です。
 
次は、吸着法です。
シリカゲル、モレキュラー・シーブなどの吸着剤をつかい脱水します。BDFを加熱する必要はありませんが、水分の吸着時に、吸着熱がでますので、対策が必要であると同時に、使用済の吸着剤の再生、或いは、1回限りの使用なら廃棄と補充が必要になります。
従って、此方も大規模生産者は使っていますが、小規模生産者は無理な場合が多いと思います。
 
最後は、バブリング法です。
この方法は、空気を祖BDF溶液に空気を流す(バブリング)だけですので、何方でも、簡単にできるはずです。小規模でも、勿論可能で、費用も殆ど掛かりません。
 
しかしながら、時には、間違った方法、或いは本質を理解しないで、この方法を行っても、脱水できない場合や、逆に水分を増やしてしまう(加水の)危険性もあります
 
今回は、このバブリング法の話題です。
 
最も重要なことは、バブリングを行う時の、祖BDFの液温とバブリングに使う空気温度と湿度の関係の理解です。
 
先ずは次の図を参照ください。
横軸は空気温度(℃)を示し、縦軸は、空気1kgに吸収できる水分量(g)を示しています。
空気は,標準状態(1気圧、0℃)で、化学の基礎ですが、1モル=22.4L=空気(平均)分子量28.8gですので、1m3当たりは1.285kgとなります。
 
空気中には、その温度により保持可能な最大水分量が変わります。
温度の上昇と伴に、この値は急激に上昇します。
 
空気の温度が50℃なら、1m3(1000L)の空気に対して、最大(飽和状態)95gx1.285=122gの水分まで含まれることになります。逆に、0℃なら、1m3当たり5g*1.285=6gしか水分は空気中に保持できないことになります。
勿論、この値は、最大値であり、飽和状態での値ですので、その温度における湿度100%の状態です。イメージ 1
 
最初に、冬季時のバブリングを考えましょう。空気温度を0℃としましょう。そして、対象とする祖BDFの液温を50℃として、祖BDFの量は100L、そのBDFに含まれている水分は、3000PPM(0.3%)とします。
この状態であれば、祖BDFの水分量は、100Lx0.3/100=0.3L=300gとなります。
 
次に、0℃に於ける空気中の最大水分量は6gであり、バブリングを行うと0℃の空気は、祖BDF内を泡として上昇する間に加温されて、最終的には50℃(近くに)になります。
この時には、空気は最大で1m3当たり飽和状態なら122gの水分量を保持可能となります。
つまり、0℃の空気を使い、50℃の空気で祖BDFを通過する間に、保持可能な水分量は、空気1m3当たり122-6=116g分理想的には増加し、保持可能となります。
 
一方、100LのBDF中は、300gの水分を抱えていますので、この水分は空気中に移動し除去乾燥されることになります。300/116=2.58m3の空気バブリングで理想的には、水分除去できる計算です。
勿論、現実には飽和に達してない可能性もあり、また祖BDF内の拡散なども考慮する必要がありますが、とにかく3~5m3程度の空気バブリング操作で祖BDFは充分乾燥出来そうです。では、何時間バブリング処理を行うかは、バブリング・ポンプの大きさ、性能次第ですが、例えば、毎時1m3の空気供給量なら、3~5時間の処理となります。
 
この様に、冬季であれば、問題なく祖BDFの乾燥は可能です。
 
問題は、夏場や梅雨時の乾燥です。
仮に外気温が35℃だと仮定すると、水分量は最大35gx1.285=45gです。より正確には、空気容積の温度補正(膨張)が必要で,補正後容積1m3当たり45x(273+0)/(273+35)=40gとなります。
祖BDFの液温が同じ50℃であれば、空気1m3当たりの最大の水分除去可能量は122-45(40)=77(82)gへと減少します。
この為、乾燥処理時間は、300/77(82)=3.9(3.7)時間となります。何れにしても、水分吸収効率を考えると6~10時間と大幅にバブリング時間を増やさないと乾燥できないことになります。
 
現実、同じ時間のバブリング時間を前提にすると、夏場であれば祖BDFの液温を、例えば50℃ではなく、70~80℃へと高める必要が出てきます。
 
夏は暑いからと、何も加温しないでバブリングする方もいないと思いますが???、
もしこれを実施すると乾燥は出来ないばかりか、逆に水分量増(水分添加)になりますので、温度レベルには充分注意ください。
 
例として、夏場でも、BDF液温は20℃とすると、15gx1.285=19g、空気温度(気温)は上35℃とすると45g(温度補正値40g)ですので、バブリングすると水分吸収量は19-45(40)=-26(-21)gとなり、逆に、空気1m3のバブリングを行うたびにBDF側に最大26(補正値21)g水分を加えることになります。ご注意を!!!
 
上記の例は、理想状態でのデータですので、現実には、水分計を用い確認しつつ行う方が安全で、お勧めの方法です。水分計も本Blogで紹介済です。水分計で水分を確認しつつ、BDF液温とバブリング時間を管理しましょう。100%失敗はありません。
 
結論は、この図から明らかですが、バブリングは、出来るだけ低温の空気を使い、出来るだけ高温の祖BDFを乾燥させるのが、効率的です
 
今回は、祖BDFの乾燥法の内、バブリングの空気温度と乾燥処理される祖BDFの液温との基本的な関係を紹介しました。
バブリングの後は、静置処理で、石鹸分、残留グリセリンを分離します。
 
皆さん、バブリングは正常ですか?
液温等は十分高温でしょうか?そして、乾燥処理されていますか?
夏場は、一旦充分乾燥処理されても、常温では、空気中の水分を吸収しますので、空気との遮断が重要なことは言うまでもありません。、BDF容器は完全に密閉しましょう!!
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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