BDFグリセリンの分析、どの様な方法があるのでしょうか??

 今回のテーマは、BDF中に含まれるグリセリンの分析器具のいろいろを紹介です。
どの方法が良いかは状況により代わります。
どの器具が適しているかを決めるのは、あなた自身かも知れません。
 
ご存知の様に、BDFの品質を決める最大の要素は転化率、言い換えればBDF純度であり、グリセリリド類などの未反応物、未分離物、不純物の割合です。
 
製品BDFに含まれている物と言えば、主成分はBDFですが、この成分が100%であることが理想ですが、この様なことはあり得ません。
不純物には、
1)未反応油(TGs、トリグリセリド類)
2)反応中間成分(DGs、MGs、BDFまで至らない中間成分)
3)グリセリン(分離除去できない残留グリセリン
4)遊離脂肪酸類(FFA、主に油が古くなって水分の存在で分解したもの)
5)TGs以外の重合物、分解成分
6)石鹸成分
7)水分、メタノール
8)他の微量成分
 
但し、6)~8)は、製品BDFに含まれる量は少ないので(PPMオーダー)、転化率の計算では、無視します。
 
更に、通常は、1)~3)までを測定して、仮に、これら成分(グリセリド)に着目して、全グリセリド類が2%なら、残りはBDFの筈ということで、BDF濃度は98%と判断しています。
 
これとは逆に、BDF濃度に着目して、この値が98%なら、残りはグリセリドの筈と言う判断基準もあります。何れにしても、上記の例では、転化率は98%です。この値に対応する基準値は、品質規格では96.5%+となります。
 
現実には、6)残留石鹸分のイオン交換樹脂でFFA化したもの、或いは、4)の残留FFAも極少量ですがあります。これらは、酸価値(ASTM-0.8,EN-0.5%以下)からFFA量は計算できます(ASTM4000、EN2500PPM以下)。
 
通常の廃油では、転化率の計算上、殆ど問題になる量ではありませんが、劣悪な廃油では、5)重合化合物、分解成分が%オーダー含まれている場合もあります。
この様な油では、この成分量も無視できません。単にBDF量、或いはグリセリド類を計測すれば、転化率が解ると言う簡単な方法は取れません。
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私の簡易分析法で沈殿した未反応油とみなしている項目は、1)の総て、2)の殆ど(MGsは、一部試薬に溶けます)、3)グリセリンはあっても、無くても転化率には影響しません(試薬に溶けます)、4)FFAは一部、飽和FFAは、沈殿液側に残留しますが、量は極く少量です)。
代わりに5)の成分の親油性成分は測定できます。6)石鹸、7)メタノール、水分が含まれた未精製の祖BDFでも分析できます。
尚、1回当たりの分析費用は、100円以下で可能な簡易分析法です 
 
上記の写真は、左から順に廃油の状態、グリセリン前処理後、第1段反応の途中経過(4回)、及び第2段反応の途中経過(2回)、製品BDF品質確認と順次分析することにより、
人の直感・山勘、定時間、色、曇りなどに頼ることなく、BDF反応の時間経過が極めて定量的に把握できます
転化率の測定なしのBDF反応などは考えられないし、無ければ暗黒の闇夜を歩くのと同じです。闇夜には、懐中電灯等が不可欠です。
簡易転化率分析は、正に闇夜の懐中電灯と言えます
 
尚、簡易分析法は下記、他で何回か紹介済みです。
 
次は、厳密な転化率、それも規格で認められた手法で分析をしたいと言う方は、ガスクロマトグラフィー分析(GC)、或いは液クロ分析しかありません。
分析専門家が、正しく分析すれば、正しい分析結果が得られます(得られるはずです)。
GC分析の専門家でも、必ずしも再現性のあるデータが得られているか疑問も多々あります。
ご注意を!!疑う方は、同一BDFサンプルを異なる処に分析依頼すれば、即判明します。
 
BDFの膨大な数の分析を専門に行っている業者に依頼しても、海外なら安価です。
グリセリン分析程度なら1万円で、品質規格の全項目でも10万円程度です。下記Blogに以前紹介しました。http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/11265638.html
 
前置きは、このくらいにして、今回は比較的低価格のグリセリン(転化率)分析器具を紹介します。
何れも、器具は90万円程度以下です。グリセリンを中心に分析可能です。
 
1.SafTest
価格は、7200$(58万円)です。簡単に、短時間(10分)で、未反応油グリりセリド類(TGs,DGs,MGs)、及び遊離グリセリンを110回分の定量分析が可能です。
他に、オプションでFFA分析も定量分析できます。グリセリンの分析は酵素を使う方法で高精度に分析可能です。
 
 
2.I-Spec Q-100
価格は、ネット公開してませんので、問い合わせ確認が必要です。多分、7000ドル(55万円)程度だったと思います。
 
インピーダンス分光法により全グリセリンが簡単に定量分析できます。オプションで、FFA,残留メタノール、BDFブレンド比率も測定可能です。ハンディ端末で、製造現場等どこでも持ち歩ける様になっています。製品は2008年に発表されたもので、かなり古い製品です。
 
この製品、国内でもBDF製品の輸入業者が輸入していますので、ご存知の方も居られると思いますが、国内価格は、約2倍程度(?)すると思います。難点は1回あたりの測定部品代が高いことではないでしょうか?(25~30$)。
 
 
 
3. Bonanza Mini-Scan
価格は、5995$(48万円です。
極く最近発売された新分析器具で、全グリセリンの他、酸価、及びFFAの定量分析が器具類が総て、上記の価格に含まれています(各10回分の器具、試薬)。
YuTube(英語版)の動画もあります。FFAの動画ですが、グリセリン分析もできます。
 
グリセリンの分析は、同様に10分程掛かりますが、酵素反応を利用したもので、高精度です。
この器具は、1.SafTestの開発者が、別会社で過去の経験に基づき開発したもので、簡単に分析できる様に、使い捨て定量ピペットなど、総て揃っています(下記参照)。1回あたりの分析は12.5$(1000円)です。分析材料試薬器具費用は、1.SafTestに比べると、総てキット化、簡略化されている分、多少割高です。最近、高品質BDFを要望されている顧客に、私の簡易分析キットと併せて薦めている分析器具の一つです。両者を組み合わせれば、反応工程(簡易分析)と製品分析(MiniScan)とで、ほぼ完璧です。反応開始前の酸価(FFA)分析も簡単に可能ですので、滴定分析が苦手、面倒と言う方は、酸価(FFA)分析も可能です。
 
 
4.pHLip Test
現地価格は1回当たり(1ビン)、4.99$(400円)と安価です。他に、何も器具はいりません。
 
既に試薬が入った状態ですので、BDFを注ぐだけです。試薬とBDFの界面が銀色のミラー(鏡状)になるか否かと色の変化で判断します。
但し、この分析は、簡易分析器具での定性分析で、定量分析はできません。
また、上記の簡易転化率キットは、反応中、或いは製品BDFに関わらず常時分析できますが、この製品は、原則BDF製品のみに使います。
過去に使っていましたので、本Blogでも既に、紹介済みです。
定性分析できる項目は、下記の総てで、全グリセリンも、ある程度分析ができます。
  • Catalyst (触媒)
  • Glycerins (グリセリン
  • Soaps (石鹸)
  • Acids (酸、FFA)
  • Aged (oxidized) fuel(劣化)
 
 
類似品も発売されています。
AAA Chemicals社のBiodiesel QC Quick Test Kit と言う製品で、5回分で7.99$(1回160円弱)から、注文量と伴に安くなり100回分で99.99$(8000円弱)ですので、1回当たり、1ドル(80円)もしない安さです。
詳細は、使用経験も無いので、不明ですが、pHlip test と類似です。
 
この様に、何れの製品も安価に、BDFの簡易テストが可能ですが、送料が高いのが多少課題です
航空便での化学品(爆発危険物)輸送には、規制があり、特別の手続き、輸送が必要となるからです。この為、米国内の輸送では、地上トラック便が使われています(日数掛かるが安価)。
 
 
5.Fleet Glycerin Kit
価格は1回当たり20$(1600円)ですが、酵素反応で10分程度で,色で全グリセリン定量的に分析できます。5回当たりで、100$(8000円)で総てで、特別の器具も不要でしたので、良く使いましたが、現在なぜか発売中止されています。理由は不明です。
 
 
6.SRI Instruments Biodiesel GC
価格は、7890$(50万円)です。
上記グリセリンに加えて、BDF成分も分析できる小型ポータブル型GCです。
ガスクロ(GC)は、汎用高精度の定量分析機具です。当然グリセリド類を分析できます。
更に、各成分毎に分析できます(TGs、DGs、MGs,グリセリン)。
 
通常、GCは、数百万円から1000万円を超えるものもあります。
加えて汎用分析機なので、便利な代わりに、通常は専門のカラム、キャリアーガス、検知器などに加えて、分析の専門性も必要です。
 
下記は、SRI Instruments社の廉価版GCで、BDF用にチュウニングされたGCが下記です。
上記グリセリンに加えて、BDF成分も分析できる小型ポータブルGCです。
日本にも代理店がある様です。
 
 
 7.InfraSpec VFA-IR Spectrometer
Wilks Enterprise Inc. と言う分析計会社の製品で、赤外線分析計です。
 
グリセリンに加えて、FFAやBDFの軽油ブレンド比率、水分等も、高速(1分)で定量分析可能です。
価格は問い合わせが必要ですが、恐らく8000~9000$程度だと思います(65~75万)。
 
 
8.BDF分析サービス
下記のQTA社は、BDF関連の分析サービス会社で、BDF製造者が自己でLab(試験)分析室を持たないで、この会社と通信回線で結んで、赤外分光センサーを使い各グリりセリド、遊離グリセリンを始め各品質項目分析サポート会社です。
 
 
 
 
 
 。。。。。と言うことで、今回はグリセリン量を分析して、逆にBDF量の割合(転化率)を推定する方法を中心に紹介しました。
GCは、グリセリンとBDFも直接分析可能ですが、それなりの専門性が無いと無理ですし、維持費も掛かります。何れにしても、高純度BDFを製造する為には、何らかの分析手段は必要です。
 
上記のどれか一つ、或いは複数の器具を組み合わせれることにより費用を抑えつつ、貴方に合う高品質BDFが常時100%製造できます
 
上記の各種分析法(計)、何かご質問や購入のご希望があれば、当方にご連絡ください。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
 
追伸)
 上記Blog記事は、一般公開情報です。
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