酸化防止剤を使えば、酸化バイオディーゼル(BDF)も再生できるかも!?

バイオディーゼル(BDF)の大きな特徴は、、石油系燃料に比べて環境に優しいという事です。勿論、CO2を出さないことが最大の効果ですが、次に重要な因子は、例え、外部に漏れても、すぐに分解し、最終的にはCO2と水に分解することだと言えます
 
しかし、この特性は、逆に欠点でもあります。
BDFは、軽油に比べ、遥かに酸化しやすい燃料です。この為、BDF燃料には、酸化安定性と言う規格項目があります。米国のASTM規格では、この項目が2006年に追加されています。
この項目の追加により、BDFの酸化安定性は製品規格上からも,皆が守る様に定められています。
 
通常の植物油は、自らも油脂の酸化の進展を抑える酸化防止効果のあるビタミンE(トコフェノール)が含まれています。しかし、このビタミンEは油脂精製工程で、ビタミンEは殆ど破壊されてしまいます。
この様な理由から、BDF製品には、酸化を防止、或いは遅延させるために、新たに酸化防止剤の添加が必要になってきます。
 
殆どの酸化防止剤の成分は、化学合成されたビタミンE類似化合物が使われています。これらの化合物として、ブチル・ハイドロオキシル・トルエン(BHT)、ターシャルブチル・ハイドロキノン(TBHQ),その他BHA,PGなどがある様です。
酸化反応の促進効果のある金属イオンを除去するキレート剤として、クエン酸、リン酸、アミノ酸などが、更に製品には加わっています。
 
次に、商用酸化防止剤を比較したデータを紹介します ( http://www.uiweb.uidaho.edu/bioenergy/Oxidativestability.pdf )。
 
類似記事は最近の記事にもあります。
 
ある米国の大学の調査研究では、次の酸化防止剤を比較検討しています。
a)Baynox Plus(Lanxess)ーーーー日本での利用は、殆どこの独会社の製品で、Baynox。液状もある
b)Ethanox4760E(Albermarle)ー石油、バイオ燃料系の米国有力触媒メーカー。固体BDF触媒も販売 ( http://albemarle.com.cn/Products_and_services/Polymer_solutions/Antioxidants/Fuel/Biodiesel/_Technical_papers/ALB%20Biodiesel%20Solutions%20200607.pdf )
c)Bioextend(Eastman)----米国化学会社の製品。流動点降下剤なども販売( http://www.eastman.com/Literature_Center/P/P288.pdf )
d)BF320(Kemin)------詳細は不明( http://www.kemin.com/about/expertise/biodiesel-antioxidants )
 
これらの添加量は、標準の200ppm、或いは500ppmを添加し比較調査をしました。200ppmでは規格に合致しない製品もあったので、500ppmも併せて調査とのことです。
 
製造間際のBDFでは面白みも無いので、興味あるのは2年間も放置してあった劣化BDFについても報告されています。既に酸化が進んでいると思われ、その尺度のAV(Acid Value)も報告されています。
 
RME(レープシード菜種のエチルエステル)AV=1.22,Vis。=6.18cP
PME(パーム油メチルエステル)       AV=1.22,Vis=4.66
TME(牛脂タロー・メチルエステル)    AV=0.98、Vis=4.48
MME(マスタード油メチールエステル)  AV=1.25、Vis=5.15
上記の粘度(Vis.)値は、何れも問題ないのですが、ASTM規格のAV値の上限は0.5を何れも上回っています。4種のBDFの内、3種のBDFのAV値が特に高い様です。
予想はつくことですが、飽和脂肪酸濃度の高いBDFは、酸化し難い傾向にあります。
 
テスト結果です。
テストはASTM規格に規定されているランチマット法(Ranchimat)で行った結果です。
BDFを110℃に上昇させてASTM規格では3時間以上安定に、EN規格では6時間以上安定にある必要が有ります。
 
先ずは、上記の4種の製造間際の新BDFでは、上記4種類のの何れの酸化防止剤でもASTM,EN規格を、200ppm添加で満たしていますが、MMEはEN規格を満たしていません(現実には、MMEは日本では使うことはありません)。
次に500ppmの増量添加例では、総てのASTM規格を満たしていますが、より厳しいEN規格をやはりMMEは満たせていません。
 
添加剤別では、200ppmでは、添加剤b)が最も効果があり、CME(菜種メチルエステル)で8.6時間、CEE(菜種エチルエステル)でも同じ時間です。SME(大豆メチルエステル)では、10時間と言う好結果でした。
同様に、500ppm添加では、CME10.4、CEE12.0, SME9.0程度の結果です。
添加量が増すと何れもBDFも酸化安定性は向上しています。
特に、顕著な効果を表したのが、菜種CME,CEE、大豆SMEで、11~14時間となっています。
添加剤別では、これらのBDFで改善効果の高い製品は、b)、及びC)で、d)とa)は200ppmでも500ppmでも、あまり芳しくありません。
特に、日本で慣れ親しんだa)noBaynox Plusは最も添加効果が無い様です。
 
次に、2年間放置してあった前記のBDF製品に対する4種の酸化防止剤の添加結果です。
 
200ppmの添加例でも、REEを除いたPME〔Baynox以外は規格以上),TME(Kemin),MME(Ethanox,Kemin)では、いずれかの添加剤添加によりASTM規格は満たすことが出来ています〔前期括弧の中)。
再度、Baynoxは総てのBDFでASTM規格をみたせません。
次にEN規格は、何れの酸化防止剤を使っても、200ppmの添加では規格以下でした(3時間+で、EN規格の6時間は未達)。
次に、500ppmに添加量を増やした場合です。
何れのBDFも添加剤の増加で、酸化安定性は改善していますが、
特に、Ethanoxは、REEで6.5時間、MMEで6.7時間とEN規格を満たしています。更に、PMEでも、5.2時間程度に向上しています。
ASTM規格では、PME,MMEは、Baynoxを除いた3種の添加剤が満たしていますが、ここでもBaynoxPlusは何れのBDFでも、ASTM規格すら満たせていません。
また500ppmでも、200ppmでもBaynoxPlusは殆ど同じで、何ら添加剤増量の効果も無い様です。
 
興味ある新たな発見は、この様に古い2年も放置してある規格外のBDFでも、添加剤の種類と量を選べば、何れの規格も満たすBDFに蘇生したり、改善効果があることだと思います。
 
もう1点は、エタノールエステルの方が、メタノールエステルに比べ、酸化安定性は新BDGでも、放置BDFでも効果がある様です。理由はメタノールエタノールの分子量の差だと思われます。
 
次はコスト比較です。
ポンド(450g)当たりのコストですが、最も高価なのはEastman製Bioextendedで15.82$、最も安価なのは、Baynox Plusで4.30$です。 
平均の酸化安定剤のコストは1ガロン(3.785L)当たり1セント(0.83円)と安価です。
酸化防止の為の保険料として、必ず酸化防止剤は使う様にしましょう。
何かBaynox Plusは悪者扱いされてしまいましたが安価ですし、効果が無いわけではありませんので、。。。
 
因みに、私は1000ppm程度使っています
 
今後、劣悪な原料からBDFを製造する場合には、
安価防止剤の製品選択にも目を向ける必要があるかもしれません
また、以前製造したBDFを使わずに残っている例もあると思います。
この様な場合でも、諦めずに
酸化防止剤を添加すれば、一旦は酸化したBDFも蘇って、再度使えるBDFとなり得ることが新たに解ってきた!
ことは、皆さんも興味があると思います。
最近、ある方から、類似の事を聞かれたこともあり、この記事をBlogに書かせて頂いた経緯があります。
単純に添加するだけでなく、少しは今後研究したいと思います。
お互いに。。。。。
他に国産や海外の類似製品もあると思いますので。。
 
今回は、酸化(安定)防止剤製品と新旧各種BDFに対する比較・効果でした。
 
では、また。。。。。。。。
Joe.H
 
 
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