Biodiesel(BDF)と流体力学とは、何か関係あり??それって必用??

BDF装置の設計でも、購入でも或いは、それを使っての製造時でも、
流体力学は多いに関係があります
(今回紹介のサワリ程度で充分かもしれませんが、。。。)!
 
何気なく製造されているバイオディーゼル(BDF)燃料の製造設備
今回は、大げさに言うと、一寸流体力学(Fluid Dynamics)の理論から考えて見ましょう !
 
現在使われている装置を解析する場合、或いは新規に購入(または、自作)されようとする場合、或いは現在使用中のBDF装置を大型のものに買い換えたり(作り変えたり)する場合も、
流体力学の基礎を知っているか、いないかで大きな差があり、
無駄な投資をしなくて良いかも知れませんので。。。
或いは、想定外の転化率の低さや反応時間の長さに、こんなはずでは ??
その時になって、あわてないで済みますので。。。。
 
今回は、流体力学の基礎の基礎のレイノールズ数(Re:Reynolds Numberについて紹介です。
 
理系大学で、機械工学や化学工学を専攻された人等、或いは、これを学ばれた方は、当然スキップしてください。
 
ただ、日頃BDF関係の記事やBlog,或いはBDF装置メーカーなどから、BDF装置や転化率など比較データ、紹介は多々あっても、
上記Re数などを基にした議論は,ほぼ皆無だからです!!
 
これではエンジニアリング(Engineering)では無く、感じニアリングと言えます
 
前置きはこのくらいにして、ではRe数とは?? から始めます。
 
Re数は、19世紀後半に、Reynolds(英国)によって提唱された無次元数で、
流体の慣性力と粘性力との比率として定義されています。
本来は、難しい流体力学のNavier-Stokesの式から導かれるのですが、ここでは割愛します。
 
無次元数とは、時間とか、重さや早さなどと異なり、単位を持たない数値と言う意味で、一般に最も良く知られている無次元数はマッハ数かも知れません。
これは物体(ジェット機やロケット、弾丸など)の速度を分子として、音速を分母とした無次元数で、マッハ数は1以上の音速を超えると、衝撃波などいろいろ問題が発生することは良く知られています。
 
 
先ずは、身近な配管内のRe数を見てみましょう!
 
液体(流体)は、ポンプなどによって加えられた慣性力で配管内を流れようとします。
と同時に配管内側の壁に付着し、その周りの流体を留ませうとする粘性力があります。
この両者のせめぎ合いの比がRe数です。
流体であれは、気体でも、液体でも成り立ちます。
この数値が大きくなる程、慣性力が強いと言うことで、この程度により、層流、遷移域、乱流域と変化します。
一般的な管内流であれば、Re数1200以下は層流域(流体が交じり合わない状態)、2300以上を乱流域(流体混合が起きている状態)を示し、遷移域はその中間域といえます。
 
Re数は式で表すと、
Re=(dxVxD)/(Vis)=VxD/(dv)=QxD/(Vis)/A      (1)
などと言う式になります。
ここで、
d:密度(Kg/m3)
V:平均流速(m/秒)、管内なら管内流速
D:長さ(m)、管内なら内径
Vis:動粘度(Kg/(mx秒)
dv:粘度(=(vis)/d )((m2/秒)
Q:流量(m3/秒)
A:断面積(m2)
となります。
上記の式をみて解ることは、同じ管内径(D)、同じ流体速度(V)でも、粘度が違う液体(例えば、廃油とBDF)では、Re数は大幅に異なり、流れの状況も異なると言うことになります。
 
同じ流れの状況にするには、Re数を同じにする必用があります。
廃油(WVO)の粘度は、BDFの粘度の5~6倍は有りますので、廃油の場合は、管内流速を6倍に増やす必用があります(同じ流速なら、Re数は6倍)。
 
このRe数は管内流だけでなく、いろいろな場合に拡張できます。
 
次の紹介するのは、BDF反応器の攪拌器と攪拌羽根と攪拌状況ついてです。
この場合は、式は多少変わりますが、同じRe数です。
Re=dxNxDxD/(Vis)                        (2)
となります。
但し、攪拌器の場合は、
N:毎秒の回転数(回/毎秒)
D:回転翼直径(m)
であり、攪拌の乱流域は上記の定義式では、10000以上となります。
この式からもいろいろなことが解ります。
 
1)例えば、BDF反応の1段反応時と2段反応時では、或いは、1段反応の開始時と終了時とでは、同一の装置で同一の回転数で攪拌していても、攪拌度(Re)は異なると言うことが解ると思います(ですから、Re数だけを考えても、回転数は徐々に下げられると言うことです)。
 
例えば、2段反応の終了時のBDFの粘度を1とすると、1段反応の終了時、或いは2段反応の開始時の粘度は1.5倍、1段反応の開始時のWVOは6倍近くもあります。
従って、BDF反応の開始から終了まで、Re数は1~6倍も変わってしまうことを意味しています。
これに、メタノールが加わり(消費され)、混合粘度も変わり、更に、WVO/BDF生成比が変わると、粘度ばかりでなく溶解度も、時々刻々変わってきますので、同一反応器でも、更に複雑になります。
 
2)次は、同一メーカーのBDF反応器(例えば、100L、400L)、或いは、能力不足で、大型の装置に変えようとする場合等を考えて見ましょう!
 
これも、Re数を理解すると、その良し悪しが判断できたり、両者の違いと転化率の差異が無いか、あるか等も解ってきます。
 
例えば、100Lバッチから4倍の400Lにする場合を比較して見ましょう。
反応容器容量は、当然4倍になります。
この場合、容量は高さと内径の2乗に3.141/4となりますので、これを均一に拡大すると仮定した場合は、それぞれが1.5874倍大きくなります。高さも内径もです。
実際は不可能に近いのでですが、回転数も同様に上昇できたとします。
そして攪拌羽根の直径や高さ、ジャバラ等の有無、大きさ等もです(幾何学的相似)。
これで、一見良さそうな??スケールアップです。
 
では、2式を見てみましょう。
この場合(400L)の場合は、100Lの場合の4倍のRe数となってしまいます。
Re数の上昇と伴に、攪拌は上昇して好ましいかも知れませんが、攪拌エネルギーは莫大に増加し、費用も増え現実的ではありません。
では、回転数(N)は変えずに、攪拌羽根サイズ(D)だけを1.5874倍にしたとすると、それでも2.52倍のRe数となってしまいます。この場合も、前者と同様の結果です。
 
100Lのバッチでうまく反応が進んでいるなら、現実には他の要素も考慮する必要がありますが、Re数を、まず同じにするのが原則です。
つまり、2式の
NxDxD=一定                           (3)
です。
 
反応器羽根径を、仮に1.5874倍とするなら、回転数は?? 
 
答えは、2.52分の1とすることになります。仮に、100Lバッチで、毎分700回転(毎秒11.67回)であれば、400Lの1.5874倍の攪拌羽根の毎分の回転数(N)は、
700x1x1=Nx1.5874x1.5874             (4)
からNが求められ、毎分277.8回の回転数となります。
要は、3式が一定となる様にすべきなのです。
 
このRe数は、この他にも、Dry-Process( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/5379536.html )の容器径と流速との関係の設計式,或いは、Static-Mixer( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/9827144.html )の設計式などにも使えます。
 
又、配管やバルブなどの圧力損失などにも使えます。
 
今回は、流体力学の基礎のレイノールズ(Re)数の紹介と、BDF反応器の設計(スケールアップ)の基礎を紹介させていただきました。
 
皆さんも、他人のBDF装置とご自分の装置とを比較するときに、単に容量や転化率の比較だけでなく、
Re数の比較をすれば、少しは汎用性のある比較ができるはずですから、。。。
是非、今後は実践しましょう
BDF装置メーカーで、100L,200L,400Lなどと、類似の形でバッチ・サイズの異なる装置を販売していることが多いと思いますが、Re数でどうなっているか??比較するのも面白いと思います。
 
今回は、特に説明しなかったのですが、粘度は温度によって多いに変わりますし、油種、或いはWVO/BDF比(混合割合、転化率進行度、メタノール比)等によっても変わりますが、今回紹介のRe数計算は、そのまま使えます。
 
尚、現実のスケールアップでは、Re数一定で全て解決とは行きません。特に、スケールアップ比が10~100倍と言う大きい場合は尚更です。
その他に、単位容積当たりの撹拌動力一定(ND**2/3=一定、但し、**2/3は3分の2乗の意味)などの考え方もあります。その為、一般にはパイロットプラントなどを経て、徐々にスケールアップされています。
 
今回、無次元数として、Re数を紹介しましたが、スケールアップや種々の化学工学現象(電熱、物質移動)の比較関連では、無次元数を多用しています。
無次元化=化学工学とも言えるくらいです。
この無次元化は、上記の管内流は2次元、バッチ反応は3次元現象です。
1次元現象から、2次元、3次元と順に次元数の増加と共に、スケールアップ技術は複雑化し、計算どうりには行かなくなります。
連続プロセス方式 http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/9827144.html )は、言わば2次元のスケールアップ技術であり、バッチ方式の3次元に比べれば、遥かに簡単になります。
 
以下、蛇足です。
この無次元化の考えを取り入れる事は、エンジニアリング分野だけでなく(比重なども、無次元数)、一般生活でも多いに役立ちます。
簡単な例では、男性(A)と女性(B)の背の高さを考えて見ましょう。
男性のAさんの身長は175cm、女性のBさんの身長が160cmであったとして、
男女の平均身長がそれぞれ、172cm、154cmだったとすると、
身長比=身長/平均身長
と定義すると、
Aさんは=175/172=1.017、Bさんは=160/154=1.039
となり、女性のBさんの方が、相対的に無次元化された身長比は高いことになります。
 
同様に、男女間の給与や、外国と日本での収入比較なども、総て無次元化した方が、より一般化できます。上記の例は、極く簡単な例ですが、無次元化はさらに複雑にすることも可能です。
 
では、また。。。。
 
Joe.H
 
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