続)冬季処理が必要のない程、優れたバイオディーゼル(BDF)原料油脂は無いのでしょうか??

 以前に、下記記事で冬季処理が必要ないほど、低温特性の優れたバイオディーゼル(BDF)原料油として、コリアンダー油、ひまし油、大麻などを紹介しました。
 
いずれも冬季特性の優れた菜種油などより優れていて、言わばスーパー菜種油と言えます( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/8685514.html )。
 
今回は、その続編です。
世の中には、いろいろ有るものです。
前回紹介した植物は、我々の近辺で直接生長しているのを、あまり見る機会はありませんが、今回の植物は、あちこちで見られる植物です。
 
それは、英語名で pennycress と言われているものです。
日本語ではナズナ、或いはペンペン草です。
殆どの方がご存知だと思います。
 
春の七草として、食用にもなりますが、
どちらかと言うとペンペン草も生えないとも例えとして言われるくらいで、
余りよいイメージはない1年草の雑草です。
通常の作物が育たない様な荒地や道路際など何処でも育ち、場所を選びません。
 
ナズナは、油菜(アブラナ)科の植物と言うことで、菜種、JALなどジェット燃料のバイオディーゼル燃料ブレンド剤として使われたCamelina Sativa (日本名;ナカミノアマナズナ)、及びマスタードブロッコリー/キャベツなども同じ仲間の植物です。                
写真は、ナズナの種子です。
我が家でも、畑や庭に沢山生えて困っていた雑草でしたが、今後は少し見直そうかな??
とも思います。
 
このナズナは、米国農務省研究機関の公表によれば、バイオディーゼル原料とし特に有望と言う研究成果が、一昨日(11月5日付)公表されました。
 
ナズナバイオディーゼル(BDF)関連のサイトも、既にあります( http://www.pennycressbiodiesel.com/ )
 
Camelinaはやや種子形が丸く、平らなのがナズナで、花や草の姿は見分けがつかないくらい類似してます。
 
このナズナが優れた主な点は:
 
1)アルカリ触媒法で製造したBDFの曇り点(CP)はー10℃、目詰り点(CFPP)はー17℃、流動点(PP)はー18℃であったと言う報告です。菜種などに比べて冬季特性は、可也優れている様です。
加えて、他の種子製BDFに比べ、セタン価(CN)が59.8もあり、かつ粘度、酸化安定性は5.24mm2/s(40℃)、4.4hr(@110℃)であると言う報告です。
 
通常、不飽和脂肪酸の割合が増えるとともに、セタン価(CN)は減少するのですが、下記のテーブルに有る様に、特殊なErucic脂肪酸(22:1Δ13)のメチール・エステルのセタン価は74.2が高濃度(36.9%)に含まれている為などだと思います。
 
因みに、CN=74.2は、常温固化する飽和脂肪酸パルミトレイン酸(16:0)メチール・エステルの値と同じです。また、大豆油、菜種BDFのセタン価は45~55程度です(ASTM規格=47以上)。
 
但し、このままの無処理の生BDFでは、極寒仕様とまでは言えない気がします。軽く冬季処理も必要だと思います。
 
 
2)大豆などで問題となる食用か、燃料かと言う取り合いの問題が発生しない。
また、冬作として、大豆やコーンなどの裏作として耕作できる(秋蒔きし、春収穫する、大豆などとの2毛作)。
 
3)米国ないで自生していて、耕作した場合も、コンバインなどの機械化にも適していて、問題無い。現在の農業インフラが使える。また、耕作地を選ばず、肥料なども少なくて良いなど。。。優れた点が多い様です。 
 
4)既に、大規模耕作も始まっているし、製油所もできている様です。
 
5)種子のオイル収量は36%(下記データでは35%)もあると、またその脂肪酸には、Eryucic Acidga38.1%(下記のデータの太字では、36.9%)も含まれている。
 
別文献からの脂肪酸構成(Pennycress Fatty Acid Composition)は下記と言うことです(%)。飽和脂肪酸は2.4%(パルミトレイン酸16:0)だけで、ステアリン酸(18:0)が含まれていないことです。
因みに、菜種は7~8%、大豆油は14~5%含まれていますので、冬季この飽和脂肪酸濃度に比例して、固まり易いくなります。
16:0      2.4 
18:1Δ9    9.7
18:1Δ11   1.3(Cetane NO.=73.2)

18:2      20.8
18:3      13.8
20:1      9.1
20:2           1.9
22:1Δ13  36.9(Cethan NO.=74.2)

22:2           0.8
24:1           3.2
ナズナは、日本でも雑草として彼方此方に生えている訳ですので、BDFが固まって冬季使えないと言う人は、検討されたらどうでしょうか??
 
冬季特性は菜種より優れているし、栽培も楽だと思います。何せ、雑草ですから。。。。
ただ、種子油の様に、まず使用し,その後でBDFとは行かないのでしょうか??
ナズナ油が食用になるかどうかは不明です、。。。
花は、下記で小さな白い色をしていて、菜種の様に黄色でお花見ということにはなりませんが。。。http://t1.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcSXJ-0kzIV9whWbsT4wax4OpZ8HZ6dUIr4gcAnGqLrnSPzxzTgv
 
何れにしても、米国では、何とかして輸入の石油に頼らず、自国内で生産できるバイオディーゼル(BDF)原料の確保に、脱石油輸入、エネルギー独立政策(Energy Independence Policy)の推進策として躍起の様です。
翻って、我が日本はどうでしょうか???
 
今回は、米国で雑草のナズナが次世代のバイオディーゼル原料として見直されている
と言う話題でした。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
 
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追加)下記の情報(11月18日付)を添付します。
ナズナ(ペンペン草)がBDF原料として、益々注目されているようです。
BDF最大の欠点(冬季固化)の救世主となるかもしれません。海外の動きは早い、既に研究から実用化へ移行フェーズです!!
 
 ペンペン草(pennycress)から採油されたペンペン草油を使って、冬季特性の優れた実大型プラントを、カナダのアルバータ州で建設されようとしています。
詳細は不明ですが、菜種Canola)油とのブレンドマイナス(ー)28℃までOKと言うことです(やや冬季特性が良すぎる感じもしますが、。。)。冬季特性の優れたペンペン草油を菜種油とブレンドすることによって冬季特性の改善が、特にWinterizationなどの処理をしなくても、簡単に、かつ安価に図れると言うことだと思います。
北海道や東北では、せっかくわざわざ菜種を栽培して、その油を(直接か、廃油でも)BDF原料として使っている所が多いと思いますが、殆どは厳寒季使えない状態でいるのではないでしょうか? 
菜種の不適栽培地などや、菜種畑の片隅で、併せてペンペン草を栽培し(黙って世話なしでも生えてくる)、それを採油し、BDFを製造すれば、意外に冬季でも菜種+ぺんぺん草油BDFで、OKとなるかもしれません!!
ペンペン草なら、栽培と言うか、黙っていても生えてきますので、問題ないと思います。関係者は検討されたらどうでしょう!!
仮にぺんぺん草油が食用にでもなれば、更にスゴイことになりますが、。。。食用+BDF原料と2役となります。
うまいか、まずいか不明ですが、少なくとも毒性は無いと思います。何せ、食用の春の七草のナズナの実ですから。。
尚、カナダのアルバータ州と言えば、石油の精製の仕事で、以前何回か行ったことがあるのですが、カナダの石油資源、採掘と精製の本拠地みたいな所で、飛行場の中にも油田が有ったり、更に、次の石油資源と言われているタールサンド原油が砂に混じっている)オイルシェール(岩に油がしみ込んでいる)もほぼ無尽蔵にある?とまで言われている場所です。
この様な環境の中でも、バイディーゼルへの関心の高さには、驚異的です。
翻って我が日本は国内石油(原油)も生産でき無いのに、BDFなど全くの危機感の無さ、。。。残念ながら敢えて言うまでもない状況です。
 
以上