バイオディーゼル,グリセリンに溶けるメタノール、触媒濃度を考察しました!!!

3日ほど前、バイオディーゼル(BDF)の水分溶解度を紹介しました
 
今回は、その続編みたいなものですが、BDF製造者にとっては、最重要です。
 
バイオディーゼル(BDF),グリセリンに対するメタノール、及び触媒の溶解濃度と分配割合を考察しよう!!!
と言うのが話題です。
 
つまり、
メタノールや触媒が、反応生成物のBDFと副生物のグリセリンに、どの程度の割合で溶けているのでしょうか?? 知っていますか??
或いは、定量的に答えられますか??
 
何年も長期にBDFを製造していても、意外に知らてない事ではないでしょうか??
 
BDFに溶けているメタノール量は、メタノール回収をしていれば、回収量からある程度定量的に判るのですが、多くの人が水洗浄法を使っている現状では、メタノールは、排水に溶けて外部に流れてしまうので、まったく判らないのではないでしょうか??
 
前置きは、このくらいにして、今回の話題に移りましょう。
 
次のテーブルは、BDFとグリセリンが混在した状態、或いはグリセリンが沈殿した状態下のメタノール濃度です(By Chiu,2005)。
と言っても、何の事か理解できないと思います。
 
まずメタノールグリセリン:BDFのモル比と温度に注目してください。
例えば、モル比3:1:3、通常のエステル交換反応では、一寸温度が高いのですが、温度75℃のケースを考えて見ましょう(太字の部分)。
この例は、反応が完結した状態の典型的な状況を示しています。ご存知のとうり、油脂:メタノールのモル比1:6(油の分子量により変わるが、大体メタノールの対廃油量で24~5%程度)が、文献などで標準的なエステル交換反応条件ですが、仮に100%転化すれば、BDFとグリセリンが1:3モル比で生成されます。反応では、メタノールは3モル消費されるだけで、反応促進と逆反応を防止する為に、3モルの余剰分は最終的に残ります。これに相当します。
モル比6:1:3は、同様に反応時にメタノールを35~40%(Vol)高添加する場合です。
 
Table1: Distribution of Methanol between Biodiesel and Glycerin
                                           Methanol, wt.%
Temp(℃)        Molar Ratio(*)    Glycerin           Biodiesel             K
25           3:1:3         37.3        3.41        10.94
             6:1:3                  54.2                   6.38                  8.5
75                       3:1:3               35.9              4.79              7.49
                            6:1:3                  41.7                   8.60                  4.8
60                    3:1:32              36.32             4.38             8.52 )

* モル比: メタノール:グリセリン:BDF
Kは分配係数(Distribution Coefficient、日本語は正しいか不明)で下記の式となります。
GN: グリセリン中のメタノール濃度(Wt、%)
BD: BDF中のメタノール濃度(Wt.%)
とすると、     GN = K x BD               (1)
が成立します。
Kが1なら、GN,BDは等分に、1より大なら、GN側に、1より小ならBD側により多く偏在することになります。上記の例であれば、  
7.5 x 4.79 = 35.9
となる訳で、K=7.5から、グリセリン(GN)側に多く(7.5倍の濃度で)偏在していることになります。
 
一方、テーブルから判る様に、Kは温度と伴に減少します。
直線近似式であれば、温度をT(℃)とすると、
          K = 12.665 - 0.069xT        (2)
となりますので、温度が60℃なら、K=8.525と推定できます。
 
同様に、BDF中のメタノールは、60℃では、下記の式から、BD=4.38(Wt.%)となります。
          BD= 2.72 + 0.0276xT    (3)
 
 
また、60℃のグリセリン(GN)内メタノール濃度は、次式から、GN=36.32(Wt.%) となります。
          GN= 38ー 0.028xT         (5)
 
よって、反応温度60℃で反応が1段反応であれ、2段反応であれ、転化率100%での、
BDF,グリセリン内のメタノール濃度は、それぞれ36.32、4.38 (Wt.%)と推定できます。
 
メタノール濃度は、グリセリン内の方が遥かに高く、K値から7.49(@75℃)~8.53倍(@60℃)の重量濃度だと言えます。
 
同様に、温度が低下し常温近くの25℃になると、メタノール濃度は、夫々37.3、3.41(Wt.%)でとなり、メタノール濃度は、K=10.9倍となり、より偏在して来ます。
 
纏めると、反応終了時のBDF中には、4.38%(Wt.)程度のメタノールが溶解している。
100Lの廃油から、理論的には、約100L+のBDFが出来るので、BDF密度を0.89とすると、BDF重量は89kgであり、メタノール量は89x0.0438=3.9Kg弱が溶けている。
メタノール密度を0.792とすると、4.9Lぐらいは溶けていて、回収可能量の上限であると推定できます。
 
同様に、グリセリン内のメタノール量も、上記データ、他から計算できますので、興味ある方は直接計算してください。
但し、メタノール物質収支から、100Lの廃油に対して、仮に25L(6モル)投入したとすると、12.5Lは消費され、余剰分は12.5Lとなります。
BDF中に上記から4.9L存在するなら、グリセリン中には、残7.6L存在するはずです(操作ロスや蒸発を無視すれば)。
従って、余剰のメタノール量は、BDF:グリセリン間で4:6の割合で溶け込んでいる計算です。同様に、25度まで低下後なら、3kg、3.8L弱がBDF側に、グリセリン側8.7L,分割量比3:7となります。
 
生産コスト削減からも、或いは環境保全、ECOからも、メタノール回収を行うことが必要であり、商業的規模は当然ですが、個人ベースでも回収されている場合が海外は多いのですが、我が日本では???BDF側のメタノール回収でさえも、まだ極一部しか進んでいない状況だと思います。
 
実際は、多少はメタノールの一部は蒸発してしまうので、上記の値は上限値です。
 
私は、BDF反応(1:4.8モル比、20Lを使用、反応残7.5L程度)では、残メタノールを100%回収していないことも原因ですが、2段反応時の副生グリセリン側のメタノールを含め3.5~4.0程度です(1段反応のグリセリンメタノールは非回収、間接的に一部グリセリン前処理で、回収BDF溶解メタノール分を回収)。
余談ですが、100Lバッチ時は、新メタノール16.5~17L+回収分3~3.5L、計20Lを使っています。
回収目的は、環境保全、ECOで、コスト削減ではありませんが、それでもメタノール価格は、1L当り85円程度ですので、300~340円ぐらいのコスト削減効果です。
 
 
同様に、下記にアルカリ触媒(KOH)のデータもあります。
メタノールに代わって、アルカリ触媒のKOHになっているだけで、テーブル構成は殆ど同じです。
Distribution of Basic Catalyst among Biodiesel/Glycerin with Different Amounts of Methanol
Temp(℃)  Solute Solvent*   Glycerin      Biodiesel           K**
25     1 wt.% KOH    0:1:3      8.60       0.088       97.6
                3:1:3     5.79     
  0.061       94.5
                6:1:3     4.29       0.056       77.1
75     1 wt.% KOH  0:1:3     8.11        0.172          47.2
                3:1:3    5.57        0.125      44.5
                6:1:3     4.13        0.119       34.7
(60                       3:1:3    5.64        0.106       59.5  )
 * ) Solvent molar Ratio :  メタノールグリセリン:BDF
 **)    Glycerin =  K  x  Biodiesel
 
アルカリ触媒も、グリセリン側に殆ど溶けて、例えば75度C、モル比3:1:3の場合は、BDF中では、0.125%であるのに対し、グリセリン内には5.57(Wt.%)も溶ける結果です。
上記データから補間すると、
60℃では、、アルカリ触媒KOHは、BDFには5.64%、グリセリンには、0.106%、K値は59.5となります。
分配比で言えば、45倍(@75℃)~53倍(@60℃)の濃度がBDFではなく、
グリセリン側に溶けている計算です。
 
従って、例えば、2段反応の1段目の反応終了後グリセリンを抜く必要があり、
2段目反応時に、BDF中の触媒量が不足してきます。そこで、。。。
或いは、反応時の攪拌状況により、アルカリ触媒がグリセリン側に偏り、BDF、メタノール側に触媒が不足する場合も生じます。
反応を進展させるためには、触媒全量がBDF,メタノール側に留まる(K値=0)のが理想ですのが、上記は物理化学現象ですので、。。。。。。
そこで、対策は??
 
また、上記テーブルには、
反応混合液から完全にメタノールだけをを回収除去した場合(Solvent0:1:3)の触媒のグリセリンとBDF中の分配割合も出ていて、常温近くの25度では、グリセリン内に8.60%、メタノールには、0.088%で、分配比97.6倍となっています。
 
 
 
今回は堅苦しい話題でしたが、BDF生産にとって基本的なデータです。
内容を充分吟味し、改善すれば、
超短時間反応、高転化率のBDFが製造できるはずです
 
今回のデータは、他Blogにも紹介されていないし、メーカーに聞いても返事がこないと思いますので。。。。
 ご参考までに。。。。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
追伸)
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