バイオディーゼル,グリセリンに溶けるメタノール、触媒濃度を考察しました!!!
3日ほど前、バイオディーゼル(BDF)の水分溶解度を紹介しました
今回は、その続編みたいなものですが、BDF製造者にとっては、最重要です。
と言うのが話題です。
つまり、
或いは、定量的に答えられますか??
何年も長期にBDFを製造していても、意外に知らてない事ではないでしょうか??
BDFに溶けているメタノール量は、メタノール回収をしていれば、回収量からある程度定量的に判るのですが、多くの人が水洗浄法を使っている現状では、メタノールは、排水に溶けて外部に流れてしまうので、まったく判らないのではないでしょうか??
前置きは、このくらいにして、今回の話題に移りましょう。
と言っても、何の事か理解できないと思います。
例えば、モル比3:1:3、通常のエステル交換反応では、一寸温度が高いのですが、温度75℃のケースを考えて見ましょう(太字の部分)。
この例は、反応が完結した状態の典型的な状況を示しています。ご存知のとうり、油脂:メタノールのモル比1:6(油の分子量により変わるが、大体メタノールの対廃油量で24~5%程度)が、文献などで標準的なエステル交換反応条件ですが、仮に100%転化すれば、BDFとグリセリンが1:3モル比で生成されます。反応では、メタノールは3モル消費されるだけで、反応促進と逆反応を防止する為に、3モルの余剰分は最終的に残ります。これに相当します。
モル比6:1:3は、同様に反応時にメタノールを35~40%(Vol)高添加する場合です。
Table1: Distribution of Methanol between Biodiesel and Glycerin
Methanol, wt.%
Temp(℃) Molar Ratio(*) Glycerin Biodiesel K
Methanol, wt.%
Temp(℃) Molar Ratio(*) Glycerin Biodiesel K
25 3:1:3 37.3 3.41 10.94
6:1:3 54.2 6.38 8.5
6:1:3 54.2 6.38 8.5
75 3:1:3 35.9 4.79 7.49
6:1:3 41.7 8.60 4.8
6:1:3 41.7 8.60 4.8
Kは分配係数(Distribution Coefficient、日本語は正しいか不明)で下記の式となります。
BD: BDF中のメタノール濃度(Wt.%)
とすると、 GN = K x BD (1)
が成立します。
Kが1なら、GN,BDは等分に、1より大なら、GN側に、1より小ならBD側により多く偏在することになります。上記の例であれば、
7.5 x 4.79 = 35.9
となる訳で、K=7.5から、グリセリン(GN)側に多く(7.5倍の濃度で)偏在していることになります。
一方、テーブルから判る様に、Kは温度と伴に減少します。
直線近似式であれば、温度をT(℃)とすると、
K = 12.665 - 0.069xT (2)
となりますので、温度が60℃なら、K=8.525と推定できます。
同様に、BDF中のメタノールは、60℃では、下記の式から、BD=4.38(Wt.%)となります。
BD= 2.72 + 0.0276xT (3)
GN= 38ー 0.028xT (5)
よって、反応温度60℃で反応が1段反応であれ、2段反応であれ、転化率100%での、
纏めると、反応終了時のBDF中には、4.38%(Wt.)程度のメタノールが溶解している。
100Lの廃油から、理論的には、約100L+のBDFが出来るので、BDF密度を0.89とすると、BDF重量は89kgであり、メタノール量は89x0.0438=3.9Kg弱が溶けている。
メタノール密度を0.792とすると、4.9Lぐらいは溶けていて、回収可能量の上限であると推定できます。
BDF中に上記から4.9L存在するなら、グリセリン中には、残7.6L存在するはずです(操作ロスや蒸発を無視すれば)。
生産コスト削減からも、或いは環境保全、ECOからも、メタノール回収を行うことが必要であり、商業的規模は当然ですが、個人ベースでも回収されている場合が海外は多いのですが、我が日本では???BDF側のメタノール回収でさえも、まだ極一部しか進んでいない状況だと思います。
実際は、多少はメタノールの一部は蒸発してしまうので、上記の値は上限値です。
私は、BDF反応(1:4.8モル比、20Lを使用、反応残7.5L程度)では、残メタノールを100%回収していないことも原因ですが、2段反応時の副生グリセリン側のメタノールを含め3.5~4.0程度です(1段反応のグリセリン側メタノールは非回収、間接的に一部グリセリン前処理で、回収BDF溶解メタノール分を回収)。
余談ですが、100Lバッチ時は、新メタノール16.5~17L+回収分3~3.5L、計20Lを使っています。
同様に、下記にアルカリ触媒(KOH)のデータもあります。
メタノールに代わって、アルカリ触媒のKOHになっているだけで、テーブル構成は殆ど同じです。
Distribution of Basic Catalyst among Biodiesel/Glycerin with Different Amounts of Methanol
Temp(℃) Solute Solvent* Glycerin Biodiesel K**
25 1 wt.% KOH 0:1:3 8.60 0.088 97.6
3:1:3 5.79 0.061 94.5
6:1:3 4.29 0.056 77.1
75 1 wt.% KOH 0:1:3 8.11 0.172 47.2
3:1:3 5.57 0.125 44.5
6:1:3 4.13 0.119 34.7
Temp(℃) Solute Solvent* Glycerin Biodiesel K**
25 1 wt.% KOH 0:1:3 8.60 0.088 97.6
3:1:3 5.79 0.061 94.5
6:1:3 4.29 0.056 77.1
75 1 wt.% KOH 0:1:3 8.11 0.172 47.2
3:1:3 5.57 0.125 44.5
6:1:3 4.13 0.119 34.7
(60 3:1:3 5.64 0.106 59.5 )
**) Glycerin = K x Biodiesel
上記データから補間すると、
60℃では、、アルカリ触媒KOHは、BDFには5.64%、グリセリンには、0.106%、K値は59.5となります。
分配比で言えば、45倍(@75℃)~53倍(@60℃)の濃度がBDFではなく、
グリセリン側に溶けている計算です。
従って、例えば、2段反応の1段目の反応終了後グリセリンを抜く必要があり、
2段目反応時に、BDF中の触媒量が不足してきます。そこで、。。。
反応を進展させるためには、触媒全量がBDF,メタノール側に留まる(K値=0)のが理想ですのが、上記は物理化学現象ですので、。。。。。。
そこで、対策は??
また、上記テーブルには、
反応混合液から完全にメタノールだけをを回収除去した場合(Solvent0:1:3)の触媒のグリセリンとBDF中の分配割合も出ていて、常温近くの25度では、グリセリン内に8.60%、メタノールには、0.088%で、分配比97.6倍となっています。
今回は堅苦しい話題でしたが、BDF生産にとって基本的なデータです。
内容を充分吟味し、改善すれば、
超短時間反応、高転化率のBDFが製造できるはずです
。

今回のデータは、他Blogにも紹介されていないし、メーカーに聞いても返事がこないと思いますので。。。。
ご参考までに。。。。
では、また。。。。
Joe.H
追伸)
上記Blog記事は、一般公開情報です。
何かコメント、ご意見、及び質問等具体的な相談のある方は、
下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
非公開情報など内容によっては、お答えできない場合や条件付となりますが、
可能な限り対応させて頂きますので。。。。
尚、お問い合わせの前、下記を必ず参照ください。
以上