廃プラ、廃タイヤ等の廃棄物原料を使う油化装置の導入、その利用法と限界について、考えよう!!!!

今回は、国内でも10社、15社、或いはそれ以上ある,あった???
。。と思われる棄物プラ原料の油化装置について、その一般的な概略手法紹介と利用法、或いは限界を紹介します。
 
最近、軽油重油燃料の高騰もあり、安価な燃料(分解油,Pyrplysis-Oil)の製造法つと考えられている様です。
 
廃プラスティク等は、総て石油系原料です。
バイオマス原料ではなく、地球の温暖化、CO2発生量削減とはいきません。しかし、簡単には自然分解しないプラステックス類公害(陸上、海中、他)も顕著で巣。
従って、環境破壊の防止等には、多いに貢献できます。
 
1.先ず、油化装置ですが、所謂、多くは単に熱を原料に加え、酸素(空気)を遮断し加熱し、熱分解を行う熱分解法(Pyrolysis  or Cracking)装置です
高分子化合物であるプラスティク類原料を高熱で、簡単により低分子化合物(ガス、油)に熱分解します。
 
原料により、熱分解温度は異なりますが、一応、ガソリン、灯油、軽油重油沸点の油成分が主に得られる熱分解温度は、400~500℃程度の高温処理です。
装置は、ほぼ常圧(低圧)法が主ですが、高圧法もあります。
装置は、装置能力により、小型は主に回分(バッチ)法が、大型は連続法です。
 
原料は殆ど、廃プラスティク原料(PE、PP、PS等)を使います。
 
下記写真は装置の1例です。
国産品ではなく、海外製品の例です。機能は国産品も大差ないと思います。
民間ばかりでなく、一部,地方公共団体でも利用されています。
 
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プラスティク類の油化が多い理由は簡単です。
元々石油、それもガソリン留分(ナフサ)を熱分解するエチレン・プラントの主力製品(主エチレン、プロピレン、BTX=芳香属)等のモノマー製品を原料とし、更に、重合し、成型加工した製品(炭化水素重合物質)がプラスティクだからです。
 
余談ですが、重要なことは、このエチレン・熱分解プラントでは、800℃(以上)の高温での熱分解です。
他に、水素、メタンの他、ブタジエン、分解ガソリン, 重質油(分解軽油、分解重油)、コークス等各種化学分子類が副生します。
エチレン、プロピレンだけが、熱分解では得られません。興味があれば、石油化学プラントのエチレン製造プラントの説明等を参照下さい。
オレフィン類(エチレン、プロピレン、ブタジエン)、分解油(ガソリン、灯油、軽油重油)は、何れも不安定物質で、重合反応が起き易い物質です
 
話を元に戻すと、従って重合操作の逆操作を行えば、簡単にガス、油類に戻ります。収率も70~95%近くに達します。但し、重要なことは、その組成は、正規のガソリン(ナフサ)、軽油類等の製品、成分的に多くはできません。
 
主に所謂、分解ガソリン、分解軽油分解重油であり、ガソリン、灯油、軽油の様な油が出来ます。
熱分解温度を上昇すれば、軽質油がより多く生産できますが、一方、多くのガス留分の副生、炭化コークス(炭素)も多く析出してきます。ここで分解と言う意味は、前述の様に、分解油=不安定油と言う意味です。
これは、基本的には触媒法熱分解油も同様です。
 
何万、何十万と言う主に直鎖炭化水素重合高分子プラスティク類を、高温で(ラジカル)分解すれば、当然水素(原料)が不足し、不安定な2重結合軽質油分子類や健康に良くない芳香物類(BTX)が多量に副生します。
熱分解だけでは、例え、触媒熱分解法でも、安定な飽和低炭化水素化合物燃料(直鎖、異性化分子成分)は、理論的に得られないことは明らかです。
 
重要なことは、これらのプラスティクの熱分解で得られる分解ガソリン(ナフサ)、分解灯油(ケロシン)、分解軽油、分解重油等は、所謂何々。。。の様な沸点の燃料油だと言うことです。
 
何々。。。の様な燃料油と言う意味は、プラスティク分解油そのままであれば、ガソリン、灯油、軽油様な油の混合油です。当然、市販のガソリン、灯油、軽油の混合油と等価ではありません
 
従って、例え、蒸留し、分別しても、市販のガソリン、灯油、軽油とは、似て非なる燃料です。
蒸留操作をしてない油化装置は論外ですが、例え、蒸留操作をしても、沸点が同じになるだけで、これら燃料規格外油です。
 
これらの操作で、一応規格に合わせられるのは、引火点、密度、沸点、燃焼エネルギー、流動点、。。等の項目だけです。 
 
分解ガソリンのオクタン価、芳香属濃度は高いものの、分解軽油留分の特に、セタン価が低く、重合安定性、酸価値/PH値等を石油製品と同等にする為には、触媒を使い再度高温高圧で、水素添加、改質、再蒸留等の諸操作行うことが不可欠です。
 
ここまで実施している油化装置、少なくとも国産機ではありません。触媒を使う熱分解法も、殆どないと思います。単純な熱分解油化機です。
 
水素添加、改質装置は、設置、運用費用も莫大です。
従って、海外(大型)油化装置運用者の多くは、製造コストを抑える為、分解油(Cracked Crude Oil)を石油精製工場に売却し(或いは委託し)、これら諸操作は、既存石油石油装置の一部使って、大量に安価に処理を行う例が殆どです。次の触媒熱分解法の場合も、全く同様です。
 
従って、これらの油化製品は、例え、蒸留済油でも、ガソリン代替、軽油代替油として内燃エンジン(ガソリン、ディーゼル)では、直接使えません。 少なくとも、100%油では無理です
 
使えても、極く少量ブレンドするか、短期使用が限界です。通常は10~50%以下です。
良心的な油化装置メーカーは、内燃ガソリン、ディーゼル・エンジン用途は使えないと説明するか、少なくと100%濃度で使えるとは言っていないと思います。営業トークでは、そうであっても、保証もしてないと思います。
勿論、公道を走る車両用(ガソリン、ディーゼル)用途は、税制上からも使えません。
 
通常、分解(原)油がある程度安心して使えるのは、ボイラー用燃料が主用途です。
 
尚、熱分解装置は、石油会社でも、一部戦前は使われていましたが、現在は全く使いません。
理由は、熱だけで強引に分解しても、欲しい軽質油製品の収量が少なく、多品種、多量の副製品が出来て非効率だからです。
水素不足で、コークス(炭素)等も副生(析出)し、装置トラブルの主原因にもなります。 
 
油化装置の原料として、他に、
1) 同じプラスティク類でも、多くの場合、原料として塩ビ類は、使えません。塩素が含まれている為ですが、塩素除去装置が付属していない例が殆どだからです。
 
2) 廃タイヤ原料も同様です。液体燃料は高収率で得られますが、タイヤ中の硫黄分除去が必要です。元々、簡易、低価格装置で液体燃料を製造するのが主目的です。高額な脱硫装置付きの油化装置など存在しません。廃タイヤ油化装置、インド、中国では、現在も多く販売されています。廃プラと同様に、熱分解は廃タイヤも簡単にできます。
 
3) 廃植物油、動物油を使う油化装置があります。これも、ガソリン、灯油、軽油様な混合油が得られます。
バイオディーゼル(BDF、FAMEの様に、メタノールも不要、グリセリン副生も無し、動物油も使えて流動点も低下して総て問題なしと言う宣伝製品も一部で販売されてますが、同様に、出来た油は、石油とは似ても非なる油です。
中途半端な分解油よりBDFの方が、内燃エンジンの燃料として、遥かに優れているかもしれません。
 
水素添加、脱酸素、改質操作なしでは、車両用エンジン用炭化水素燃料にはなり得ません。従って、同様に主な利用先はボイラー用燃料等です。
 
4) 廃草木質系、廃紙バイオマス等を原料とする油化装置は、殆ど製品化してないと思います。同様に、家畜の糞尿原料もないと思います。
バイオマス原料は、廃棄物、或いは通常のチップ材であれ、国内で大量に存在する最も豊富なバイオマス資源ですが、この主の油化装置では殆ど無理ですこれらの原料は主にガス化です。
 
温度条件等を調整すれば、一応バイオマス分解油(液体)は得られますが、とても内燃エンジン燃料どころか、ボイラー向け燃料でも、100%では殆ど使えません。
 
油は、酸性油(pH=2.0~2.5)であり金属腐食の他、水分、糖分、重合スラッジ類が多量に含まれている為、バーナーチップの詰まり等の発生等から故障原因となるからです。
勿論、更に、水素添加の他、脱酸素、改質操作等を行えば、理論的には、石油系燃料同等の燃料が得られますが、実プラントは海外を含めても、多くは見当たりません。
 
通常は、ガス化法ですが、大規模投資が必要です。
 800℃以上で、一旦ガス化し、精製して、再度、液化合成(FT法)する方法ですが、小型装置では、設備、運営コスト的に無理です。
 
2.次は、ゼオライト系触媒等を使う触媒熱分解法(Catalytic Thermal Cracking, Cold  Termo Depolymerization Pyrolysis)装置です。
このタイプの油化装置は、幾つか国内、海外製品であります。
バッチ式でも、連続式でも同じですが、触媒を使うことが特徴で、熱分解法に比べれば、やや進化した油化装置です。殆どは、纏めて温分解ガスを、冷却し分解混合油を得ると言う製品です。各種沸点温度差による蒸留・分留する製品は少ないと思います。
 
下記は、中国製の廃プラ用触媒熱分解油化装置(日産8KL)の例です。
この装置、塩素の除去装置もあるとの事で、塩ビも一部処理可能の様です。
 
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下記は米国のベンダー(Plastic2Oil)で、本格的な製品です。
 
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やや進化したと言う意味では、触媒、それも石油精製用FCC(流動接触分解装置)で使うゼオライト系触媒、或いは安価な類似成分の天然無機物を使います。
触媒自体は、入手も簡単で、特に、そう高価なものでもありません。
 
触媒法油化装置の第1の特徴は、触媒の選択性により、狙った欲しい油種(ガソリン、或いは軽油)の様な炭素分子数の炭化水素油(同一炭素数の直鎖不飽和、芳香属)が高収率で得られることです。
 
。。。の様な油と言う意味では、触媒熱分解法も、(非触媒)熱分解法も類似です
原料高分子を炭素数5~18程度の分子量物質を効率的に製造します。第2の特徴の比較的低温で分解することができます。勿論、軽質ガスや重油類も、現実には副生します。
 
但し、このままでは、一部飽和化合物も得られますが、更に蒸留しても、殆どは不飽和ガソリン、灯油、軽油の様な油が得られるだけです。各油種の収率と反応温度は、異なりますが、物性は熱分解法油と大差ない様です。但し、触媒を使うので、反応温度も、350℃程度まで低下できます。
 
従って、石油系燃料と同等で、車両用のガソリン・エンジン、ディーゼル・エンジン用燃料とする為には、同様に水素添加による安定化、異性化によるオクタン価向上、或いはセタン価向上の為の改質、蒸留操作などが必要です。
また、熱分解法と同じ様に、原料の種類(例、塩ビ)により、更に脱硫操作等も必になります。
 
事実、石油精製工場でも、FCC装置で出来た分解ガソリン、分解灯油、分解軽油はそのまま、100%ガソリン、灯油、軽油として出荷できませんし、出荷しません。
 
更に、下流装置の脱硫操作、水素添加、異性化装置処理を行い、更に、常圧蒸留装置から得られた直流(ストレート)ナフサ、ケロシン軽油(ADO)留分、或いはアルキレーション処理油等とのブレンド操作を行いつつ、最終的にガソリン、灯油、軽油製品として製品化されています。
 
 
従って、触媒法油化装置から得られた油を蒸留してナフサ(ガソリン)、灯油(ケロシン)、軽油(ADO)の様な沸点油に分けたとしても、これら100%では、ガソリン、ディーゼル車両用には使えません。
使えても、石油系油とのブレンド利用程度だと思います。特に、油化装置油のブレンド比が多いとエンジントラブルの主原因となり得ます。更に、石油精製の燃料油製品では、各種添加剤を加えていますので、油化装置油も同様です。
 
従って、比較的安全なのはボイラー燃料向け燃料です
ボイラー向け燃料でも、余り長期保存、高温での保存は避けた方が安全です。水素未添加の為、不飽和化合物(二重結合)が多く残留している為、不安定で、徐々に重合反応が進み重合油となり得ます。
 
触媒を使った油化装置の原料も、主にプラ類(PE、PP)、廃エンジン油、或いは油脂(動物、植物油)が殆どです。
熱分解法と同じく、廃塩ビ、廃タイヤ、廃バイオマス(木質、草、紙)が、100%量原料で使える油化装置は、国内製品ではないと思います。分解工程の下流工程が無ければ、例え、ボイラー用燃焼燃料でさえ、安心して使えないからです
 
この様に、熱分解法、及び触媒熱分解法の主な油化装置の多くは、プラスティクスを主原料とする、或いは専用の油化装置が多い様ですが、ところで原料のプラスティク類原料は、充分確保できるのでしょうか?? 原料が集まらないと言う話も聞いています。
 
プラ類は分別され、再度溶解され、再生プラスティクとしてリサイクル再利用されるのだと思います。
この方が、せっかく化石燃料の石油原料から、各種多段工程と膨大な化石エネルギーを更に使いつつ製造されたプラスティク製品です。同じプラスティクスとしての再利用できるのであれば、こちらの利用法の方が、エネルギー的にも、エコ的にも、当然、遥かに優れています。
 
 
。。。と言うことで、油化装置、熱分解法にしても、触媒法油化装置にしても、使用原料とその用途先を良く考えないと思わぬトラブルにも巻き込まれます
 
特に、簡単そうなプラスティク類、種類によっては、フッ素、アンモニア、シアン等の有毒性ガスを発生するもの、火災の起き得るもの、油に充分分解し難いもの、装置を詰まらせ易いもの等いろいろ、多種多様です。
 
更に、分別の間違い、廃複合プラスティクス類の混入も多く存在します。
中途半端な理解では、購入者も、販売メーカーも、危険で、リスク大です。
これらの装置、導入しても、稼動できてない、或いは充分稼動しない装置も少なくないとか??、を聞いています。当然だと思います。
 
この様な場合は、手をださい方が賢明です。充分、ご注意下さい。
少なくとも現状では、この様な油化装置、興味はありません。石油精製、石油化学工場に長年勤務した経験から、油化装置による燃料製造がそう簡単ではないことが、充分過ぎるくらい経験し、解るからです
それに、他の利用法も有るからです。 
石油精製工場の様な装置がないと、現代の高度ガソリン、ディーゼル(車)用エンジンの燃料は製造できません。興味があれば、石油精製概論でも、見てください。
 
従って、解決策は、ガス化、或いは、他の液化手法です。
以前、下記に紹介した様な廃プラ、廃バイオマス原料等、総てのバイオマス炭化水素、炭水化物)物質を使い、直接、高セタン価の合成軽油を製造出来る装置は、触媒(熱)解重合装置だけであり、高価になります。水素添加(飽和化合物)も出来て、脱硫装置(オプション)も付いていますし、副生ガス成分(水素、メタン等)は、自家ガス発電に使う発電設備が付いていますので、外部電力なしで、装置運転が出来ます。
 
乾燥装置等付帯設備を総てを含めると日産3.6kLの小型でも、5億円、日産24KLで、同様に20億円もするのです。
 
 
下記は、日産12KLの本体装置の写真です。
 
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今回は、油化装置の概要と、その利用法、限界について概要を紹介しました。
 
販売されている油化装置製品、正しい知識と使用法とその限界を正しく守れば、有用な油化装置だと思いますが、その限界を知らないで購入すると危険です。また、それらの油を購入し、利用するのも危険です。
充分、ご注意ください。
 
追伸)
 
1)廃プラ油化ビジネスについての最新Blog記事(2019年)が下記に掲載されています。
 
2)廃プラの液化は、下記のH.P.の”(2)触媒熱分解液化(廃プラ油化)法”にも紹介されています。
 
以上)追伸
 
では、また。。。。
Joe.H
 
追伸)
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