バイオディーゼル(BDF)反応器の加熱時間を計算して見よう!!

バイオディーゼル(BDF)反応では、通常のアルカリ法では、55~60℃程度に加熱する必要があります。
 
原料である廃油にメトキシド(メタノール)加えた混合液を、上記の温度まで加熱すると共に、反応では攪拌操作が必用です。
 
そこで今回は、BDF装置を自作する場合に必要となる加熱器(ヒーター)容量を決めたり、既に存在する加熱器を用いて、温度を定温まで上げる場合の時間などについて考えて見ましょう!!
特に、これからの冬季は加熱時間も掛かります。
 
この記事を参考にして、加熱時間も考察してみてください。
 
 
先ずは、熱の基礎式です。
 
加熱に必要な熱量(Q):
 
Q=cm(t1ーt2)                       (1)
ここで、各変数は下記を示しています。
Q;必要な熱量(J) Jはジュールと言い、熱量単位
m ;加熱される物質(油など)の重量(g)
t1;物質の加熱したい目標温度(℃)
t2;物質の現在の温度(℃)
c ;物質の比熱(Specific Heat Capacity)(J/(℃xg
  物質により、また温度レベルによっても変わる物性値
 
上記の(1)式の必要熱量(Q)は、加熱器(ヒーター)で熱を加えますので、
この熱量(Q)は:
Q=W x T                           (2)
ここで、
Q;加熱器の熱量(J)
W;加熱ヒーターのワット数(W)
 
加熱される物質の熱量(Q)と加熱するヒーター熱量(Q)は、熱ロスを無視すれば、等しくなりますので、
次式が成立します。
Q=W x T = c x m x(t1ー t2)          (3)
従って、
T= c x m x(t1-t2)/ W               (4)
 
ここで、mは重量ですので、容量(mL)へ変換します。
m= d x V                          (5)
ここで、
d;加熱される物質の密度(g/mL)
V;同           容積(mL)
(4)、(5)式から
T= c x d x V x(t1-t2)/ W            (6)
 
次に、(6)式に物質(油)の物性値を代入して見ましょう。
油のc値=1.7~2.2 です。
油種により異なります。ここでは、c=2.0と仮定します。
次に油の密度d=0.92(g/mL)=920(g/L)程度です。
このデータを(6)式に代入すると
 
T=2.0x920xVx(t1-t2)/W=1840 x V x(t1-t2)/ W   (7)
となります。
 
ここで、時間Tは秒でしたので、時間に変換します(1時間=3600秒)
(7)式はは3600で割れば、新たにT(時)単位で
 
T= 0.511 X V X (t1ーt2)/W                 (8)
となります。
 
次に、(8)式を用いて、簡単な例題を解いて見ます。
今、V=100Lの廃油をW=3000(w)の加熱器の付いた反応器を用いて、廃油の初期温度t2=10℃を、目標温度t2=60℃まで温度差50℃まで、加温する時間Tを計算して見ましょう!
 
T=0.511 x 100(L) x (60 -10)/ 3000(w)=0.851(時間)=51(分)   (9)
と計算できます。
反応器外への熱ロスもありますので、現実は、凡そ1時間以上の加熱時間が必要です。
 
同様に、仮に25分で100Lを加熱するのに、必要な加熱器の熱量(ワット数)はいくらでしょうか??
(8)式を変換して、
W=0.511 x V x (t1-t2)/T=0.511x100x(60-10)/(25/60)=6132(w;ワット)  (10)
となりますので、同様に熱ロスなどを考えると6500ワット=6.5キロワットとなります。
 
(8)式を用いれば、任意の容積(L)の油を任意の温度(t1)から、任意の目標温度(t2)まで加熱する時間を、加熱器のワット数が判れば、計算できます。逆も同様です。
 
同様に、BDF反応では、メタノールを20%程度加えて、反応させるわけですが、
BDF関連の物性値である比熱(c)と密度(d)は下記です。
 
メタノール c=2.53 d=0.792
グリセリン c=2.43 d=1.261
BDF    c=1.3~2.2程度 d=0.885
 
ですので、混合溶液の加熱時間や必要な加熱器のワット数も、簡単に計算できます。
 
例えば、100Lの油に、同じ10℃のメタノールを20%(20L)加えた場合の加熱時間は 下記となります。
触媒の影響は、少量ですので、無視しています。
 
平均のc値=(2.0x0.92x100+2.53x0.792x20)/(100x0.92+20x0.792)=2.077 (11)
    d=0.8987
(8)式は、
T=0.518 x V x (t1-t2)/ W                                       (12)
 
となります。(8)の係数と大差ないことが解ります。大きく異なるのは、容積(V)が100Lではなく、120Lになります。
 
従って、
T=0.518x(100+20)x(60-10)/3000=1.036(時間)=62(分)              (13)
 
油(100L)だけの場合は、3000(ワット)の加熱ヒーターで10℃から60℃までの加熱時間は51分でしたが、
メタノールが20%(20L)加わると、加熱時間は62分掛かる計算です。
熱ロスもありますので、70分以上掛かると思われます。
 
この100LサイズのBDF反応器でも、特に冬場では、温度を30分程度で、10℃から反応開始温度60℃までに昇温するためには、6000ワット級以上の加熱ヒーターが必要になります。
 
尚、夏場で油やメタノールの液温度が高ければ、当然、上記の式から、より短時間の加熱時間となります。
仮に極端な例として、夏場日中の液温がt1=35℃もあれば、加熱時間は31分と半分の加熱時間となります。
温度差が50℃から25℃となるからです。
 
この加熱時間の計算は、当然、反応器の加熱時間ばかりでなく、バンドヒーター(通常1200~1300W)を使ってドラム缶内の油の予熱などでも、同様に計算できます。http://utahbiodieselsupply.com/images/barrelheater/barrelheaters.gif
 
200Lの油なら、仮に1200Wで、同様の温度条件なら、(8)から
 
T=0.511x200x(60-10)/1200=4.26(時間)255分(分)
 
となり、4時間以上も加熱時間が掛かります。
ドラム缶は、断熱材もありませんし、長時間では熱ロスも多くありますので、加熱時間は、外気温にもよりますが、熱ロスを考え合わせると、5~6時間も掛かります。
 
この熱ロスの計算も可能ですが、ここでは省略します。
興味があれば、計算してみてください。
 
。。。。と言うことで、
今回は、油の加熱時間の計算法を基礎を紹介しました
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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