BDF反応の転化率など何か問題があれば、メタノール純度を確認して見よう!!

今回は、バイオディーゼル(BDF)の反応に使うメタノール純度測定法とその器具(比重計)の紹介です。
 
BDFは、エステル交換反応、或いはエステル反応を介して、製造されます。
この反応に必要なのが、低級アルコールと触媒です。
 
触媒は、通常はアルカリ触媒を、時には酸触媒(硫酸など)を、そして最新の技術では個体触媒法(金属酸化物、酵素など)を使います。
いずれも、本Blogで何回か紹介済です。
 
低級アルコールは、メタノールエタノール等の低炭素数アルコールを指し、低純度アルコールではありません。
 
最も低級アルコールであり、安価で、かつ反応性に優れているため、通常BDF製造に使われている
 
メタノールの純度とその測定法と器具の紹介です。
 
このメタノールですが、この純度が、時には問題となります。
メタノールの純度低下は、通常は水分の混入です。
 
エステル交換反応でも、エステル反応でも、水分の混入があれば、個体触媒法を除くと、全て、即石鹸分が副生します。
 
石鹸分が多ければ、反応転化率低下ばかりか、グリセリン分離、エマルジョン化、及び精製工程が困難になったり、更には、最終BDF製品が品質規格外となります。
 
メタノール開封して、即BDF反応に使う場合は、メタノール純度は98~99.0%以上ありますので、問題はありませんが、… 問題となりえる場合は、
 
1)長期に保存したものを使う場合、必ずこの間に、空気中の水分を吸収し、メタノール純度の低下原因となります。メタノール保存時は必ず密閉状態にしましょう。同様に、長期保存は避けましょう。
 
2)安価な回収(再生)メタノールを使う場合、通常、新合成メタノール純度と変わらない筈ですが、特に安価な場合や新規業者からの購入時は、純度の把握、確認(測定)が必用かもしれません。
 
3)祖BDFやグリセリンからの回収メタノールを反応に使う場合、通常のフラッシュ操作での回収メタノールは低純度です。
勿論、この回収メタノールと新メタノールブレンドして、反応用に使えますが、最も純度が問題となります。回収メタノールブレンド割合にもよりますが、多ければ、多いほど、純度が問題となりますので、特に要注意です。
 
一般に、BDF反応に使うメタノール純度は、高ければ高いほど良いのですが、最低でも95%以上必用です。
 
反応時の水分は、廃油中の水分も同様に、関与しますので、廃油の水分除去が不充分なら、更に高純度のメタノールでも反応時に問題が発生する可能性があります。
 
何れにしても、反応が低転化率であったり、グリセリン分離が遅い、石鹸分が多い、。。。。などの問題が起きた時は、必ずメタノール純度を疑いましょう。 
確認すれば、これが原因か否かが解ります。
 
時々、メタノール純度を定期的に、他に廃油の酸価、水分、BDF石鹸分。。などの重要分析項目と同様に確認が必要です。メタノール純度も定期的に確認しましょう!
 
メタノール純度の測定は、比重計を使えば、簡単にできます。
 
下記は、その一例です。
 
写真の様に、容器(写真はガラス製メスシリンダー)にメタノールを80~90%程度入れ、写真のガラス製比重計を入れて、安定した状態で、メタノール界面の目盛を読みます。
 
比重は温度により変わりますので、同時にメタノール温度も測定します。
但し、通常の室温15~23℃程度の温度範囲であれば、温度計は無くても、問題はありません。 
 
この比重計(Hydrometer)ですが、用途により目盛りレンジがいろいろあります。
 
特に、BDF反応用のメタノールの純度確認用専用として、写真の製品は 0.700 ー 0.810 の比重測定レンジで、目盛精度 0.001 が最も高精度に測定できます。
 
他の更に広いレンジの比重計でも使用できます。汎用製品は、0.7~1.0が比重測定レンジですが、メタノール純度測定用としては、やや精度が低くなります。
 
国産では、このレンジの製品が販売されているか不明ですが、類似品は,,お酒のエタノール純度用(酒精計)、糖分用(ボーメ計)の比重計なども販売されています。また、比重が1以上のものもあります。
購入時は、測定レンジに注意しましょう。
できれば、少なくとも測定レンジは0.760~0.830程度の製品がお薦めです。
 
米国内なら、上記比重計は25~26$(2000円)程度と安価です。
他に、温度計、メスシリンダー(500mL)を含めたキット製品(下記写真)でも、70$(5600円)前後です。
金属製の支持台が加わったキットでも、88$(7000円)で、販売されています。
 
 
次に、肝心なメタノール純度の求め方を説明します。
 
20℃に於ける純度100%のメタノールの比重は、0.7913です。
同温度に於ける水の比重は、丁度1.0です(実は、比重の定義は、水の密度をその物質、ここではメタノールの密度で割った値)。下記の、0.2087は、水分とメタノールの比重差です。
 
メタノール純度(%)=(1.0-測定比重値)/0.2087x100       (1)
 
「1)式より、メタノール純度は、簡単に計算できます。
 
仮に、温度20℃に於けるサンプルメタノールの比重が、0.800だったとすると、(1)式より
 
メタノール純度(%)=(1.0-0.800)/0.2087x100=95.83%  (2)
 
となり、サンプル・メタノール純度は95.83%となります。
 
では、メタノール液温度が、他の温度の場合は、どうなるのでしょうか??
温度が変われば、メタノールの比重も、水の比重も変わります。
 
温度の高くなれば、比重は低くなりますが、これらの数値はネット検索などで簡単に解りますし、上記の比重計を購入すれば、表として添付されています。
直接密度値からの、別の計算法もあります。
 
ついでに、2種類の異なる純度のメタノールブレンドした場合の混合メタノール(C)の計算例です。
 
回収メタノール(A)比重が、20℃で比重値0.8050、
メタノール(B)の比重が0.7975(測定値、或いは製品の表示純度)
と仮定して、それらを1:3の容量比でブレンドしたメタノール純度を計算してみましょう!
 
回収メタノール純度(A)=(1.0-0.8050)/0.2087x100=93.44%  (3)
 新メタノール純度(B)=(1.0-0.7975)/0.2087x100=97.03% (4)
従って、求める混合メタノール純度(容量%)は、下記となります。
 
C(%)=(93.44x1+97.03x3)/4=96.13%                   (5)
 
或いは、混合されたメタノールを直接比重計で計測して、(1)式から純度を計算した方が簡単です。
結果は、(5)式の値と同じ筈です。
 
今回は、BDFの反応に使うメタノールの純度の測定法の紹介でした。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
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