バイオ・ディーゼル(BDF)原料用の廃油は、世界的に何故高騰しているのでしょうか??

 今回は、廃油の値段は、何故そんなにも高騰しているのか??。。。
と言う話題です。
 
この傾向は、日本でもそうですが、海外では、日本の比ではありません。
高価格の原因は、BDFの普及、推進の為の再生可能燃料インセンティブ制度(奨励金)です。
 
 
例えば、米国では、廃油(Yellow Grease)の価格は、1ガロン当たり3.22~3.26$程度もします。
円高の現状為替レートでも、1L当たり66.4~67.2円もしている様です。これでも、最近やや安くなった方です。
 
.一方、BDFの価格は、下記のテーブルを参照ください。
10月3日の最新のデータですが、BDFの種類(CME;キャノーラ系BDF,SME;大豆油系BDF、FAME;一般的なBDF)でも、地域によっても価格は異なります。
最安値は中部地域のFAMEで1ガロン当たり5.50$、最高値は、西部地域の5.87$程度まで分布しています。この価格は、現状の価格で、1L当たり113.3~121.0円程度です。日本より、やや安い程度か、同じくらいかも知れません。
 
日本の軽油価格は、この価格より、やや高価ですが、BDF価格は、一方通常軽油価格より何故か安価な場合も多いからです。

Market Watch   daily B100 biodiesel prices (bid-offer)
 West CoastMidwestGulf CoastEast Coast
 CME5.77-5.875.53-5.635.59-5.695.64-5.74
 SME5.77-5.875.53-5.635.59-5.695.64-5.74
 FAME5.75-6.855.50-5.605.57-5.675.62-5.72
Renewable Identification Numbers (RINs)
2011   1.45-1.5
2012   N/A
Advanced Biofuel Renewable Identification Numbers (RINs)
2011   0.83-0.92
2012   N/A

 
上記を単純に計算すると、米国のBDF製造業者の製品の売値(113.3~121円)と原料費(66.4~67.2円)の差額(46.9~53.8円)で、原料費以外の経費(人件費、メタノール、触媒、電気料、設備投資償却費など)を支払った後、果たして利益が出るのでしょうか??
 
一方、最近のBDF業界は、活況を呈していて、生産量も過去最高、生産量対昨年比30%増、再稼働プラントや新設プラントも多々、BDF企業買収。。。。と言う話題も多々あります。
 
その理由は何でしょうか?
実はBDF生産業者には、2つのインセンティブ制度、特典があります。
 
第1は、Tax Credit 制度です。
この制度は、再生可能エネルギー(BDF燃料など)の生産者は、1ガロンの生産毎に当たり1$の税金が還付される(減税)と言う特典があります。時限立法で年々更新されて来ています、現状は本年末までです。
 
第2は、RINs(Rebewable Identification Numbers)制度です。
米国の環境省EPA)がCO2の削減の為に、再生可能エネルギーを生産する製造業者に対して、このRIN(仮想的なCO2削減商品)の様な物)を特典として与えます。
 
BDF1ガロンの生産毎に、1.5 RINを、
他に、糖分、デンプンなどの原料を使ったバイオ・エタノール製造業者には、同様に1.0RINを、技術的には、これからですが、セルロースエタノールだと 2.5RIN が得られます。
 
一方、石油会社などにも、CO2削減の義務があり、与えられたRIN値の達成義務があります。自己努力で達成できなければ、RINをどこからか購入して満たすことになります。
 
詰まりRINが得られる側とRINを得なければならない側との市場が出来ています。
この市場には、更に投機家なども加わります。
米国では、このネット市場も形成されています。
 
ここでは、お互いにRINの売買、交換が日々行われています。需要と供給の関係から、このRINの価格は変動します。
 
さて、このRIN価格ですが、現在の市場価格は、1RIN当たり1.45~1.50$程度です。
従って、BDF製造業者は1ガロン当たり1.5x(1.45~1.50)=2.2~2.3$でRINを売却可能となります。
 
すなわち、(RIN登録済の正規)BDF製造業者は1$+(2.2~2.3)$=3.2~3.3$のインセンティブが得られる計算になります。
 
合計インセンティブ価格は、前述のほぼ廃油の価格1ガロン当たり3.22~3.26$と等価となりす。
 
詰まり廃油の価格が例え、極めて高価格でも、これはインセンティブで打ち消されている結果となります。
言い換えれば、原料廃油は無料だと言うことになります。
 
BDF売値の1ガロン当たり5.50~5.87$の売上から、人件費、メタノール、触媒、電気料、及び償却費を指し聞いた残りは、全て利益と言うことになります。
 
BDF製造のメタノールや触媒、電力料と言った直接的な製造費は、1ガロン当たり1$(1L当たり20円)も掛かりません。
 
また償却費はプラントの規模にもよりますが、年間30mmガロンのプラントの投資額は、9~12mm$(7~10億円)程度です。これは、1ガロン当りの生産プラントの投資額では、0.3~0.4$程度ですので、3年償却であれば1ガロン当たりの償却費10~13セントとなり、この費用を加えても1ガロン当たり1.1$程度です。
 
残る費用項目は、人件費ですが、仮に年間30MMガロンの中規模生産プラント(毎時15,000L)で、シフト8人x3シフト=24人、1人当りの人件費を年間5万ドル(390万円)とした場合は、120万ドルです。BDF製造費1ガロン当たりでは、、13 セント相当です。
 
従って、これら総ての経費でも、1.1+0.13=1.23$程度です。
 
この様に、上記2っのインセンティヴが存在する限りBDF業界は、今後も生産量増を求めて、BDF原料の確保に躍起になる筈ですし、廃油にしても、その他のBDF原料も求めて来るはずです。
 
ただし、RIN制度も、現状は2013年までの制度ですので、それ以降は不明ですが、。。。。
CO2削減の方向は、今後も継続する必要があることから何らかのインセンティブ制度は残ると思います。
 
何のインセンティブがなければ、まだBDF業界は一人立ちできないことは明らかです。
 
最近、再生可能燃料として、ディーゼルエンジン用のBDFではなく、ボイラーなどの再生可能燃料(Bioheat)の話題が、運動がEU等で話題となっています。
 
エンジンからのCO2の削減以上に、燃焼用燃料である灯油、軽由、重油などからのCO2削減も重要だからです。
特に、灯油、軽油再生可能エネルギー、或いは再生可能燃料ブレンドの規格作りやこれらのインセンティブ制度の検討もされています。
また、これらのプロセス開発やプラント建設も始まりつつあります。
 
当方でも、最近,パーム残渣油を使うこの目的のプラントの検討を行い、一部の顧客に提案済みです。
 
今回は、なぜ最近廃油が高価、高騰しているのかと言う理由の一端を、米国での例で紹介しました。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
 
追伸)
   上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何かコメント、ご意見、及び質問等具体的な相談のある方は、
 下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
 非公開情報など内容によっては、お答えできない場合や条件付となりますが、
 可能な限り対応させて頂きますので。。。。
 以上