バイオディーゼル(BDF)精製で、イオン交換樹脂の正しい設計・使い方をしてますか??

BDF精製法は、水洗法が主力でしたが、今や海外の大規模BDF製造所では、ほぼ100%Dry-Process法を使用しています
今や個人や小規模製造でも海外の多くは、Dry-Process法(乾式法)を使っています。
 
日本でも、Dry-Process法が徐々に普及しつつあります。
水洗法を頑強に頑張っている方もいますが。。。。。
 
DryーProcess法は、一度使い出せば、二度と水洗法には戻れません。
誰でも、正しく設計された装置を正しく使えば、誰でも簡単に、かつ短時間でBDFの精製処理が可能だからです。
 
Dry-Process法の主力処理材(メディア)はイオン交換樹脂ですが、いろいろの製品が海外では入手できます。商品名などは、以前に下記Blogで紹介しました。
 
残念ながら国産品は製造、販売もありません。直接輸入すれば、BDFの性状や精製要求度、或いは樹脂の性能や価格などを考慮しつつ、最適なDry-Process法を入手できますが、。。。。。。そろそろトライされる人は??
 
今回のテーマはDryーProcess装置を、正しく理解し、使っていますか?
。。。です。
 
Dry-Process法を使っている方、或いはこれから導入を考えている方、次の質問に答えられますか?
 
1)Dry-Process塔は何本必要ですか??
イオン交換樹脂塔は、最低1本構成から使用できますが、通常は最低でも2本構成、望ましくは4本構成が必用です。大規模プロセスでは、6~10本構成ぐらいの様です。電磁弁を使い次々と切り替えて使っています。
例えば、後述のマクロポーラス型の樹脂製品の例では、後段で石鹸分などのイオン交換機能が満杯になった樹脂も、前段でグリセリン(吸着分離)用として更に使う例もあります。グリセリンメタノール洗浄で何回でも再使用可能です。この様にすれば、より長期にイオン交換樹脂が使えて、精製経費の削減も出来ます。
 
4本構成の場合ーーー因みに私が設計し、使っているのは4本構成です(36L/時)。以前Blog記事で紹介しました。\¤\᡼\¸ 3
 
某顧客向けに、同じ4本,或いは第3の新特殊樹脂を加えた5本構成で購入・製作中です。現地購入価格(含む樹脂)93万円で処理能力190L/時と大型です。
 
但し、大型の12インチ(内径30cm)、塔長(直管部76インチ=191cm)を使います。2本がセルロース系吸着剤を、他の2本は2種類のイオン交換樹脂を使います。主な各塔の役割ですが、セルロース系の吸着は、石鹸分のラフ(概略)な吸着を、最初のイオン交換樹脂は残留石鹸分の除去(FFA化)、及びグリセリン、水分を、一部の製品はMGも吸着、そして最後のイオン交換樹脂塔は、極く微量石鹸分等の高純度BDF精製です。吸着剤の使用可能時間は、イオン交換樹脂に比べて短く、吸着剤の交換がより頻繁に必用ですが、塔2本構成なので、吸着剤交換時もこの吸着塔を除いた残り3本構成で運転が継続できます。連続運転が必要なければ、3本構成でも、ほぼ同じ機能となります。
 
イメージ 1
 
イメージ 2
 
2本構成の場合ーーー1本はセルロース系吸着材を、残りの1本はイオン交換樹脂を使います。最近、某依頼例では、予算的制限から2本構成として、本方式を採用しました。
或いは、各塔で異なる2種類のイオン交換樹脂を使う場合、または2塔同一のイオン交換樹脂を使う場合等が考えられます。
最初の例が最適で、順に機能的(性能、使用効率)、コスト比が劣ってくる様です。Dry-Prosess法を使われている方、どの様な組み合わせと順番でしょうか? これから導入される方は、セルロース系+(某)イオン交換樹脂を使うことをお勧めします。伝統的な吸着剤(イオン交換樹脂)の使用法は、Lead/Lag構成で、同一樹脂を使います。
イメージ 3
 
1本構成の場合ーーーー予算が極々限られている場合は1本構成になります。最も国内調達の1本構成の価格で、輸入すれば2本、或いは3~4本構成も実現できるかもしれません。
残念ながら、1本構成では、1種類のイオン交換樹脂ですので、性能的にあまり完璧は狙えません。更に、この場合は、常時Dry-Process出口での品質を検査しないと、不純物が突然ブレーク・スルーしますので、BDFは、Off-Spec品となります(再処理が必要)。
 
2)塔内のイオン交換樹脂の製品名を知ってますか?
イオン交換樹脂には、いろいろな品質や性能のものが使われていますが、殆どの方は製品名を知らないと思います。必ず装置メーカーに、製品名を聞きましょう!
製品名が解れば、イオン交換樹脂メーカー、或いは代理店のホームページなどに、いろいろ情報が出ていますので、使い方などが解ります。製品名も解らずに(知らせずに?)、単に装置を販売している業者もいるかもしれません。この様な業者につきあったり、購入しても何も進歩はありません。イオン交換樹脂に、オールマイティーな製品は有りません。イオン樹脂名、そして特性を知り、組み合わせることが重要です。
 
3)どの様なタイプどう使えば、良いの?
具体的なところは、一般公開できませんが、、色はいろいろですが、少なくとも外見は同じです。少なくともBDF用として販売されているものを使いましょう!
純水処理用などの目的の樹脂は使えません。イオン交換樹脂の構造でも、ゲルタイプ、或いはマクロポーラス型やイオンタイプ(一般には+、-型がありますが、BDF用は+イオン型)など。。。。があります。選択を間違えると狙った効果がでません。
 
4)メタノール回収後、或いは回収前にDry-Process処理を行う??
あまり知られていませんが、殆どのイオン交換樹脂は、メタノール分が含まれた状況で最適に機能します。海外の大型プラントでは、遠心分離などでグリセリン等を除去後、メタノール回収前にDry-Process精製処理を行います。その後メタノール回収を行うと言う例が多いです。ある程度メタノール分が含まれていないと樹脂性能が充分発揮できないか、否かは使用樹脂によりますが、一般にはメタノールがある程度BDF中に含まれていないと、グリセリンメタノールなどを充分除去できません。
メタノール回収のタイミング、そこが悩むところです。具体策はメタノール除去後、精製処理するならメタノール分がなくとも性能劣化の少ない樹脂を使いましょう!或いはメタノール分を少し残した状態でグリセリン、石鹸分を(静置分離法などで)除去後、Dry-Process法で処理しましょう。私はこの方法を使っています。DRy-Processの吸着剤や樹脂の寿命が大幅に伸びて、経済的です。
 
5)BDF精製処理温度は、常温でいいのでしょうか?
イオン交換樹脂は30~60℃で最高性能を発揮する例が多い様です。夏場や暖かい室内でDry-Process処理を行う場合は(20~25℃)、特別に性能的な問題はありませんが、冬季温度が下がる地域や寒風の外気に曝される場所での精製処理であれば、ヒーター等でBDF液を一定温度に保つことが望ましいです。イオン交換樹脂は低温では、動作が鈍くなりますし、逆にあまりにも高温では触媒機能などで反応が起きたり、イオン樹脂劣化が起きます(70~80℃以上)。因みに、私の使っている装置も、設計・購入を依頼された装置も総てヒーター付です。
 
6)処理流速とイオン交換樹脂量との関係はあり?
時々、話や実例を見るのですが、小さな塔(少ないイオン交換樹脂)なのに、高流量で処理される人がいますが、高流量では殆ど精製処理ができません。また業者の販売用トークには惑わされない様に!!通常は触媒量(Bed-Volume)に対して毎時何倍までの流量が流せるかの数値があります。通常は2~6(製品によって~10.0)程度ですが、不明の場合はなるべく小流量で処理しましょう。
セルロース系吸着剤でも、この数値はありますが、イオン樹脂の1.5~2.0倍程度の流量処理が可能となります。どうしても大型装置(イオン樹脂が多い)のDry-Process法となると高価ですし、流量が少ないと処理時間が掛かるため、つい小型の装置で、高流量処理をしがちです。
因みに、前述の塔1本の容積は141Lで、イオン交換樹脂は55kg程度充填されていますが(樹脂は満杯まで詰めない様に、念の為)、設計流量は毎時190L程度と少なめです。
殆どの国内販売装置の大きさは、この数分の1から10分の1(以下)程度だと思いますので、流量もこの割合程度に抑えないと充分処理できません。但し、処理可能流量は樹脂により変わります。いろいろなイオン交換樹脂や吸着剤を使う場合は、最も処理流量の少ない樹脂流量にあわせる必用があります。
 
7)BDFは塔頂から、或いは塔底から?
どちらかでも、決定的な差はありません。どちらかと言えば、塔頂から入れて、塔底から抜き出し、複数の塔構成の場合は、これを繰り返す方式です。私はこの方式ですが、逆の例もあります。樹脂メーカーが指定する場合も有りますので、樹脂メーカーが解れば、確認してみましょう。塔頂からの方式の優れた点は、樹脂フィルターを塔底に設置すればよいので、設計が楽です。逆の場合は、樹脂の飛散防止の為に、塔頂にも防止フィルターが必用となります。通常、メタノール洗浄は逆の流れで行います。
 
8)塔の内径と高さは?
塔の内径(D)と塔長(H)との関係、これも樹脂メーカーの説明書などに説明されています。一般にはH/D比は3~9程度です。大型装置で樹脂量が多くなると、高さを抑える為に、H/D比は減少する傾向がありますが、圧損等も考えつつH/Dを決める必要があります。
因みに、前述の例は、H/D=6.3です。圧損が許せば、H/D比は高い方が、イオン交換性能は向上します。出来合いの塔を使う場合は、塔容量(樹脂量)に加えて、H/D比も確認して見ましょう。H/D比が3以下ではどの様な樹脂でも好ましく無く、使わない方が良いと思います。
 
10)イオン樹脂のBDF処理可能量は??
最も興味あるテーマだと思います。但し、祖BDF中の不純物の量によって、処理可能量が変わると同時に、樹脂の種類によっても、また塔構成によっても変わります。樹脂メーカーの標準的な処理可能量は、1kgの樹脂で1000~1800L程度処理可能です。現状使用中の某製品は、2700~4200L処理できるとメーカーでは言っています。この数量以内だと言うことで安心しないで、必ずサンプリング・テストを行い状況確認をする必要があります。
最終的にイオン交換可能量に達したら、それ以上はメタノール洗浄では、再生はできません。通常、全体の樹脂交換が必要です。上記がこの数値を示していますが、1000~1500PPM程度の石鹸分やグリセリン濃度を前提とした数値の様です。充分静置分離やセルロース系吸着材で前処理を行えば、理論的な処理可能量は何倍にもなります。
私の場合は、イオン交換樹脂塔の前で50ppm程度ですので、、20~30倍も、少なくとも10倍程度は使えるかな??
と思っています。
 
11)メタノール洗浄はどのタイミングで行う??
イオン樹脂塔がグリセリンや石鹸の吸着などで、圧力上昇し飽和に達したら(通常、上記の数分の一の処理量)、メタノール洗浄を行えば、何度も使えます(最低でも5~6回、理論的には、樹脂のイオン交換可能量まで)。
圧力上昇により流量変動するポンプはDryーProcessでは、使わない様にしましょう。出来れば定量ポンプ(Metering Pump)の使用が望ましいと思います。
尚、メタノール洗浄は、出来るだけメタノールを有効に使う様なノウハウも必要だと思います。メタノールも安くは無いので。。。。
 
今回は、イオン交換樹脂の使い方、設計法、実例でした。
では、また。。。。。。
 
Joe.H
 
追伸)
 上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何か具体的な相談のある方は、
 下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
以上