通常の1段反応では、バイオディーゼル(BDF)の転化率は規格値を満たせません!!

今回の話題は、極めて簡単ですが、しかし基本的な、かつ重要な話題です
 
殆どのバイオディーゼル反応(BDF)の転化率は、通常の1段反応だけでは、転化率の品質規格値を満たすことは無理だと言う話題です。
 
殆どのバイオディーゼル反応装置は、自動化装置であっても、或いは、マニュアル装置であっても、殆どは標準のアルカリ法の1段反応だと思います。
 
例え、2段反応もオプションで可能などと宣伝しても、肝心な具体的な反応条件と具体的なレシピー(反応温度、メトキシド濃度・量など)が提示されていますか??
 
或いは、ご自分で、個人であれ、法人であれ、2段反応云々と言っても、同様にレシピー、反応条件が正しく設定されているのでしょうか?
2段反応と言えども、レシピーと操作条件が正しくなければ、BDF製品の最低条件の規格値(EUの規格ENのエステル転化率:96.5wt。%以上)は満たせません!!
 
これまでも、何回も述べている様に、その原因はBDF反応のエステル交換反応は可逆反応であり、この事から、幾ら延々と反応時間を継続しても、可逆反応では平衡関係が成立しています。
無限に反応しても、平衡以上は反応は進みません。それより、多くの国産の装置は完全密閉ではないので、少しずつメタノールは装置外に蒸発してしまい、結果的には逆反応で、転化率の低下も起こり得ると言えます。
 
最初は油脂(WVO)とメトキシドから、BDF(FAME)とグリセリン2次反応(WVOとメトキシド濃度に比例)で進行します。
 
その内に、BDFとグリセリン濃度が増加するとともに、逆反応(BDFとグリセリン濃度に比例)が、同様に2次反応で進行しだすことになり、逆に油脂とメタノールが生成することになるという訳です。
 
いずれ、両反応速度はバランスして、見かけ上は反応が停止(進行しない)状況になります。
この状態が平衡状態ということです。
平衡関係は、反応の他に、蒸留(気液平衡)でも、吸着でも殆どの化学現象に成り立つ状態です。
 
ここまでは、BDF製造に関係している方、或いは関心がある方の多くは、ご存知だと思います。
 
では、
1)この平衡関係が成立するBDF転化率の値をご存知でしょうか??
そして、
2)この平衡関係に達する反応時間をご存知でしょうか??
 
この質問に答えられますか?
おそらく答えられる方は、少ないのではないでしょうか?
 
勿論、油脂(WVO)の状況、レシピーなどにより、値は変わり得ますが、概略値はそう変わりません。
1)の答えは90%
2)の答えは2分
です。
 
このことは、最近の海外文献に報告されていますし、私の実践結果ともほぼ一致していますので、間違いないと思います。
文献値は、極少量のビーカーでの数値ですが、最近の100Lバッチでの実データです。
 
私の最近のデータ(3月4日)では、1)は86.6%、2)は4分でした
(2段反応も4分で完了、計8分)
転化率については極めて良く一致していることが解ると思います。
 
分析結果は、とても便利な自作の簡易転化率キット(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/10901144.html)の使用結果です。
 
私の場合、2段反応の1段反応でのデータであり、通常のメタノール投入量より少ない状態です(WVO1モルに対して、メタノール3.6モル)。
メタノール量によって平衡関係はシフトしますので、補正すればほぼ一致している様です
 
次は、反応時間ですが、メトキシド投入後4分及び8分のデータでは、ほぼ同じ転化率の結果でしたので、4分以前に平衡に達していることになります。
それ以前のデータは、余りにも早い時間でのサンプリングも、時間的にも大変ですが、。。。結果的には、時間もほぼ一致ということになるのかも知れません。
 
従って、通常のBDF反応条件メタノール量、アルカリ量、反応温度)では
転化率は90%程度で平衡に達し、それ以上幾ら反応を継続しても、前述のEN規格値の96.6%以上の最低条件値まで転化率を高められない!!
と言うことです。
 
では、1段反応で規格値を満たすことは絶対不可能なのでしょうか??
 
答えはあります。
但し、皆さんが実行されたり、考えている通常の反応条件では無理です
最低条件のEN規格を満たす条件は、文献によれば、反応温度は、通常の55~60℃より高温の80℃以上だと言うことです。
これにより、平衡関係(転化率)シフトが起こります。
但し、メタノールは64.5℃で沸騰し始めますので、この80℃では、加圧反応条件が必要です。
少なくとも2気圧以上が必要だと思います(純粋のメタノール蒸気圧では、約2気圧ですが、BDFとの混合物なので更に高圧になります)。加圧条件で反応できる装置が国産で販売されているか不明ですが、海外ではあります。
国産で有っても、更に高価か、極まれだと思います。
 
別の方法もあります。
メタノールを極端に多量に投入すれば、平衡関係がシフトしますので可能です。
データはありませんが、恐らくメタノールを対WVOに対して9モル程度投入することになるのでは?と思います。
メタノール原価を考えると実用的には、実現不可能です。
メタノール回収可能な米国の商業ベースのBDF業者は、時に1段法で、高メタノール量で運転している例もあります。余剰メタノールの回収エネルギーを考えると得策か疑わしいのですが、。。。
更に、高転化率の99%+などを狙うなら、この量は更に増やさなければ、無理だと言うことです。
 
1段法アルカリ触媒反応である限り、他には方法はありません。
化学の常識ですが、他の触媒を使っても、平衡関係を変えることは不可能だからです。
 
従って、通常運転条件で高転化率のエステル交換反応を狙うなら、2段反応しかないと言う結論です。それも、正しい方法での実行と言う前提ですが、。。。
 
と言う事で、今回は通常のBDF1段反応では、転化率の規格値は満たせない!!と言う話題でした。
 
皆さん、ご存知でしたか??
但し、反応後の精製段階で、蒸留操作などで未反応油部分を除去すれば、最終製品の転化率は、限りなく100%(-)まで上昇しますが、当然、収率(収量)はその分減少しますし、蒸留操作のエネルギー、熱品質劣化などを考え合わせると良い方法とは言えません。
 
では、また。。。。
Joe.H
 
 
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