マイクロ・チャンネル・BDF反応装置です!!何か利点があるのでしょうか??

今回の話題は、マイクロ・チャンネル・リアクター(Micro-channel Reactor)、或いはマイクロ・リアクター(Micro Reactor)と一般に呼ばれている反応器のバイオディーゼル反応への応用例の紹介です。具体的には、汎用(超)小型熱交換器を使った例となります。
 
まずおさらいですが、バイオディーゼル反応方式では、バッチ方式、セミ・連続バッチ方式、そして連続方式と3方式があります。
 
通常の方式は、バッチ式であり( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/10667713.html )、廃油とメトキシド(メタノール+アルカリ触媒溶液)を槽型反応器1個に全量投入して、希望の液温の下、反応が完結するまで,或いは,2段反応の1段目の反応であれば、1段反応の停止条件(転化率、反応時間)まで継続し、次のグリセリン分離工程に移行します。
反応槽を2個以上使った例もあります。
新方式として紹介済です( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/10541340.html )。 反応槽が2個(以上)だと次のセミ連続バッチ方式に近づくきますが、。。。
 
セミ連続バッチ方式は、バッチ方式と類似の槽型反応器を幾つか設置し、反応を多段で実行する多段反応方式、或いはそのそれぞれの役目を1段反応器、グリセリン分離器、2段反応器、グリセリン分離機、メタノール回収、。。。。という具合にバッチ槽に多段機能分化しますが、その槽の間を配管で繋ぎ、原料、半製品などが(連続的に)流れる方式です。槽の数は2~7程度まであります。更に、10個程度の多段反応を直列で行えば、連反応装置と類似の反応効果が得られますが、コスト高となります。
 
連続方式は、反応・分離などの各工程が連続的に、かつ管(パイプ)の中を流れる様に進む方式で、Plug-Flow方式、Pipe-Flow方式とも言われている方式です(http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/10064073.html )。
比較的大型装置の効率重視の方式です。
下記は、パイプ内のPlug‐Flow(半径方向は完全混合、長さ方向は完全未混合の理想上状態を言う)と擬似Plug-Flow状態のMicro-Mixing(図のStatic-Mixerのグリーン色の例)、及び通常の層流流れ(未混合)の関係を示しています。http://t3.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcT3rg7sZxZFU5c1Hd7FW0JsWi_8X0Yl9sy729e9SZigFg53BFKP
 
これまで紹介の様に、転化率や使用エネルギーなどの効率面では、連続式、セミ連続バッチ式、バッチ式の順となります。このことは、これまでの記事でも述べてきましたし、反応器の設計式などからも証明できます。
 
特に、反応器周りの攪拌方式の要素技術では、上記に対応したMacro-Mixing方式Micro-Mixing方式についても紹介しつつ、これらが上記の3っの方式と組み合わせた例も幾つか紹介し、その特質も紹介しました。
 
Micro-Mixing方式を実現する器具として、Static-MIxerを紹介し、これを使った連続方式のフロー図や新バッチ方式を紹介済です。同じ、Staic-Mixerと言う器具を使っても、使用法によっては、Micro-Mixing効果が実現できなくて、Macro-Mixingとなる使い方もあり得ます。
 
バイオディーゼル(BDF)反応の(超)高速化、効率化、ECO化(省エネ化)するには,如何にMicro-Mixingが実現できる器具を使って、Micro-Mixingを実現させる様なプロセス方式を考えるかが鍵を握ります。この結果、設備費削減、小型化(省スペース)も併せ実現できます。
 
と言う事で、おさらいと前置きはこのくらいにして、今回の本題です。
Micro-Mixingを実現するBDF反応器の例として、最近ではMicro-Channel-Reactor(超小型流路反応器?、日本語は不明) とも言っています。
 
このMicro-Channel-Reactor用の器具は、これまで紹介済のStatic-Mixerもその一つですが、他にもあります。
専用に設計された器具(装置?)もあります。例えば、Fischer Tropsch 法により、バイオ分解合成ガスから炭化水素(BioFuel)を合成す反応器の例も報告されています( http://alfin2300.blogspot.com/2010/05/award-winning-microchannel-fischer.html )。反応器の写真は下記です。http://biomassenergyjournal.com/wp-content/uploads/2010/05/532_lg-300x206.jpg
 
今回紹介するのは、Static-Mixerと同様に、汎用商品の廉価板で、かつMicro-Mixing効果のある製品です。
下記の写真を見てください。
 
これは一般には波型熱交換器(Corrugated Heat Exchanger)、Plate Heat Exchanger(板式熱交換器?、日本語不明)と言われている製品です。名前の様に、多くの金属板(多くはステンレス)が重なって、かつ板が波型をしている製品で、金属板の隙間は1.5~2.0ミリメーター程度です。
 
この金属板をある枚数を重ねて固定し、添付動画の様に、入り口と出口が2組あります。一方は加熱(冷却)したい冷たい(暖かい)液体(気体も可)、一方は加熱媒体(液体、蒸気など)が入り相手に熱を加えて(熱を吸収して)、暖めます(冷やします)。
 
一般的には熱交換器と言われるもので、石油精製、石油化学プラントでは、遥かに大型ですが、この様な熱交換器群(別タイプのShell&Tube型などを含めて)が山の様にあります。
特徴は、小型コンパクト化が可能、そして大きな伝熱面積と波型形状により、効率的な熱交換が可能な事と言えます。
 
この波型熱交換器は、これまでもBDF利用者、或いはSVO(直接植物油のディーゼル燃料化)、それも寒冷地方では、類似品を含めて、使われている方がいたかもしれません。少なくとも海外では、冬季BDF,或いはSVOの固化防止、加熱用に多く利用されています。一方にBDF,或いはSVOを燃料タンクから配管し、片方にはラジエーター液(Coolant)を流して、熱交換して、暖め、固化防止をしている訳です。値段も1万円以内程度からあり、サイズも長さ20cmx幅7cmx奥行き20cm程度と小型です。
以上が本来の熱交換器としての利用です。
 
一方、この熱交換器を反応器としての利用法です。
未反応油(WVO)とメトキシドを通すと、その流路(Channel)が狭く、かつ波型を形状から、極めて混合がミクロ的に、かつ強力に行われます。更に流れはパイプ流れ(PlugーFlow)に近く、丁度、Static-Mixerと同じ様な混合状態を作りだすことができます。優れた混合も良好な熱交換も同じ理屈です。
 
板の枚数により、この流れは1枚おきに流れる構造になっていますので、もう一方の流れは空いています。ここに、加熱流体(媒体)を流せば、ヒーターと反応器の役目の両者を小さな熱交換器内で実現できてしまうことになります。
 
希望の転化率と反応量を得るためには、この熱交換器の大きさの選択と流速の決定(滞留時間)が重要になります。尚、予め油が余熱済であれば、反応液の出口を、もう一方の入り口に接続すれば、2倍の反応器としても使えます。
 
いろいろサイズがあるのですが、1個の熱交換器で反応流量が不足なら並列接続することも可能ですし、転化率が不足なら、直列に接続すれば対応可能です。熱交換器と熱交換器の間で、反応副生物のグリセリンを除外し、メトキシドが不足なら、追加投入すれば、2段反応方式にもなります。
 
小型の標準的な内容積は200mL程度ですが、両方使えば、倍の反応器となります。これで、最低でも日産500L~1000L程度(昼間稼動なら、170~330L)のエステル交換反応ができる様です。
最近あちこちで使われ始めています。日本でも、一部大学で研究をしていると言う情報もあります。アルカリ法の均一エステル交換反応であれば、研究するまでも無いと思いますが、。。??
 
新たに研究という意味では、固体触媒を使う不均一反応では、反応速度を如何に高速化をさせるかに苦労している訳です。例えば、波型板の表面に触媒を塗る(固定化)すれば、Micro-Mixing効果により流体分子の高速物質移動効果(Mass-Transfer)が実現でき、その結果、高速エステル交換が可能となる様です。
 
 
 
 
 
 
この熱交換器ですが、BDF器具を販売している通販業者を含め、あちこちで販売しています。
中身の1枚の金属板(上記写真)は、洗濯機がまだ無かった40~50年前まで、年配者はご存知の広く使っていた木製洗濯板と同じ様な波型をしています。
 
例えば、下記のサイトでは、小型なら3400円(40$)から大型の11.5万円(1350$)まで、様々の大きさ、金属板の枚数、熱交換能力(伝熱面積)の製品が販売されていますので、ご希望のBDF反応器能力に合わせて通販で購入できます。配管(ホース)接続さえすれば、すぐ高速Micro-Channel-Reactorが完成することになります。
 
熱交換器だけで、全体の反応器(装置)は完成となります。もう大きなバッチタンク(槽)など不要だとは思いませんか??
理論的には、小型化すればするほど優れたものができます。パソコンに使われているMicro-Processorと同じ理屈です。但し、小型化の限界は、金属加工と流量制御技術の制限もあります。
 
或いは、現在バッチ装置は反応速度が遅い??或いは反応転化率が低い??と悩んでいる方、不満を持っている方、Micro(-Channel)-Reactorとして、この熱交換器、或いはStatic-Mixerなどを使い、併せて紹介済の転化率キット( http://blogs.yahoo.co.jp/hirai476/10901144.html )を使い操作条件の最適化を図れば、反応時間は最悪ケースでも、2~3分の1へ、幸運なら10分の1(或いは、それ以下まで)も可能です!!
 
具体的な研究報告もあります(E.Santacesaria,2009)。反応時間は30秒から1分程度との報告されています。Macro-Mixing(現実は部分的Micro-Mixing、擬似完全混合)方式でも、攪拌翼(Blade-Mixer)の純粋Macro-Mixing方式(部分的混合、非完全混合)に比べれば、反応時間高速化などの効果が期待できます。
 
今回は、Micro(-Channel)-Reactorの例として、波型熱交換器を紹介しました。
もちろん、BDFやSVOの加熱用としても利用できますし、メタノール回収のコンデンサーなどの利用も可能です
 
では、また。。。。。
Joe.H
 
追伸
 1)上記Blog記事は、一般公開情報です。
 何かコメント、ご意見、及び質問等具体的な相談のある方は、
 下記メール・アドレス宛へ直接ご連絡下さい。
 可能な限り対応させて頂きますので。。。。
  尚、お問い合わせの前、下記を必ず参照ください。
 
以上